第5話:◆「誰だ、封印に猫の毛をつけたのは! ~小さな混乱の種??~」
今日もよろしくお願いします!
今回は、いきっている若手騎士を倒した後のモフ度が限界突破しててんやわんやな回のお話(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
ギルドの執務室に集まったのは、冒険者ギルド《黒い手》の面々に加えて、王家直属の護衛騎士団の面々、そして“お嬢”ことリーア・バレンスタイン本人だった。
俺――グリスはというと、会議机の端に座らされて、肩にモフモフの白い塊――シロモフを乗せたまま、すっかり縮こまっている。
「……モフ度、平常モフ。」
「平常じゃねぇんだよ……。」
俺の正面には魔道技師のジム、その隣に解析士ヴィーラ、符解読のエストレア婆さん、受付嬢コンビのエラとミーナ。
護衛騎士団からはストラウス隊長と、腕利きの護衛騎士二名が椅子に座り、黙って状況を見守っている。
普段なら絶対集まらない顔ぶれだが、今日は特別だ。
――何せ、俺の封印異常が起きたせいで、王家のリーア様まで巻き込まれたのだから。
エラがお茶を配りながら、俺に小さく笑いかけてくる。
「グリスさん、気楽にしてくださいね~。小さくなっても、またすぐ戻れるんですから!」
「二度と言うな。」
横でミーナが楽しそうに相槌を打つ。
「ほんと、掌サイズのグリスさん可愛かったですよねぇ……。」
「お前ら悪魔か。」
ヴィーラが、机の真ん中に広げた封印紋の複写紙をコンコンと叩いた。
「はい、じゃあ真面目にやるぞ。グリスくんの封印異常について、今んとこ分かってることだけ整理する。」
解析士ヴィーラの髪は今日も逆立っている。
あの髪型を見てると、逆にこっちの封印のほうがまだシンプルだと思えてくる。
ジムが腕を組んで、シロモフを指で突っつく。
「封印が変調した原因……結論から言うとだな――分かんねぇ!」
「おい!」
ストラウスが苦笑して肩をすくめる。
「言い切ったな……。」
ヴィーラが続ける。
「まぁ実際そうなんだ。外の力が封印紋に干渉したのか、内側から封印を揺らす何かがあるのか……はっきりしない。」
ジムが俺を指で差す。
「ただ一つ言えるのは――お前の封印、妙に“外的接触”に反応するってことだ。」
エストレア婆さんが杖の先でシロモフの尻尾をツンと突いた。
「そこの白い毛玉の尻尾も怪しいが……。」
ヴィーラがニヤッと笑って追加する。
「元に戻った条件を考えればな? 異性との外的接触で戻ったのか――恥ずかしさからくる羞恥心が封印に干渉したのか――それとも、癒しを求めたただのスケベ野郎なのか――。」
エラが吹き出した。
「……スケベ野郎説、あると思います!」
「ねぇよッ!!」
俺は机を叩いて総ツッコミする。
ミーナまでにやにやしながら被せてくる。
「でもほら、リーア様に撫でられて戻ったんですよねぇ? 異性限定ですか~?」
「限定じゃねぇからな!!」
ジムがわざとらしく顎を撫でる。
「逆に言えば、グリスが女性に撫でられるたびに元に戻るなら……これは封印じゃなくて欲望の塊なんじゃ……?」
「誰が欲望の塊だコラ!!」
ストラウスが護衛騎士に耳打ちする。
「……これ正式報告書に書くのか……?」
「“封印異常、スケベ野郎疑惑”……誰が信じるんですか……。」
リーアが椅子を引いて、俺の隣に腰掛ける。
騎士服の裾が膝に当たって、何だかくすぐったい。
「……グリス、大丈夫ですか?」
「……何がですか。」
「また小さくなったら……ちゃんと私が撫でて戻してあげますから。」
「言い方!!」
エラとミーナが机を叩いて大爆笑する。
シロモフが俺の肩でぷるぷる震えてフォローする。
「グリスはスケベじゃないモフ……たぶんモフ……。」
「たぶんて言うな!!」
ヴィーラがさらさらとメモを走らせ、真面目な顔で結論を言った。
「――結論としては、封印異常の詳細は“分からない”! 外的接触・羞恥心・スケベ野郎説含め、引き続き検証を続行!」
ジムが指を立てる。
「それから、《黒い手》としては報告書に“スケベ野郎疑惑”の文言を必ず残す方向で。」
「残すなあああ!!」
ストラウスが深く溜息をついて言った。
「全く……お前ら《黒い手》はやっぱり変わってるな。王都じゃ考えられんぞ、封印会議でスケベ野郎疑惑が容疑者だなんて。」
ジムが肩をすくめる。
「そりゃそうだ。残業なし、報酬たんまり、上下関係フラット! 変人でも腕さえ立ちゃ大歓迎だ。」
ヴィーラが俺を指差す。
「グリスくんを採ったのも、占いと度胸……それに、どれだけ揉めても逃げないって直感だな。」
俺は言葉を飲み込んだ。
――初めて《黒い手》に入った時のことを思い出す。
「……急にそういうこと言うなよ……。」
エラがにやにやして俺の背中を叩く。
「照れてる照れてる! 可愛い~!」
「やめろ!」
シロモフが俺の肩に乗り直し、頬をツンと突く。
「グリスは仲間モフ。」
リーアが俺とシロモフをじっと見て、そっと笑った。
「……いいですね、皆さん。」
ストラウスがリーアを振り返った。
「お嬢も遠慮すんな。あんたも、俺たち《黒い手》の仲間だ。」
リーアは小さく頷いた。
「……ありがとうございます。」
ヴィーラがパチンと指を鳴らして場を締める。
「――じゃ、結論な! 封印異常の原因は“分かんない”! でも外的接触と尻尾は怪しい!あとスケベ野郎! よって、スケベ野郎は接触禁止令だ!」
「異論なしモフ!」
「お前らふざけてんのか!? ただ言いたいだけだろ!!」
ちょうどそのタイミングで、執務室のドアがゆっくり開いた。
――遅れて姿を現したのは、《黒い手》のギルドマスターだった。
マスターは革のコートを片手で肩に引っかけて、鼻歌混じりに会議室を見回すと、笑いながら口を開いた。
「よう、盛り上がってるじゃねぇか。で、結論は?」
ジムが即答する。
「グリスがスケベ野郎です!」
「違うッ!!」
ギルマスは腹を抱えて笑い転げた。
「……あははははは!! 封印会議の結論が“スケベ野郎”って! お前ら……最高だな……!」
ヴィーラが肩をすくめる。
「ギルマス、本来なら仕切るべきだったんじゃ?」
ギルマスはひょいと片手を振る。
「会議なんざ俺には合わん。好きにやれ。結果だけ面白けりゃそれでいい!」
ギルマスがふと、リーアに視線を向けた。
「そういや、そこのお姫様……いや、リーア嬢? なんて呼べばいい?」
リーアがほんのり微笑む。
「……お好きにどうぞ。」
ギルマスが満面の笑みで親指を立てた。
「じゃ、“お嬢”で決まりだな! お嬢も俺らの仲間だかんな!」
ストラウスが笑い、護衛騎士たちまでつられて肩を揺らした。
リーアは少しだけ目を潤ませて、小さく頷いた。
「……はい。」
――クセ強い仲間と、クセ強い封印と、クセ強いモフ。
そしてクセ強いギルマスター。
俺の黒歴史は、今日も更新中だ。
小さな混乱の種は、これからも俺の平穏をモフモフにかき乱してくれるに違いない。
【第6話】へつづく!
タイトル:「地下遺跡の扉が告げるもの」
サブ見出し:乾き村の再調査
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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