第4話:◆「掌サイズの恋人(仮) ~可愛い?可愛くない?~」
今日もよろしくお願いします!
今回は、いきっている若手騎士を倒した後のモフ度が限界突破しててんやわんやな回のお話(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
ギルドに隣接する訓練場での模擬戦が終わったあと、別の用事があるとのことで、一旦リーアたちと別れた俺――グリスは観客席に設けられた休憩スペースで、いつものようにシロモフと並んで座っていた。
観覧席では、若手騎士を瞬殺したと噂が一気に広がり、盗賊ギルド《黒い手》のメンバーたちが、さっきから代わる代わるヒソヒソ声を漏らしている。
「なぁ、あの白モフ……今日も肩に乗ってんのか?」
「モフって鳴いたら強化魔法って噂だぞ。」
「強化っていうか、あれ絶対呪いの類だろ……。」
「てか若手瞬殺って、剣じゃなくて目で殺したってマジ?」
「なぁ、グリスさん縮むって本当か? ちっちゃくなったら
ポケットに入れんの?」
「誰が入れるんだよ!」
「俺は入れたい。」
「お前、変な趣味だな。」
「てかさ、これってつまり――」
「つまり……なんだ?」
「――抱き枕サイズも可能ってことじゃね?」
「……お前の発想が怖ぇわ。」
最後のヒソヒソ声だけ変に生々しくて、俺はそっとテーブルに額を打ち付けた。
「……視線が鬱陶しい。」
肩にちょこんと乗ったシロモフが、尻尾をゆらゆらと揺らしながら頷いた。
「モフ度……高めモフ。視線浴びると、さらに上がるモフ。」
「上げなくていい。てかお前のせいだろ、半分は。」
「モフ度は全部が全部オイラの責任じゃないモフ。」
「いやお前が余計なモフ発言ばっかするから……。」
テーブルの向こうでは、模擬戦を眺めていたギルドの受付嬢、ミーナとエラが小声で笑っている。
「ねぇミーナ、グリスさんさ……」
「……ちっちゃくなったら絶対可愛いよね。」
「可愛くねぇわ。」
俺が思わず言い返すと、エラがケラケラ笑ってシロモフの頭を撫でた。
「冗談ですよ〜。でも本当にちっちゃくなったりして!」
「ならねぇよ。」
シロモフが、ここでまた余計なことを言いやがった。
「……モフ度、閾値越えると……縮むモフ。」
「おい! 余計なこと喋んなって!!」
その時、階段を下りる音が響いた。
振り向くと、護衛隊のストラウス隊長を先頭に、リーア・バレンスタインがゆっくりと姿を現した。
「グリスさん」
透き通る声が俺の名前を呼ぶ。
その瞬間、周りの盗賊ギルドの連中が一斉に空気を読んで席を外した。
さっきまでガヤガヤしていたのが嘘みたいに、空気が澄んだ。
ストラウスは一応残ったが、半歩下がって視線を泳がせている。
「……また無理をしたんでしょう?」
リーアが俺の正面に立つと、ストラウスが苦笑を浮かべた。
「お嬢様、あまり甘やかさないでください。こいつ調子に乗りますんで。」
「うるせぇよ、ストラウス。」
リーアは微笑むと、テーブル越しに俺の隣に腰掛けた。
そのまま、何の前触れもなく、俺の額にそっと人差し指を置く。
「……っ。」
指先が冷たくて、変に鼓動が跳ねた。
「近……くないですか?」
「ダメですよ。今日はちゃんと抑えます。」
「何を……。」
リーアの指先が、俺の額から頬へ移動し、つん、と軽く押される。
「……つん。」
「つん、じゃねぇ……。」
その時、ギルドマスターのロイがガハハハと笑いながら近づいてきた。
「おいおいおい! 盗賊ギルドにお貴族様が入り浸ってるってのに、こりゃ誰も文句言わねぇのがすげぇな!」
ストラウスが肩をすくめた。
「ギルドマスター、うちのお嬢様は、順応性だけはめっぽう高いですから。」
横にいたディセルがやれやれと笑った。
「他者への愛想が異常にいいんですよ。あれはもう、晩餐会の日なんか無双状態ですからね。」
マリィもこっそり耳打ちする。
「見てくれはお貴族様ですけど……中身は、ほんと、ここが一番居心地いいって言ってます。」
ロイがヒゲを撫でながら笑った。
「まぁ、目の保養にもなるしな! ありがたや、だ!」
周囲のギルドの男どもも、どこか微妙に赤面しながらも一線を引いているのが分かる。ここは盗賊ギルド《黒い手》。ギラついてるくせに妙に律儀だ。
リーアも、それを知っていて柔らかく笑った。
「ここは駆け引きがないから……居心地がいいんです。」
俺は思わず吹き出した。
「どんだけ対人スキル高いんだよ、お前……。」
ストラウスが肩を揺らして笑った。
「うちの姫、対人戦だけは無敵ですから。コイツより強ぇまでありますよ。」
「やかましい。」
リーアがまた俺をつついた。
「……可愛い。」
「可愛くねぇっ……。」
その時だった。
体が、なんか、ふわっと。
さっきまで同じ目線にあったテーブルの端が、やけに遠く見える。
「おい、シロモフ!」
「モフ度……限界突破モフ。」
「おい!?」
リーアが楽しそうに笑って、俺をもう一度つついた。
「まぁ、どんどんちっちゃくなっていきます、……グリスさん、可愛いです♥」
「可愛くねぇって!!」
ストラウスが慌てて口を挟む。
「おいおいおい、マジで縮んできてるじゃねぇかよ大丈夫かお前!?お嬢様も、あんまりグリスで遊ばないでください! マジで小さくなってますよ!?!」
「知ってます。だから抑えるんです。」
「抑えろよ今すぐ……!」
でも、視界はじわじわと低下していく。
俺は立ち上がろうとして、テーブルの縁に手をかけ――
――届かない。
「……おい!」
肩にいたシロモフが俺の頭に乗ってきた。
「モフ度、暴走モフ。掌サイズ危機警報モフ。」
「ふざけんな!」
リーアが、ふわりと笑いながら俺の前に指先を差し出す。
「……大丈夫。ちゃんと戻りますから。」
「いや戻せよ今すぐ……って、おい触んな……!」
指先で、ほっぺをつつかれる。
「……可愛い♥」
「可愛くねぇっ……!」
テーブルの向こうのミーナとエラが、そっと覗き込んできた。
「わ、わ……ホントに小さくなってる……!」
「きゃー! つつきたい……♥」
「やめろ近づくな! あっ、シロモフお前笑ってんじゃねぇ!」
「モフ度……可愛いモフ。」
ギルドの奥では、マスターのロイがテーブルを叩いて笑っていた。
「おいおいおい! 何だそのサイズは! ガハハ! 小さっ! お前人間だよな!?ん?人間だっけか?オーク?違う??何だお前??ハッ焼豚かお前!?あん、そんな縮んで焼豚ハムスターじゃねぇのか!?」
「黙れロイ! 笑うな!あと、一人でそんなに長い尺使うなよ!」
シロモフが隣でポソッと呟いた。
「……小型化、次は耳モフモフ化……。」
「やめろぉぉぉ!」
リーアの顔が、どんどん近づいてくる。
「……可愛い。」
「いや近ぇって!」
「……つん。」
またつつかれた。
ストラウスが頭を抱える。
「お嬢様、ほどほどに……。」
数10分後――
俺はようやく元のサイズに戻った。
テーブルに座り直した俺の顔には、つつかれすぎて残った赤みがしっかり残っている。
「……恥ずかしいんだが。」
リーアは満足そうに笑った。
「可愛かったです。」
「可愛くねぇ。」
ミーナとエラがキャーキャー言ってる。
「次もやってくださいね!」
「絶対ダメだ!」
シロモフがニヤニヤしながら言った。
「モフ度危機警報……継続モフ!」
そしてロイが肩を揺らしながらもう一度大笑いした。
「ガハハ! お前はこれから《黒い手》の看板だな! 掌サイズの恋人! いいネタだ!」
「やめろぉぉぉ!!」
【第5話】へつづく!
タイトル:誰だ、封印に猫の毛をつけたのは!
サブ見出し:小さな混乱の種??
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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