第3話:◆「モフ度危機警報発令 ~モフモフが止まらない!~」
今日かもよろしくお願いします!
今回は、いきっている若手騎士にグリスが少し喝を入れるお話(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
ギルドの大広間は、朝からいつもの喧噪に包まれていた。
盗賊ギルド《黒い手》は中規模とはいえ、所属人数は46名を抱える冒険者ギルドだ。情報屋、盗賊、暗殺者、護衛役、技術屋――顔ぶれは多彩だが、今朝はそのほとんどが広間に集まっていた。
「おはようございます、封印さん!」
カウンターの奥から声をかけてきたのは、受付嬢のエラだ。
まだ20そこそこの若い娘だが、このギルドでの顔の広さはトップクラスだ。
俺によく話しかけてくれるもう一人の受付嬢、ミーナは今日は隣で書類をめくっている。
この二人が並んでいると、むさい男たちが集う盗賊ギルドとは思えない華やかさだと誰もが思うだろう。
「……おはよう。封印って呼ぶなって。」
「えへへ、でもみんなそう呼んでますし。リーア様だってそうですよ? だって、グリスさんって、なんか……普通の人じゃないですもん。」
「普通の人じゃないのに、普通に居座ってるのが怖いんだけどね〜。」
ミーナが小声で茶々を入れると、俺は肩をすくめて溜め息を吐いた。
「おいおい、ミーナまで言うか。」
エラが差し出す小さな包みを受け取る。中身は干し果物と熱いハーブ茶だ。
「昨夜も徹夜だったんでしょ? ちゃんと食べてくださいね?」
「あー……ありがとな。」
肩に乗ったシロモフが、包みの匂いを嗅いで前足を小さく動かす。
「モフ……モフ度アップモフ。」
「お前が食うんじゃねぇからな。」
奥のテーブル席では、ギルドメンバーが依頼の確認をしている。
盗賊、斥候、腕利きの解錠師――それぞれが朝の雑談を交わしつつ、俺を見て
小声で囁き合っていた。
「おい、あれがグリスだってよ。」
「ステータス隠してるって噂だが……どこまで本当だ?」
「見た目だけは……普通だな。ん?普通かあれ? 焼けてるオーク? 焼豚じゃね?? ジュルリ……。」
誰だ、今の物騒な声は。
思わずそいつの方向を見ると、背の低いスカウトの一人が目を逸らして口笛を吹いた。……さすが盗賊ギルド、食に貪欲な奴もいる。
広間の奥の扉が開いた。
「おーおー、朝っぱらから賑やかじゃねぇか。」
通路から現れたのは、ギルドマスターのロイ・ドグマ――
年の頃は四十を超えているが、筋骨隆々の体格で、片目に黒い眼帯をしている。
口の端には、いつも通り人を食ったような笑みが浮かんでいた。
「おう、グリス。徹夜だってな? そんなにギルドに染まってくれて嬉しいぜ? 加入してからまだ1か月経ってないのによ!けど、新入りのクセに生意気なんだよなぁ……!」
「朝からうるせぇよ、マスター。……死んでねぇっての。」
ロイは腹を抱えて笑い、テーブルを叩いた。
「ガハハッ! よし! 今日は訓練場で若いのが騎士様と模擬戦やるってな? お前も出ろ。ほら、噂ばっかの連中に現実見せてやれ。」
「……またかよ。」
ロイが手招きすると、奥の壁際から新顔が二人進み出た。
一人は切れ長の目をした青年、槍を背負って立つ姿が妙に様になっている。
名前はライナー・バルク。
もう一人は褐色肌に銀の短剣を二本携えた女――
名はセリカ・アズラン。
二人とも、リーアの護衛隊に最近加わった若手騎士だ。
ライナーが鼻で笑った。
「お前がクロニクルベアラー? ……肩に乗ってんのは何だ、モフモフのマスコットか?」
「モフ度は誇りモフ。」
シロモフが、謎の自信で胸を張る。
セリカが顎に指を当て、俺を値踏みする。
「……噂倒れだと思ってたけど、どうかな? 私たちの相手してくれるんでしょうね?」
「好きにしろよ。」
ライナーが肩を鳴らし、訓練場へと歩き出す。
広間がざわつく。
「おいおい、まただぜ。」
「グリスが本気出したらどうなるか……新入り連中、知らねぇのか。」
「見物料取ろうぜ。」
ロイが俺の肩を叩いて言う。
「どうせ遊んでやるんだろ? クロニクルベアラー様よ。」
「……まぁな。」
俺はシロモフを肩から降ろし、革紐で留め直した鞘を腰に確かめる。
「リーア様は?」
「奥で護衛連中と朝飯だとよ。終わったら来るんじゃねぇか?隊長のストラウスだけは、万が一のことを想定して観覧席で見てるけどな。ほれ、あそこにいる。」
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ギルドの外にある闘技訓練場は、円形の土の広場で、石造りの観覧席がぐるりと取り囲んでいる。
そこに、ギルドメンバーがぞろぞろと集まり、次第に熱気が立ち込める。
ライナーとセリカは正面に並び、俺を睨む。
「ちなみに、二人まとめてかかってきて構わないぞ。先手は譲るよ。」
「二人まとめてとか、舐められたもんだな。」
「いいぜ、遊んでやるよ。」
わざと肩をすくめて見せると、ライナーの眉がぴくりと動く。
「何だと……?」
「言葉通りだ。せっかくの機会だし……お前らみたいな若手には、騎士の教示ってやつが要るだろ?」
セリカが短剣を抜き、ライナーが槍を構える。
観覧席では、ストラウスが渋い顔で声を張り上げた。
「おい、バカ! 相手の挑発に乗るな! 視野を狭くしてるとやられるぞ! ……俺らの時みたいにな!」
ライナーが舌打ちする。
「隊長は黙ってろ! ……こっちは本気なんだ!」
ライナーが吐き捨てた。
俺は片手で剣を抜きながら、にやりと笑って言った。
「……遅せぇよ。今さらな!」
俺は剣を抜き、左手に魔導書を出現させた。その魔導書は、青白い光を放ってグリスの左手から空中へと舞い上がっていく。空間に浮かんだ魔導書をパラパラとめくっていく。右手に握った黒いペン先が虹色に輝き始め、そして、グリスは唱える。
「クロニクル、起動。」
言葉と同時に魔導書の頁が自動でめくれ、文字が浮かび上がる。
「――命綴るは刃の理。纏うは刃、刻むは律――!」
観覧席がざわつく。
「出たぞ……あの魔導書とペン……!俺たちを5秒で瞬殺した時の奴だ!」
「いや?3秒じゃなかったか??」
「気づいたら終わってたんだよな!」
「おうよ!そんなことより、あいつ見てると腹減ってくるな!なんでだろうな!?ジュルリ...。」
やっぱり、誰だ、今の物騒な声は。外野が何か喋っていて気になるが、俺は視線を二人に戻す。
「さぁ、物語を綴ってやる。……始めようぜ。」
土煙が舞い、二人が同時に飛び込んできた。
速いが、俺には全部が見える。
「おっと――」
ライナーの槍を受け流し、詠唱と共に空中に文字を刻む。
「《散弾・鋒圧》。」
黒いペンが文字を描き、空間から無数の衝撃波がライナーを弾き飛ばす。
後ろから迫るセリカの刃を、魔導書の頁で受け止め、背中に肘を入れる。
「まだまだ――!」
ライナーが槍を振る。
「《回旋・刃流し》。」
剣とペンで軌道を書き換え、槍を無力化する。
「ほら、もっとだ。」
ストラウスが肩をすくめた。
「……相変わらず性格わりぃ。」
途中合流を果たしたディセルが吹き出した。
「隊長の時もな……!」
ライナーが呼吸を荒くする。
「まだだ……まだァッ!!」
「……終わりにしとけ。」
「黙れ!」
渾身の突き――
「遅い。《回旋・刃流し》。」
背後を取り、柄の先を背中に当てた。
「一本。」
ライナーは土に膝をつく。
セリカが斬り込んでくる。
「まだ……!」
「お前もだ。」
詠唱を続け、短剣の刃を紙片で受け流す。
膝を払って転がす。
観客席が息を呑む。
剣を納めると、シロモフが柱から覗いて言った。
「モフ度……78%……危機警報モフ!」
「なんだそれ。」
ふと見ると、ストラウスの横にリーアが立っていた。
「……また無茶してませんか?」
俺の前に膝をつき、両頬を包む。
「ち、近くないか!? リーアさん!いやリーア様……!?」
「こうしないと、すぐ無理をするでしょう?」
シロモフが呟く。
「小悪魔モフ……。」
モフ度危機警報は、今日も発令中だ。
【4話】へつづく!
タイトル:掌サイズの恋人(仮)
サブ見出し:可愛い?可愛くない?
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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