第2話:♥「おはようございます、封印さん!~ 徹夜明けの報告会~」
昨日から第2章スタート!
これからもよろしくお願いします!
今回はちょっと癒し要素多めのストーリー(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
ギルドの地下にある、ひどく静かな執務室――。
外の喧騒とは別世界みたいに、ここだけは真夜中の冷たい空気が満ちてる。
「……ふあ……っ……。」
書類の山の前で、俺はあくびを噛み殺した。
昨日の暴走馬車のあと、そのままギルドの資料室に籠もって、乾き村の調査報告をまとめてる。
誰もが寝てる時間に、蝋燭の灯りだけで字を追うのは、やっぱり目にくるな……。
シロモフが机の端に丸まって、尻尾だけ揺らしてる。
「おい、寝てんなよ……。」
「モフ……寝てないモフ……占いしてるモフ……。」
「寝言で嘘つくな……。」
羊皮紙に書き連ねた報告は、俺の観察眼で拾った細かい土壌の魔素反応、村人たちの健康状態、流入してる外来者の数……。
全部まとめなきゃ次の手が打てない。
……そういや、こうして報告書なんか書くのは、盗賊ギルド《黒い手》じゃ当たり前じゃないんだが。
あそこはそもそも、依頼の成功か失敗か、それだけでいい。
けど、俺には《クロニクルベアラー》としての性分がある。
物語を綴らないと、全部が途切れて消えちまいそうで嫌なんだ。
「……ふっ。」
ペンを置いて伸びをしたら、首筋がパキパキ鳴った。
外は、もう少しで朝になる。
報告書の山は、まだ半分。
椅子の背に頭をあずけて、天井の低い梁を眺めてたら――
「……グリスさん?」
小さく扉が開く音。
ギルドの記録室に、人の気配が滑り込んでくる。
目を開けると、蝋燭の灯りに揺れる銀糸の髪があった。
翡翠の瞳が、柔らかく俺を射抜く。
「……リーア。」
リーア・バレンスタイン。
封印の血を引く、特別な家の人間で……俺とは、妙に縁ができてしまった人だ。
「こんな時間まで……。」
リーアが机の上の書類を一瞥して、苦笑を浮かべた。
「相変わらずですね……無茶ばかり。」
「……これまとめとかないと、次の動きが遅れるからな。」
「でも徹夜はだめです。」
すっと机に近寄って、蝋燭の灯りに指をかざす。
小さな光球が彼女の指先に生まれて、書類を優しく照らした。
「灯りを強くすると、目が冴えて眠れないでしょう?」
「……看病のつもりか。」
「もちろんです。」
ふわりと香るハーブの匂いがした。
リーアの外套の裾から、微かに薬草の袋が覗いてる。
「それ……?」
「徹夜組に必須の安眠香です。終わったら、少し眠ってください。」
「いや……まだ――」
「ダメです。」
言い切られた。
リーアは昔から、俺の“まだ”を強制終了させるのが上手い。
「膝、貸しましょうか?」
「……は?」
「膝枕です。」
「いやいや……ギルドの室内で何言って……。」
「ここは騒がしくないですし……。」
俺が口をパクパクさせてる間に、リーアはもう椅子を引いて、俺の隣に腰を下ろしていた。
「ちょ……ストップ……!」
「遠慮は要りませんよ?」
翡翠の瞳で見つめられると、頭が余計に回らなくなる。
「いやいや……俺、寝る気ねぇし……。」
「……グリス。」
名前を呼ばれると、心臓がちょっとだけ跳ねる。
「無茶しないでください。」
「……。」
「貴方が潰れたら……残される人の方が困るんです。」
……ずるいな。
こういう時のリーアの声は、まるで祈りみたいに沁みる。
「お嬢様! あっ……。」
ちょうどその時、地下室の扉がまた開いた。
大剣を背負った男が中を覗いて、気まずそうに眉を上げる。
「……あ、リーアお嬢様……。」
ストラウス――リーア直属の護衛隊長だ。
その後ろから、双剣を腰に下げたディセル、長剣を背にしたマリィが顔を覗かせる。
「お疲れ様です、グリスさん! ……って、何してんすか?」
ディセルがニヤつきながら言う。
「……何でもねぇよ。」
「まさか、膝枕未遂っすか?」
「うるせぇ……!」
マリィが静かに肩を揺らして笑った。
「グリス様は相変わらずですね。」
護衛騎士たちは、俺が《黒い手》に入った当初からちょくちょく顔を出すようになった。
リーアが俺と動くなら……ってんで、護衛と称して付いてくるわけだ。
あのヴァルツェル派の噂が出てからは、特に頻度が増えた。
封印の血を引くリーアは、やっぱり色んな奴に狙われやすいからな。
「ストラウス。今日は?」
「街道沿いの“魔素枯れ”の調査結果を……。あと、昨日の乾き村の件で……。」
「俺がまとめるから、机に置いといてくれ。」
「グリスさん……顔色、真っ青ですよ。」
ディセルが苦笑する。
「徹夜、三日連続は普通じゃないっすよ?」
「……二日だ。」
「同じですって。」
リーアが立ち上がって、俺の背に手を添える。
「少し横になりましょう。……ね?」
「……ちょっとだけだ。」
言い訳みたいに言ってから、机に突っ伏す。
膝枕は回避したが、リーアの指がそっと髪を撫でてくる。
「おやすみなさい、封印さん。」
「……誰が封印だ……。」
「私にとっては、そういう存在ですから。」
護衛騎士たちが遠慮がちに室外へ下がっていくのを感じながら、
蝋燭の灯りが、瞼の奥で揺れていた――。
【3話】へつづく!
タイトル:「モフ度危機警報発令」
サブ見出し:モフモフが止まらない!
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声NGなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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