第23話「◆井戸に潜む残響と夜の証」
今日もよろしくお願いします!
今回はいつものストーリー(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
カラビナ村の夜は、昼間の穏やかな雰囲気が嘘のように静まり返っていた。
村の中央に吊るされたランタンが、ぽつりぽつりとオレンジ色の光を投げている。
井戸のある外れの林へと続く道だけは、不気味なほどに人影がなく、風に揺れる木々の音が耳に残る。
「……夜に行くのはやっぱ嫌だな。」
グリスはランプを片手に、肩の上のシロモフをちらりと見る。
「モフも夜は苦手モフ。」
「お前、昼間も寝てるだろ。」
「モフ。」
背中で微妙にしっぽが揺れるのを感じながら、グリスは足を進めた。
すぐ後ろをリーアと護衛のストラウス、ディセル、マリィが続く。
ランプの灯りがリーアの金髪を揺らめかせ、普段の涼しげな表情がどこか険しい。
「……井戸の底を覗くだけで終わればよいのですが。」
リーアが小声でつぶやく。
「……何が出てきても俺のせいじゃないからな。」
「ふふっ……少しは怖がってくださいませ。」
リーアが小さく笑う。
そんな余裕がどこまで持つか、グリスは心の中で肩をすくめた。
──
◇
井戸の前に着いたとき、林の奥からふわりと冷たい風が吹いた。
昼間とは違う、ねっとりと絡みつくような空気。
「……妙だな。」
グリスは井戸の縁に手を置き、耳を澄ませる。
コポ……コポ……と、かすかな水音。
「音が違う……?」
グリスは井戸の奥へ向けて、ランプをかざした。
その瞬間。
ひらりと何かが落ちてきた。
「!」
グリスはとっさに手を伸ばす。
掴んだのは、湿った紙片だった。
「紙……?」
開いてみると、半分朽ちかけた紙切れに、
子供の汚い字で“ごめんなさい”の文字がにじんでいた。
「……これだ。」
グリスは懐から魔導書を取り出す。
「リーア、少し下がってろ。」
「……わかりました。」
護衛たちも息を呑み、リーアの背後に控える。
「クロニクル・オープン。」
グリスの左手の魔導書が青白く輝き、紙片を包み込んだ。
途端に空気がひんやりと変わる。
井戸の奥から、誰かの声が、またしても囁いた。
『……ごめんね……わたしのせい……』
低くかすれた声。
目を閉じたグリスの瞼の裏に、映像が流れ込む。
──
◇
小さな子供が、夜の井戸に何かを投げ込む姿。
傍には、ぬいぐるみを抱えた別の小さな影。
泣き声。
怒鳴り声。
誰かの影が、その子供の背中を突き飛ばした。
そして、ぬいぐるみが水面に落ち、ふっと溶けるように沈んでいく。
(……子供同士の喧嘩じゃない……?)
グリスの額にうっすらと汗が滲む。
周りに大人の足元が映った。
その誰かが、背中を向けて立ち去る。
『……井戸に戻さなきゃ……わたしのせい……』
囁きは途切れた。
魔導書の光がふっと消える。
──
◇
「……どうでした?」
リーアの声に、グリスはゆっくりと息を吐いた。
「……昔、誰かが無理やり……。
多分、子供同士のことを大人が……止めなかったんだ。」
「……つまり?」
「誰かが何かを隠すために、井戸を使った。
残響が祈りの形で残ってる……。
けど、それが誰かまでは……まだ断片だ。」
グリスの手が小さく震えているのを、リーアは見逃さなかった。
そっと袖を引き寄せ、手を重ねる。
「……無理をなさらないでください。」
「平気だ。」
「……嘘。」
リーアは微かに笑みを浮かべた。
「後でギュッとして差し上げます。」
「は?」
「ふふ……冗談ですわ。」
声は柔らかいが、指先に力がこもっている。
(絶対する気だこれ……。)
グリスは心の中でため息をついた。
──
◇
護衛たちは固唾を呑み、ストラウスが低くつぶやく。
「……この力があれば……。」
ディセルが小声で同意する。
「村だけでなく……王都でも……。」
マリィだけが、グリスとリーアの空気に気づいて、
小さく肩を揺らして笑みを隠していた。
──
◇
月が、雲の隙間から顔を出す。
冷たい夜気の中、古井戸は依然として沈黙していた。
「……まだ全貌は掴めない。」
グリスは古井戸を見下ろす。
(だが、もう少しだ。)
「必ず、こいつを……解く。」
リーアがそっと囁く。
「私もお傍におりますわ。
だから、もう少しだけ……甘えてくださいね。」
「……甘えたくねぇ。」
「ふふ……では、無理矢理甘えていただきますね。」
からかう声に、グリスは顔を背けた。
木々の影が揺れる夜道。
遠く、井戸の奥から小さな声が、まだ彼を呼んでいる気がした。
【第24話】「◆揺れる村影と偽りの声」へつづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
少し不穏な回でもありましたね~( ^)o(^ )♬
これから物語がどうなっていくのかお楽しみに!
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声NGなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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