第20話「◆剣姫の護衛とクロニクルの牙」
今日もよろしくお願いします!
今回はいつものストーリー(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
カラビナ村の夜は静かだ。
だが、その静寂を裂くように、村外れの草地に数人の影が集まっていた。
「占い師殿。少々、お手合わせ願いたい。」
護衛の長であるストラウスが、月明かりを背にして剣を肩に担いでいた。
その脇には、背の高い女剣士マリィと、しなやかな双剣使いディセルが立っている。
「……はぁ。俺に恨みでも?」
肩の上で、シロモフがあくびをかみ殺す。
「いいじゃねえか。村の子守りよりゃ、こっちのが面白いだろ?」
(……絶対こいつ楽しんでるだろ。)
グリスは溜め息を吐くと、護衛三人の真剣な視線を受け止めた。
──
◇
「姫様に近い位置に立つならば、相応の実力をお示しいただきたい。」
ストラウスが静かに言った。
「……あの人が言えって?」
「姫様は仰っておりません。ただ、我々の矜持として。」
双剣使いディセルが肩を揺らして笑う。
「占い師風情が、剣姫の側にいるなど生意気だと思わんか?」
「……好きに言えよ。」
グリスが、肩を軽く回す。
夜風が彼の前髪を撫でた。
「いいか。せっかくだ。教えてやるよ。」
シロモフが、グリスの肩でにんまり笑う。
──
◇
グリスの目が、淡く金色に灯る。
「《クロニクル・ベアラー》。
俺は過去のすべてを忘れない。」
月明かりの下で、草地がわずかに揺れた。
「記憶は刃、真実は鎖。
隠された嘘も誤魔化しも、すべて穿つ。」
左手を広げる。指先に薄い魔導書が浮かぶ。
「お前たちの筋肉の動きも、神経の走る順路も……俺の前では、ただの文字列だ。」
静寂の中、護衛たちの表情が一瞬強張る。
「刃を構えたまま眠れ。……後悔するなよ。」
シロモフが低く唸った。
「はい、始まるよー。」
──
◇
ストラウスが地面を蹴る。
瞬間、夜気が裂けた。
大剣が、グリスの頭上から振り下ろされる。
その刹那、グリスの目に青白い光が走った。
──すべてが、遅い。
グリスの手が、剣の刃を指先で弾く。
火花が散る。
「なっ……!」
次の瞬間、ディセルの双剣が背後から突き込まれる。
だが、グリスは一歩も動かない。
「《クロニクル・コード》。筋信号、遮断。」
指先がディセルの肩に触れると、
双剣の刃先が止まった。
ディセルの身体が糸を断たれた人形のように崩れる。
──
◇
「っ、マリィ!」
女剣士マリィが、地を蹴って踏み込んだ。
「──せいッ!」
刃が唸りをあげる。
だがグリスはわずかに首を振った。
「遅い。」
マリィの腰に軽く掌を当て、流すように力を抜く。
空振りの剣が夜空を切り裂き、マリィもまた地に膝をついた。
──
◇
三人が、夜の草地に並んで膝をついている。
「……うそだろ。」
ストラウスが、荒い息を吐いた。
グリスは何事もなかったかのように、肩の上のシロモフを撫でた。
「……これが、クロニクル・ベアラーだ。
……だから言ったろ、無駄だって。」
──
◇
その様子を、少し離れた木陰で見ていたリーアが
静かに草を踏んで近づいてくる。
「……グリス。使いすぎてない?大丈夫なの?」
リーアは腰に手を置き、目を細める。
「最小限だ。」
グリスがそっけなく言うと、
リーアはにこりと微笑む。
「本当に、最小限で済ませられたのね?」
「……ほら。」
指を鳴らすと、術式カードが虚空に浮かぶ。
《クロニクルシグナル:モフ度 18%》
リーアはカードを覗き込むと、小さく肩を揺らして笑った。
「……ふふっ。相変わらず、妙な表示ね。」
「しょうがないだろ。そういう仕様なんだから。」
シロモフが得意げに鳴いた。
リーアはスッとグリスに近づき、
手袋越しにそっと胸元を掴む。
「でも……念のため、私が確かめます。」
「ちょ、待て……!」
「大丈夫です、すぐ済みますから。」
リーアはゆっくりとグリスに抱きつき、
柔らかな声を耳元に落とす。
「……ええ、大丈夫そうですね。」
その声に混じって、吐息がかかる。
「からかうな……!」
「からかってなんかないですよ。
……可愛いものですから。」
リーアが小さく笑い、指先でグリスの顎をつついた。
「く、くそ……。」
赤くなる耳を見て、リーアの目が楽しげに細まる。
「大丈夫ですよ、グリス。
無理はなさらないでください。……もしもの時は、私がギュッとしますので。」
「子ども扱いするな……。」
「可愛いから仕方ありませんね。」
──
◇
護衛たちがようやく立ち上がる。
ストラウスが頭を下げる。
「……お見逸れしました。」
「気にすんな……次やったらもっと泣かすけどな。」
グリスがぼそっと呟くと、
シロモフがくすくす笑った。
リーアは少し離れたところから、
そっとグリスの袖を引いた。
「さあ、参りましょう。
まだ村の不思議を解かねばなりませんので。」
夜の草地を、クロニクルの刻印が照らしていた。
第21話「◆騎士の誓いとクロニクルの気配」へつづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
少し不穏な回でもありましたね~( ^)o(^ )♬
これから物語がどうなっていくのかお楽しみに!
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声NGなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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