第19話「◆剣姫の影とクロニクルの種火」
今日もよろしくお願いします!
今回はいつものストーリー(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
前回までの話!
カラビナ村の朝は、鶏の鳴き声よりも早く、
グリスの叫び声で始まった。
「名前がもう無理なんだってのに、
今度は全員順番待ちかーーっ!?」
「おいおい、もっと声落とせ。村長が泣いてるぞ。」
肩で笑うシロモフに、グリスは無言で小突き返した。
昨日から始まった村人たちの個別占い大会は、
もはや祭りと化していた。
「わしの畑にイノシシが十頭……」
「わたしの孫が結婚できるかどうか……」
「わしの名前が変じゃないか占ってくれ……」
(最後のは占いじゃなくて改名届けだろ……!)
限界寸前のグリスに、
村長──いや【コマツナ・シゲ~ル】が
満面の笑みで背中を叩いてくる。
「いやぁ、占い師殿! ありがたいのう!
村が活気づいておるわい!」
「……せめて名前を変えてから言ってくれ……。」
シロモフが尻尾で机を叩いた。
「諦めろ、もう全員ツッコミ待ちだ。」
(俺の心が先に折れる……。)
ここからが本編だよ!
そんな最中──
遠くの村の入り口に、一団の人影が見えた。
村人たちがわらわらと集まる。
「あれは……?」
村道を進んでくるのは、
緋色の外套を羽織った数人の護衛騎士と、
その中心に立つ、一人の女性。
「……リーア?」
思わず立ち上がったグリスに、
シロモフが口笛を吹く。
「おお、また来たな、小悪魔姫。」
「誰が小悪魔だ……!」
──
◇
リーア・バレンスタイン。
先週会ったときは、貴族令嬢の姿だったが、今回は甲冑を身にまとっている姿で登場。
神速の剣姫──と呼ばれる、
剣士として名を轟かせた彼女は、
本人の意に反して、その異名が独り歩きしている。
「また、面倒な呼び名が広まってるわ……。」
護衛の一人が背後で笑いを噛み殺した。
「剣姫殿、やはりこの村に?」
「ええ、不思議な出来事が起きてるって報告があったの。」
護衛の背筋がぴんと伸びる。
「何があろうと、我らが護ります。」
「……だからそういうのはいいってば。」
ぶっきらぼうに返すリーアだが、
頬がうっすら赤いのを、付き人のユルクは見逃さなかった。
「姫様、その呼び名……本当にお嫌いなのですね。」
「そりゃあ恥ずかしいでしょ……。
ただでさえ周りからも茶化されるんだから。」
ユルクが、くすりと笑う。
「でも、姫様が剣で人々を守ってきた証です。」
「……知ってるわ。」
リーアは目を細めて、村の奥を見つめた。
(はぁ、この話し方疲れるわ。運よくグリス……に会えないかなぁ。)
──
◇
村の広場では、
村人が「占い師様が知り合いじゃ!」と騒ぎ立てていた。
「リーア様じゃ! 本物の剣姫様じゃ!」
「村に剣姫様が来るなんて……!」
グリスは顔を両手で覆った。
「やめろ……ここにまで『剣姫』って響きが……。」
「お前が恥ずかしがる意味が分かんねぇよ。」
シロモフが肩の上であくびを噛み殺す。
そんな二人に、
護衛騎士の一人──大柄で鎧の肩当てがやたら主張する男が
じろりと視線を向けた。
「おい、そこの……豚の占い師。」
「……豚言うな。」
護衛騎士は鼻で笑う。
「姫様と、どういう関係だ?」
(出たよ……。)
シロモフがグリスの肩を爪でつんつん突っつく。
「さーて、揉めるぞ揉めるぞ。」
グリスはため息を吐いた。
「依頼人だ。以上。」
「ほう……依頼人と占い師が、
そんな馴れ馴れしく話すものか?」
「お前、会ったことないだろ、グリスの占いの扱い。」
別の護衛がぼそっと言ったが、
鎧の男は無視してグリスを睨んでいる。
リーアが小さく咳払いをした。
「ストラウス。グリスさんは大丈夫ですから。
前にも私が依頼していますし、信頼もしていますから。」
「……しかし姫様、万が一が……。」
「その『万が一』を処理するのがあなたたちでしょ。」
にこりと笑うリーアに、
ストラウスと呼ばれた護衛は背筋を伸ばして黙り込んだ。
付き人のユルクが横で笑って、グリスに会釈する。
「お久しぶりです、占い師様。」
「あ、ああ。……なんか、いつもと話し方が違うけど、キャラわけしてんのかな?リーア殿は?」
「はは、私だけは常識人ですので。」
ディセルはリーアに視線を向けた。
「姫様、村の様子を見てまいります。」
「ええ、お願いしますね、ディセル。」
──
◇
「さて、リーアの護衛騎士たちは離れたぞ。いつもの話し方に戻っても大丈夫だろ。」
「はぁ~、そうだね、気を使ってくれてありがとうねグリス!」
グリスとリーアが顔を合わせると、
村人たちはすっかりお祭り騒ぎだ。
「おおお、占い師様と剣姫様が並んだぞ!」
「これは縁起がいいのう!」
「……名前で呼べ名前で!」
「ふふ...グリス、ほんとにここで占いやってたんだ。」
「やってたというか……やらされてた。」
リーアがくすりと笑う。
「またイジメられてるのね。」
「イジメてんの誰だよ。」
──
◇
護衛の一人が村長のコマツナ・シゲ~ルに頭を下げた。
「村長殿、不思議な出来事というのは……?」
「ほれ、最近井戸から声が聞こえるんじゃ。」
「井戸から声!?」
「あと、夜な夜な畑に光が舞うんじゃ。
何かの妖精だっていう話もあるが……。」
「妖精……?」
リーアがグリスの肩を叩く。
「ねえ、妖精って……シロモフの親戚?」
「俺の親戚が光って井戸に声を落とすかよ。」
シロモフが尻尾で鼻をこすった。
「俺は立派なモフ妖精だぜ? あんな地味仕事はやらねぇ。」
グリスがため息を吐く。
「……結局俺が占うのか。」
──
◇
そのとき、護衛の一人がストラウスに耳打ちした。
「……しかし姫様がいるのに、あの占い師を近くに置くのは……。」
ストラウスは鼻を鳴らす。
「何かあったら……俺が斬る。」
(だから斬られねぇっての……!)
シロモフが口を押さえながら小声で笑う。
「ほらな? 揉める匂いしかしねぇだろ。」
「わざと煽ってんだろお前。」
──
◇
とはいえ、グリスもここまで来れば
引き受けるしかない。
「……わかった。村の井戸、見てくる。
その光とやらも、調べる。」
「さすがグリス。」
リーアが嬉しそうに笑った。
「さすが占い師殿じゃ!」
村人たちが一斉に拍手を送る。
ストラウスが不服そうに剣を鳴らすのを横目に、
グリスは呟いた。
「……この村、名前だけじゃなくて全部がボケ待ちだな。」
「ツッコミ役がいないと崩壊するな。」
シロモフが肩で笑った。
──
◇
リーアの「神速の剣姫」の剣筋は、
村を守るため、誰もまだ知らない小さな異変に向かって
鋭く構えられていた。
グリスは思った。
(俺の胃が一番の犠牲者だな……。)
だが、村の空気は妙に心地よく、
リーアの笑顔があるだけで、なんだか救われる気がした。
こうして、
カラビナ村の不思議と新たな運命を巡る
噂の“調査”が始まる。
笑いと一悶着の予感をまといながら──。
第20話「◆剣姫の護衛とクロニクルの牙」へつづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
少し不穏な回でもありましたね~( ^)o(^ )♬
これから物語がどうなっていくのかお楽しみに!
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声NGなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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