第18話「◆遠征の空、若葉の剣とクロニクルの兆し」
今日もよろしくお願いします!
今回はいつものストーリー(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
──リーア・バレンスタインからの依頼を完遂してから、一週間が経った。
グリスは、傭兵ギルドの片隅に置かれた木机に腰を下ろしながら、
目の前でカタカタ震える占い札を、面倒そうにめくっていた。
「……はい次。恋愛運、あなたは一生無理ですね。」
「えええ!? そんな……!!」
「冗談です冗談。ほら、見てください。
ちゃんと良縁の相が出てます、しかも晩婚タイプ。」
「ほ、ほんと!? えへへ、じゃあまだ大丈夫なんだ……。」
横でシロモフが、
「お前、客に情けかけてどーすんだよ」とでも言いたげに
尻尾をぱたぱたさせている。
『クロニクルベアラー』としての占いは、
本気でやると色々と“代償”がデカい。
だから最近は、ギルド内ではほどほどに済ませていた。
(……そろそろ、路銀がマジで尽きる……。)
机の端に積まれた銅貨の山を見つめて、グリスはため息をついた。
クエストをサボり過ぎたツケが来ている。
占いの小銭では、
自分たちのご飯代にすら追いつかないのだ。
シロモフが、木札の影からひょこっと顔を出す。
「おい、グリス。そろそろ外に出ろって。
モフるだけじゃ、パンは買えないモフよ?」
「……わかってるよ。」
そんなタイミングで、ギルドの受付嬢が声をかけてきた。
「グリスさん、これ。新しい依頼が届いてます。」
差し出された封筒には、
【村の運命を占って欲しい】の文字。
「……村、まるごと?」
「そうです。なんでも、最近不穏な出来事が続いていて……
村長さんがどうしてもって。」
(嫌な予感しかしない……。)
だが、背に腹は代えられない。
銅貨の山がぐらりと傾くのを見て、グリスは観念した。
「……行くしか、ないか。」
シロモフが尻尾で肩を叩く。
「へいへい、決断が遅い!
お前がトロいと、またオレのオヤツが減るんだからな!」
「どっちの腹が問題なんだか……。」
──
◇
こうして、グリスとシロモフの
“遠征占い旅”が始まった。
村までは、徒歩で三日はかかる距離。
当然、まともに歩く気などない。
(久々に……ちょっとだけ、本気出すか。)
グリスは、小道に立つと、
内側でクロニクルベアラーの力を薄く解放した。
視界の端に、小さなステータス表示が浮かぶ。
《クロニクルスプリント──発動》
足元の空気がぐっと沈んだかと思えば、
次の瞬間、グリスの身体は弾丸のように
村へ向かって駆けだしていた。
「うおおおおおおおおっ!?」
森沿いの街道を走り抜けるグリス。
シロモフは肩にしがみつきながら、耳元で叫んでいる。
「モフッ!!おいグリス! 顔が引き攣ってるモフよ!
もっとリラックスするモフ!」
「言われなくても分かってるっ! でも、久々だと
足が勝手に前に出るんだよ!」
その時、街道沿いを走る一台の馬車の真横を通り過ぎるグリス一行。
中で、母親と小さな子供がグリスの姿を目撃する。
「ママ、ママ! 豚さんがスゴいスピードで走ってるよ! 何でかな!」
「あらあら、本当ねぇ……たぶん、トイレが近いのよ〜。」
「そっか! 漏らしたら大変だもんね!」
(誰が漏らすかっ!!)
シロモフが肩の上でくくっと笑った。
「いいじゃん、グリス。お前、漏れそうな顔してるってさ。」
「うるせぇよ!」
──
◇
森の中に小さく開けた村、【カラビナ村】に到着した。
「……ぜぇ、ぜぇ……スプリント、使い過ぎた……。」
クロニクルベアラーの力は万能ではない。
やり過ぎれば、また“モフの代償”がやって来る。
(……帰り道は普通に歩こう。)
村の入り口には、
個性豊か……というか一癖ありそうな村人たちが
わらわらと集まっていた。
「おお! あなた様が噂の占い師様ですか!」
先頭に立つのは、
ガタイの良すぎる農夫。
「あんた、名前は?」
「わしは【バルク・ムキムキ】じゃ!」
(ムキムキ!? ……名前かよ!!)
思わずツッコミを入れそうになったグリスの頬を
シロモフが尻尾で叩いた。
「耐えるモフ!耐えるモフ!!名前に触れたら負けだモフ。」
次に出てきたのは、
異様にテンションが高いおばあちゃん。
「わたしゃ【オババ・ハイテンション】っていうんじゃ!」
(だから説明する名前やめろやーー!!)
「はいストップ。顔に出てるモフ、グリス。」
シロモフが必死にグリスの口を押さえる。
そして、奥から現れたのは、丸眼鏡の小柄な村長。
「わしが村長の【コマツナ・シゲ~ル】じゃ。
占い師殿、よくぞ来てくれた!」
(コマツナ!? シゲ~ル!? 野菜かーー!!あと何か巻き舌で発音めっちゃ良いな村長!)
「落ち着くモフ。全部にツッコミ入れていたら、日が暮れるモフ!」
グリスは肩を震わせながら、
シロモフに押さえつけられて、どうにか笑いを堪えた。
──
◇
それでも村人たちはマイペースだ。
「わしの腰はいつ治るんじゃ、占い師殿!」
「わしんとこの畑にイノシシが出るんじゃが、
イノシシ・ムキムキと相性は良いかのう?」
(イノシシもムキムキなのか……。)
「わしはいつ孫の顔を見れるんじゃろか? 名前は【カネゴン・ヒトシ】!」
(もう勘弁してくれぇぇぇ……!!)
「村の運命じゃなかったのかーーー!!」
ついにグリスの悲鳴が村に響き渡る。
シロモフが肩で笑っている。
「ほれ、働け働け。路銀のためだモフ。」
「俺の寿命が先に尽きるわ……。」
──
◇
そんな騒がしい村の中央。
占いに没頭するグリスの背後で、
一人の女性が荷馬車から降りてくる。
「……あれ?」
振り向いたリーアと目が合う。
「……グリス?」
村人たちがどよめく。
「コマツナ村長、知り合いかの!?」
「おお、そりゃ心強いのう!」
グリスは肩を落としてシロモフに小声で吐き捨てた。
「……もう、ツッコミが追いつかねぇ……。」
シロモフが小さく笑った。
「モフモフ、運命ってのはそういうもんだ、クロニクルベアラーさん。」
リーアが近寄ってくる。
「また会ったね、グリス。」
波乱必至の占い遠征は、
ツッコミと笑いを携えて、幕を開けたのだった──。
第19話「◆剣姫の影とクロニクルの種火」へつづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
久々の日常回も面白いものですな~( ^)o(^ )♬
書いてみると(^_-)-☆
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声NGなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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