第17話「◆いつものギルドに、いつもの声──占い師グリスの日常帳」
今日もよろしくお願いします!
今回はいつものストーリー(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
石畳を踏みしめて、グリスはギルドの重たい木扉を押した。
ギイ、と軋む音が、昼下がりの街の喧騒に混じって消えていく。
扉の向こうから、相変わらずの活気が溢れていた。
笑い声。酒の匂い。スープとパンの香り。
冒険者たちの軽口と、食器がぶつかる音。
──数日前までの“モフモフ姿”ではなく、
今日は完全に、いつもの“人間の姿”のままだ。
「お、グリスじゃねぇか!」
顔なじみの大男が、真っ先に声をかけてくる。
「ようやく毛皮脱いだのか!?」
「毛皮じゃねぇ。……体質みたいなもんだ。」
グリスは面倒くさそうに肩をすくめると、
肩に乗ったシロモフだけが、ちょこんと小さく「モフ」と鳴いた。
「グリス! モフ毛なくなって残念だな!」
「前は誰かれ構わず触りに来てただろうが……俺の気持ちも考えろ。」
「触ってもいいからまたモフ化しろ!」
「やだよ。」
傭兵たちのくだらない笑い声に、
グリスは目を細めながら、奥のカウンターへと歩を進める。
カウンターの奥では、いつものギルド職員──ティアが
書類を束ねながらこちらに気づいて、微笑んだ。
「グリスさん、モフじゃないの久しぶりですね。」
「やっぱり……お前も言うんだな……。」
「モフじゃないグリスさんも素敵ですよ。」
「褒めてるのか? 貶してるのか?」
「コーヒー、一杯と、」
「ミルク一杯でモフ!」
「はいはい、いつものですね。」
湯気の立つマグカップを受け取り、
ギルドの隅の空いたテーブルへ座り込む。
まだ昼を少し過ぎたばかりだが、
ギルドの中はちょうど仕事を終えた小隊や、
休憩中の冒険者で賑わっていた。
「グリス! なあ、ちょっと頼むよ!」
弓使いの若い傭兵が、両手に紙束を抱えて駆け寄ってきた。
「……何だよ。」
「また占ってくれよ! 先月、グリスに“北の砦じゃなくて西の山道行け”って
言われただろ? あれで正解だったんだ。大当たりだった!」
「偶然だろ。」
「いいから! ほら、次の依頼どれがいいか、頼む!」
紙束には、ギルドに張り出された仕事の抜粋が書かれている。
荷運び、魔獣退治、護衛、交易路の見張り……。
グリスは紙束をぱらぱらとめくると、指先に意識を込めた。
クロニクルベアラー──
それは物語を紡ぐだけでなく、“縁の糸”を辿る力でもある。
目を閉じ、指で一枚をはじく。
「……これだな。南の廃村調査。今なら魔物も薄い。
風向きが変わる前に済ませりゃ、無駄なく帰って来られる。」
「マジか! よし、それで行く!」
弓使いの青年は嬉しそうに駆けていった。
グリスはため息をつきながら、マグカップに口をつける。
「……お人好しだなぁ、俺も。」
「ミルク美味しいモフ~~♬」
──
◆占いは次々と
それから五分も経たないうちに、また誰かがやってくる。
「グリス! 私もお願い!」
剣を腰に下げた女性傭兵が椅子を引き寄せる。
「何を占えと。」
「来月さ、結婚するんだけど……この人で良かったか、ちょっと不安で……。」
「傭兵ギルドで恋占いってどうなんだ……。」
グリスは小さく笑い、
手を差し出して彼女の手をそっと取る。
「……左手の甲、見せてみろ。」
指先でなぞると、静かに流れ込んでくる“糸”の感触。
少女の未来。男の真心。
喧嘩の多さと、泣き笑いの多さと、でも決して途切れない縁の強さ。
「大丈夫だ。喧嘩は多いが、離れることはない。」
「……ほんと?!」
「ただし、腹の底で思ってることを黙るな。口に出せ。
黙ると拗れるぞ。」
「……ありがとう! グリス最高!」
女性傭兵は跳ねるように席を立つと、
ギルドの奥へと駆け戻っていった。
カウンターのティアが、奥から苦笑いしながら声をかける。
「占いの人、いつの間にか増えてきましたね。」
「俺は占い師じゃないんだけどな……。」
「でもみんな、グリスさんの言葉だと安心するんです。」
「……お人好し共め……。」
「相棒がそれを言うモフか?」
──
◆あたたかな昼の灯り
そうしているうちにも、三人目、四人目とやってくる。
行き先を迷う若者。
小隊を組むか悩む弓使い。
ギルドで独立するか悩む魔導士──。
誰も彼もが、ちょっとした“言葉”を欲しがっていた。
「占い、じゃなくてな。」
グリスは誰かの背を見送りながら、ぼそりと呟いた。
「……これは“物語”を読むだけだ。」
「グリスさん。」
ティアが新しいマグカップを差し出してくる。
「二杯目ですね。サービスです。」
「……悪いな。」
「いえ、代わりに私もちょっといいですか?」
「……何を。」
「次の休暇……ギルド辞めた後の人生、占ってください。」
「辞める予定あるんですか……。」
「いえ、ないですけど。あったらどうなるかなって。」
「……あなたは、ギルドに骨を埋めるタイプだ。」
「ですよねぇ。」
二人はふっと笑い合った。
──
◆何でもない一日
昼下がり。ギルドの暖炉には静かな炎。
仲間たちの笑い声が、空気をやわらかくする。
酒瓶を運ぶ声、パンを焼く香り。
シロモフがグリスの肩で居眠りしている。
彼の“クロニクル”は、まだまだ続く。
誰かの言葉の端に、見えない未来を読んで、
ほんの少し軌道を整えていく。
それだけのこと。
「……まあ、こういう一日も悪くないね。」
「たまには、いいモフね!」
グリスは小さく息を吐き、
窓の外の青空を見上げた。
まだ雲は薄い。
今日も、街は平和だ。
第18話:「◆遠征の空、若葉の剣とクロニクルの兆し」へつづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
久々の日常回も面白いものですな~( ^)o(^ )♬
書いてみると(^_-)-☆
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声NGなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
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