☆間話☆「レイテ家の灯、継がれる約束」
今日もよろしくお願いします!
今回はいつもと違うレイテ家の面々の視点のストーリー(^_-)-☆
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
白銀の月が、レイテ家の温室を照らしている。
昼間は見慣れた花々が咲き誇るこの場所も、
夜になると、月光に濡れてまるで別の世界のようだ。
その中央で、ひときわ大きなベンチに腰かけたマルグリット・レイテは、
亡き夫──エドワルド・レイテの最後の手紙をそっと胸に抱いていた。
隣にはリイナとレイナ。
姉妹はまだ幼さを残す瞳を、母と同じように静かに伏せている。
「……お母様、少し寒くないですか?」
そう声をかけたのは、妹のレイナだった。
気丈な姉のリイナよりも、レイナは家族の体調や心の温度に敏感だ。
マルグリットはふっと微笑み、首を横に振る。
「いいの。ここが一番、あの人の声がまだ残っている気がするから。」
温室の隅、夫が大切にしていた小さな書斎机。
そこに、夫が最後に綴った三通の手紙が今も置かれていた。
「君たちが記憶の回廊を越えると思っていたよ──」
あの一文を思い返すだけで、まだ胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
リイナがゆっくりと母の隣に座り、手紙の封を撫でた。
「お父様は……全部お見通しだったんだね。
私たちがあそこを通ることも、グリスさんが導いてくれることも。」
「……ええ。あの人らしいわ。」
マルグリットの目に、思い出の影が宿る。
──
◆ 父の背中
思えば、レイテ家の当主として、エドワルド・レイテは厳しくも優しい人だった。
強欲で権力を握るだけの貴族ではなく、
誰よりも家族と領民を思い、言葉少なくも行動で信頼を示す人。
少女だったリイナは、そんな父の背中を遠くで見つめて育った。
「……私は、お父様みたいになれるのかな。」
ぽつりと零したリイナの声に、マルグリットは肩を抱いた。
「なれるわ。リイナ、あなたたちは私の誇りよ。」
その言葉に、リイナの目尻がわずかに潤む。
妹のレイナは姉の手をぎゅっと握った。
「お姉様は、もうなってるよ。
……私だって、がんばらなきゃ。」
姉妹の指が絡む。
父の遺言と、グリスが届けてくれた“約束の灯”は、
彼女たちの心に静かに根を下ろしていた。
──
◆ 三人の未来
マルグリットはそっと視線を上げた。
月光の下で、花弁の奥に漂う夫の影を探すように。
「リイナ、レイナ……これから、私たちは何をするべきか分かっている?」
母の問いかけに、姉妹は小さく頷く。
「レイテ家を、もっと強くする。
でも、ただ力で抑えるんじゃなくて……。」
リイナが言葉を探すと、レイナが言葉を継いだ。
「……お父様がくれたみたいに、安心できる居場所を、
もっとたくさんの人に作るんだよね。」
マルグリットは目を細めた。
「ええ。それがあの人の望みであり、
私たち家族の使命なのだから。」
そっと頬を撫でた夜風が、亡き父の残り香のように心を撫でていく。
──
◆ グリスという“縁”
リイナがふと、温室の出入り口を見やった。
あの扉から、頼りない足取りでグリスが入ってきて、
手紙を差し出してくれたときのことを思い出す。
小さな従者シロモフと並んだ姿は、貴族の目から見れば異質だった。
だが──
「……グリスさんって、不思議な人だよね。」
リイナが呟くと、レイナが笑った。
「うん。普通の平民なのに、全然普通じゃない。
……ちょっと、可愛いところもあるし。」
「可愛い……?」
リイナが思わず吹き出すと、レイナが頬を膨らませる。
「だってそうでしょ!あんなに難しいこと考えて解ける頭脳があるのに、
シロモフさんと一緒にモフモフしてたりさ……。」
「ふふ、確かに。」
マルグリットもつい笑いを零す。
父の死を受け入れたばかりの家族の中に、小さな笑い声が生まれる。
それはまるで、グリスが残した小さな奇跡のようだった。
──
◆ 恩義と約束
「……母様。」
リイナが真剣な目で母を見る。
「もし……もし、あの人が困ることがあったら、
私たちは絶対に助けるべきだと思う。」
「もちろんです。」
マルグリットの声には、ためらいがなかった。
「グリスさんがいなければ、私たちはまだ、お父様の思いを見つけられなかった。……レイテ家は彼に借りがあるわ。」
「でも、きっとあの人……恩なんていらないって言うよね。」
レイナが小さく笑う。
姉妹は顔を見合わせて笑った。
「そうね。だから、こっそり返していきましょう。」
マルグリットの目に、確かな決意が灯る。
「彼が必要とする前に、そっと支える。それがレイテ家の誇りですよ。」
「「はい!」」
姉妹は同時に声を揃えた。
──
◆ 夜空に溶ける灯
母と姉妹は再び手紙に目を落とす。
「愛している」という最後の一文が、
声にならない涙を再び溢れさせた。
だが、もう以前のように泣き崩れることはない。
悲しみを抱えても、それを背中で支え合える強さが、
三人の胸に確かに芽生えていた。
「お父様……私たちは大丈夫です。」
リイナがそっと呟く。
レイナが母に寄り添い、マルグリットが娘たちを両腕で包み込んだ。
月の光に包まれて、レイテ家の温室は静かに輝いていた。
そしてその中で生まれた小さな誓いは、
やがてグリスの背を支える見えない盾となるのだろう。
父の灯は、もう消えない。
これからは三人が、それを紡いでいく。
“ありがとう、グリスさん──”
心の中で同時に呟いたその言葉が、
夜風に乗って、遠くの彼に届くことを信じて。
第17話「◆いつものギルドに、いつもの声──占い師グリスの日常帳」へつづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
いや~、登場するキャラクター視点の回想シーンも面白い
ものですな~( ^)o(^ )♬
書いてみると(^_-)-☆
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声NGなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!




