▽第0話③「俺、“断罪”されるみたいなんですけど?」
《前回までのあらすじ》
不思議な映像を流す箱から自分が断罪される映像が流れていた。
「へへへ……オーク族でも、女なら関係ねぇってなぁ――」
光を放つ一台の長方形のようでいて、舌の台座がワイングラスの取っ手のようにグインとカーブを描いている足場。その長方形の真ん中から映し出されたのはなんだ?これは、未来の自分の姿なのか...。
その絵から少年は目を逸らすことができないでいた。
何故なら、グリスにとって見覚えのある“顔”だったから。
そもそも同じ顔だったから。表情、声、仕草――どれを取っても、自分そのもの。
けれど、そこに映っている男は、凶悪な暴漢だった。
その映像の中で、“自分と同じ顔をした男”が、少女に襲いかかっていた。
醜悪な笑みを浮かべながら、恐怖に震える少女を追い詰めていく――
深夜の森の奥、人気のない山道に一人で佇む少女。そこへ現れたのは、粗野で不穏な雰囲気を漂わせる数人のオーク族の男たちだった。
「こんな夜中に女一人でうろつくなんて、どういうつもりだ?」
「お願い……やめて……近寄らないで……!」
少女は恐怖に声を震わせるが、男たちはその怯えをあざ笑うようにじりじりと距離を詰める。その中でもひときわ悪目立ちする赤髪の男が、彼女に手をかけようとしたその瞬間――
「お前にそんな時間、残っていればの話だがな」
低く静かな声が闇の中から響いた。
「……誰だ?」
男が振り返ろうとした瞬間、彼の体は音もなく裂け、両断されて地に倒れた。何が起こったのか、誰もが一瞬理解できずに固まる。
そしてそこに立っていたのは、巨大な黒い大剣を携えた一人の戦士。
まるで闇そのものから現れたようなその男は、冷たい目で残る盗賊たちを見据えた。
「“悪”に情けは不要だ。」
その声に、残った男たちは恐慌をきたし、散り散りに逃げ出していった。
「まさか……アークブレイカー!? 伝説の……勇者か!?」
少女を助けたその剣士の背には、かつて英雄だけが扱えると言われた“アークブレイカー”があった――。
――そしてそれを見ていた「俺」こと「ボク」は、困惑していた。
今見ているこの映像が何なのか、自分が今どこにいて、何を見せられているのか分からない。ただ、目の前の“黒く光る箱”に映るその幻のような光景は、確かに心を揺さぶった。
それは、絶望の中の少女を救うため、圧倒的な力で悪を断罪する――そんな“物語の主人公”のような存在だった。
次の瞬間、画面が激しく閃く。
正義の象徴のような輝きを放つ剣が、空を裂くように振り下ろされた。
ズバッ――!
剣を手にした勇者が、暴漢の身体を容赦なく真っ二つに切り裂く。
血飛沫が画面を染め、すべてが、あっけなく終わった。
グリスの足元から、力が抜けた。
「……な、なんで……ボクが……?」
「おい、坊主大丈夫か?」
「「すげぇ汗だぞ!?」
そんな兄弟二人の心配する声も聞こえないくらい少年は困惑していた。
目の前に広がる光景が、現実なのか幻なのかすら分からない。
心臓が冷たく縮こまり、息が詰まりそうになる。
未来の自分が――
誰かに語られた“予言の物語”の中で、
悪しき存在として断罪され、惨殺されていた。
それはただの映像でも、虚構でもない。
この箱の中で映る絵は、やがて少年訪れる“確定した未来《》”のように感じた。
「おい...。」
「俺は……こんなふうに死ぬのか……?」
「おいったら!」
「こんな……最悪な存在として……」
胸に押し寄せるのは、恐怖、混乱、そして否定しがたい絶望だった――。
「ボクって……断罪される運命なのかな……」
「「おい!!!坊主(少年)ッツこっち向け!!!」」
「んあッ!?」
ビックリして顔を上げる少年。
「どうしたんだよ。あの映像見てから少年変だぞ?」
「あ、すいません。しんみりさせちゃって。」
「おい、あの|アニメ?を見て何か思うことでもあるのか?」
「うん。」
「おう、坊主名前は?」
「え、ぐグリスだけど。」
「グリスか。ん?何か今さっき聞いたことあるような。まあ、今はいいや。」
「なあ、グリス??え、そんなに嫌な未来ならさ――」
「変えちゃえばいいんじゃねぇの?」
「え?変えるって未来をってこと。」
「そうそう、そんな深刻そうな顔してないで、嫌な未来は予測して避ければいいだけの話であって必ずしも確定した未来ってわけでもない。自分の未来はどんな形にだってすることができる。だから、悲観する暇があるなら、行動した方がいいぜ?」
「兄貴の言う通りだぜ。最後まで足掻けば、何か変わるかもしれないじゃん。少年の未来っていうの?
よくわかんないけどさ。」
それは、かつてどこかの神が言ったという言葉に、どこか似ていた。
グリスの目に光が戻る。
空白だった“予言の書”の1ページ目に、にじむように文字が現れ始める。
「……そうか、焼き直せばいいんだ、運命だって。」
――これは、焼豚焼飯に救われた少年が、冒険を通じて青年となり、自らの運命を書き換える物語。
“焼豚の神の再臨”など、まだ誰も信じちゃいなかった。
第1話へつづく
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どうも、おはようございます!
焼豚の神でございます。
今回も読了ありがとうございます('◇')ゞ!
▽プロローグは全3話構成!▽
6月 9日(月)6:10 → ▽第0話①「なんで俺だけ“焼豚顔”なんだ……?」
(旧タイトル:焼豚顔のオーク少年グリス)
6月10日(火)6:10 → ▽第0話②「神様、なんで町中華屋にいるんスか……」
(旧タイトル:神様は町中華にいた!)
6月11日(水)6:10 → ▽第0話③「俺、“断罪”されるみたいなんですけど?」
(旧タイトル:焼豚グリスの断罪!)
そして――第1話①「帰れなくなったんですけど...何故か始まったささやかな修行の日々!」
(旧タイトル:白紙の本と書けないペン)
【本編スタートは、6月12日(木)6:10から!】
その後も毎朝6時10分に更新予定です。
朝のスキマ時間やコーヒーのお供に、ほんのひとときでも楽しんでいただけたら嬉しいです。(^^♪
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!
「初投稿」という名の第一歩に、どれだけ脂が乗っているか…
ぜひ読んで確かめてください!
感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!
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