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第6話「◆その手の温度、初任給の重み。」

今日もよろしくお願いします!


ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!

──厨房に鳴り響くパン釜の爆音。


バンッ!!


今日も元気に爆発しそうな勢いで、パンを“ぶっこみ焼き”している老婆が一人。


「今日もいい音だねぇ。パンが叫んでるわぁ」


「普通、パンってそんな音出ないですよね!?てか叫んでるのであれば、それはパンが悲鳴を上げているのでは!?」


「これもう拷問道具だよね。パンの皮が焦げてるどころか悲鳴あげてるレベル」



【パン屋内 チラシ掲示板】


《婆パンの店 “ベーカリーたんぽぽ”》

- 焼き直し?お断りッ!-

★噛むたびに涙腺にクる、全身直撃のハードブレッド!

★「記憶に刻む焦げ目」保証付き

★武器としてのご利用はご遠慮ください


【今月の限定パン】

『涙焼き(なみだやき)』


感情を噛み締めたい方に


※心が弱っている方は要注意(胃にクる)


【厨房奥 作業机】


グリス(筆を取り出して)「記録する価値、あるよな。これはもう、食文化ってより“信仰”だわ」


「ちょっとそこ、焼き直しなんて言葉出したらダメだよ? 焦げには焦げなりの人生があるんだから」


「焦げって単語にそんな哲学込める人初めて見た……」


「昔はね、泣きながら焼いてたんだよ。戦場の前線にいる子らにパン届けるためにね。柔らかいのはすぐ腐る。硬くて、焦げて、でも旨味が残る──それが“生き残るパン”。」


「噛んで、泣けるパンか……(ぽつりと)」






『婆パン伝承録・壱』


【名称】 涙焦げ式 極硬パン

【別名】 武闘派ハードブレッド《婆パン》


【材料】


古代麦 120g(風化させるほど良し)


涙水(塩9:水1※一口飲めば喉が焼ける!) 100ml


灰炭酵母 少々(あえて焦げを育てる)


黒砂糖ひとつまみ


後悔の気持ちを生地に練り込むこと


【焼き方】


誰かのために焼くつもりでこねる(憎しみ禁止)


焼き時間:あなたの過去を思い出せるまで


焦げは魂の証、剥がさぬこと


【注意書き】


焼き直し厳禁!それはもう別の人生!


食べる前に深呼吸。泣いてもいい。

===================


【パン表面に刻まれた%$&#メッセージ】



「……うわ、なんか書いてある。けどこれ、もはやパンじゃなくて石碑?」


「これは......読める?」


「無理だよ!今は食べることに集中しないと!!! 読むことに集中してパンを噛むことから集中を解いたら前歯が折れちゃう!!」



「……でも、やっぱり美味いよな、これ」


「うん、噛んだ後の“達成感”で泣きそう……」


「焼き直し、禁止だかんねー!!焦げにも感情が染みてんだからぁ〜!」




※※※





──次の日の早朝、まだ薄暗い空の下。

“ベーカリーたんぽぽ”の裏口に、グリスはいつものように現れた。


「……んしょっと。今日は最後の日か」


「名残惜しいの?」


「うん、ちょっとだけ。昨日、パンで涙出たから……たぶん、味覚じゃなくて感情のせいだと思う」


「いや、それたぶん“歯の神経”が悲鳴を上げているんだと思うけど?」


「うるさいな」


 


店の中では、ヘルおばばがすでにパンを焼いていた。

いつも通り、炉の前に仁王立ち。

だけど、その背中が、今日はほんの少し──あったかく見えた。


「遅いぞ、若造ォ!!今日は最後なんだろうがッ!!」


「うわ、やっぱり声量はいつも通りィ!」


「声が出るうちは元気ってことじゃ!!さあ、手ぇ動かせェ!!」


 


皿を洗い、床を磨き、パンくずを掃き集め──

グリスは、いつもと同じように働いた。

ただ、どこかひとつひとつの動作が丁寧になっていた。


 


「はぁー……終わった……今日も、なんとかやりきった……」


「えらいぞ若造ォ。最後までサボらんかったな。褒めてつかわす」


「涙が出るほど嬉しいのに、言い方だけで全部台無しになるの何なの!?」


 


おばばは、作業台の奥から、ひとつの封筒を差し出した。


「ほれ、これじゃ。おぬしの“初仕事の報酬”じゃよ」


「え……!」


 


震える手で、封筒を受け取るグリス。


中には、数枚の紙幣と、手書きのレシートのような紙片が入っていた。


【支給内容】

・基本賃金(3日分)

・パンくず食べ放題(非課税)

・肩たたき券(1枚・期限切れ)

・ひとこと:働くってのは、パンより硬くて、味わい深いもんじゃ。


 


グリスは、しばらく封筒を握りしめたまま、声を出さなかった。


「……なんかさ」


「うん?」


「……すごく、大変だったけど。帰る時、胸の奥が、ポカポカしてる」


「そりゃパンじゃね? 消化しかけてるだけでは?」


「そうじゃないの。ほら、“やりきった”って感じ?

最初はただのバイトだったのに──

……いつの間にか、自分の力で“価値”をつくれたって、思える」


 


ヘルおばばが、背中を向けたままポツリと呟く。


「おぬしが、この3日で覚えたのは、“パンの焼き方”じゃない。

“責任を持つ”ってことじゃ。……仕事とは、そーゆーもんじゃ」


 


グリスはしばらく黙ったあと、ふと、おばばに聞いた。


「ねぇ、ヘル(ばあ)。……また、依頼出たら、来てもいいですか?」


 


おばばは一瞬だけ振り向き──

それから、フンッと鼻を鳴らして、言った。


「ハッ!来たきゃ勝手にくればいいだろ!」


 


その言葉に、グリスはふっと笑って、頭を下げた。


「……ありがとうございました! “パンの道場主”ヘルおばば師範!」


「二度と呼ぶな!!」


 


 


──その帰り道。


グリスとシロ=モフは、並んで夕暮れの街を歩いていた。


カラン、コロンと、ポケットの中で“初任給”が揺れる。


「……なんだろうね。誰かに褒められたわけでもないのに。

自分で自分をちょっとだけ誇らしく思えるって、こういうことなんだね」


「へぇ、グリスもそんな風に思える日が来るとは……」


「バカにしてるだろ」


「してないよ。ちょっと感動してるだけ。……ほら、今日はしっとり終わろ?」


「……うん。たまには、いいよね。

静かな風に吹かれながら、“ああ、自分も少しずつ、ちゃんと生きてるんだな”って──」


「コラ~~、若造ッ! お前、財布を店に落とした挙句、報酬まで店に置いて帰るとはいい度胸してるじゃないこの若造がー!!!ババアからの施しは受けないってことか!?」


「ぎゃあああ!?ごめんなさ~い!?違うんです~~。 えっ!? ウソ!? それオレの荷物!!?マジで!?今までオレ手ぶらだったの気づかなかった!」


「依頼初達成で舞い上がってお店に置き忘れたんじゃない?財布とかいろいろと。」


「げ!?そうかも、ごめんヘル婆!けど、ありがとう届けてくれて。」

「フン!二度と同じことするんじゃないよ!じゃあな!若造が!!」


「うん!ありがとう、気をつけるよ!」


──その夜、記録者グリスはノートにこう記した。


《クロニクル・レコード No.029》

「初任給は、小さくて重たい。責任の味がした。あと、パンの香りもちょっとした。」



【次回予告】

次回・第7話『ジョブチェンジ詐欺!?“マッサージ店”の正体は──』

→ 半裸筋肉の楽園へ!?癒やされるはずが揉み潰される恐怖!

果たしてシロ=モッフの“毛並み”は無事なのか──ッ!?

どうも、お世話様でございます!


焼豚の神でございます。

「ヘル婆」いい味出してますなぁ~( ^)o(^ )♬


いや~、新キャラが増えたことでますますグリス君のツッコミの制度に磨きがかかっていますねぇ~。

キャラ同士の掛け合いが面白いですねぇ~( ^)o(^ )


グリス君が、終始振り回されている感じがしますけど、そこは愛嬌ということで


許してあげてくださいな♬


でも、こういうアップテンポなキャラクターたちの掛け合いも良いものです


なぁ~(*ノωノ)ホッホッホ♬


良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!

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