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第5話 「◆パン屋の婆ちゃんが焼く“硬すぎるパン”と涙のはなし」

今日もよろしくお願いします!


ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!


あと、腹筋崩壊注意報発令します~。


読むときは、電車内とか、人混みは避けて一人になれる時間帯に読んだ方が良いかもしれませぬ!


近くに人がいると、「この人何クスクス笑っているの?」って言われるかもしれませぬ故、気を付けるでござるよ!('ω')ノ

──朝、7時。

人気のない商店街の一角。

その一角に、場違いな緊張感が走った──


 


ガラ……ガタタタ……ビビビビィィィンッ……ッキュゥゥ……!


 


金属が震えるような、悲鳴のような音を立てて、

看板もサビついた“ベーカリーたんぽぽ”のシャッターが、ゆっくりと開いていく。


 


「うわッ!? な、何この音!? シャッターがビビってる音、初めて聞いたんだけど……!?」

と、顔を引きつらせながら呟くグリス。


 


その声に、店の奥から雷鳴のごとく返事が響く。


 


「ビビッてんのはシャッターじゃねェ!!お前の気配じゃ!!」


 


ズドンッッ!!!と、炉の前に仁王立ちする老婆が怒鳴った。


 


「そんなナヨ声で開けるからシャッターまで情けなくなるんじゃァ!!

金属にもプライドってモンがあるんだよォ!!」


 


「えぇ!? シャッターにまでメンタル指導入るのこのパン屋!?!?」


 


「シャッターは挨拶じゃ!!“今日も焼くぞ”の気合いの音色に変えてけェ!!」


 


「無理無理無理!!金属に圧をかける店ってなに!? 重金属バンドかよ!!」


 


──こうして、今日もベーカリーたんぽぽは騒がしく幕を開けたのだった。





グリスは頭を抱えながら、薄曇りの空の下に立ち尽くしていた。

目の前にあるのは、看板も外壁も色あせて今にも崩れそうな、小さなパン屋──


【ベーカリーたんぽぽ】


……ただし、“ぽ”の文字だけ風雨に削られて、もうほぼ読めない。


「またパン屋かぁ……」

グリスは自分の肩の上に乗った毛玉──いや、相棒・シロ=モフに呆れたように見られているのを感じながら、小さく言い訳する。


「でも今日は違うんだって。“夕方からの片付けだけ”って書いてあったし、面接もゆるそうだったんだよ!」


「いやいやいや、昨日“早朝5時出勤・粉塵地獄”で見事に爆死してたでしょ?鼻毛、真っ白だったんだけど?」


「……っうるさいな! 今度はきっと“柔らかい系”パンに違いない!!」


「いや、もうその発想がヤバいの。君、もしや……“ベーカリーマゾ”?」


「ちがうッ!今日は本当にただ仕事したいだけなの!!」


そんなやりとりをしながら、グリスは重たそうな扉を押し開けた。


──ギイ……


「……って、うわ」


店内は予想以上に年季が入っていた。

壁にはレトロなポスター、裸電球、床の木板はミシミシと音を立てる。

だがその一角、炉の前にまっすぐ仁王立ちしている人物の姿があった。


──小柄な老婆。

背筋はピンと伸び、白髪をきりりと結ったその背には、“職人”の風格が漂っていた。


そして、前掛けには刺繍された文字。


『堅焼きこそ、正義。』


「来たか、若造!! 新入りかァッ!!」


──彼女こそ、パン焼き婆《ヘル=おばば》。


パン屋であると同時に、魂を叩き焼く修行場の主でもあった──!


「若造ォ!! まずは“地獄の堅焼きパン研修”じゃ!!」


「地獄……って、まさかそんな物騒な──」


ゴッ! バッ!


「い゛ってえええええ!? 何この硬さ!? 鉄!?今、鉄焼いた!?!?」


「フフ……おぬしには“お試しパン”じゃ。試練の歯応え、味わうがよい」


「“試し”の意味重すぎるぅぅ!!! 顎と人格、両方砕け散る!!!」


シロ=モフが横からピョンと炉を覗き込む。


「うわ、見て! あれパンっていうより……金塊じゃん。マイ〇クラフトのブロックかと思った」


「え?マ〇ンクラフトって何シロモフ!?」


「ん????気にしないで~ただの独り言だから~(^_-)-☆」


「え?ああそう??いや、そんなことより、硬すぎないこのパン!?」


「うむ。耐久等級S!落としても沈まぬ!跳ねる!……そして食える!!」


「いや“そして”のとこ雑ッ!?!」


 


グリスは泣きながら厨房の掃除や食器の洗い物を手伝った。


──そんな中、ふとした休憩時間。


「若いの。顔が……遠いところ、見ておるな」


「……え? あぁ、まぁ……ちょっと、旅をしてたもので」


「ほぉ……どこまで行った?」


「……そうですねぇ、だいたい“竜の巣穴を5つ超えた先の、現実と夢のあいだ”くらい……?」


「…………えらく曖昧な表現だね!?」


おばばが湯呑みをグイッと差し出す。


「まぁ飲め。“ルサリカの朝露と灯火茸の煮出し茶”じゃ。冷めると毒になるがな」


「なんか急に異世界感強くなったし怖ッ!? それ“お茶”のカテゴリでいいの!?!?」


 


その後、軽食として差し出された“素焼きパン”──


硬い。あまりにも硬い。

ひと噛み目で、グリスの目に火花が散る。


「ガッ……!! な、なんだこの密度!?口の中に地層ができたぞ!?!」


「噛め。歯の根まで、記憶が染み込むまで」


だが、5噛み、10噛み──


味が変わっていく。

素朴で、温かく、ほろ苦くて……そして、どこか懐かしい。


「……これ……」


「ふふ。ワシがこのパンを焼くようになったのは、戦が終わった年じゃ」


 


おばばは、そっと炉を見つめる。


「夫も、子も、皆……おらんようになった」


「……」


「それでも、パンだけは焼けた。焼くことで、思い出せた。……噛むことで、生きてる気がした」


古びた壁に並んだ写真たち。

そこに写る若かりし夫婦と子ども──笑顔の残像。


「……歯が立たんパンじゃがの、ワシにとっては、唯一の“やわらかい記録”じゃよ」


グリスは何も言えずに、ただ噛み続けていた。

カリッ、ゴリッ、バリッ。

──だが、いつしかその硬さが、沁みる味に変わっていく。


“何も残せなかった”と感じていた異世界での時間。

──誰も知らず、認めてもらえず、それでも歩き続けた日々。


けれど、その全てを、自分だけは忘れていない。

この味のように、ちゃんと、沁みている。


「……ありがとう、おばばさん」


「ふふ。泣いてもええんじゃぞ?」


「泣いてないってば……」


「こっちは泣けてきたよおおおぉ!!」


と横で、“金塊パン”をかじっていたシロ=モフが、ホロホロと涙をこぼしていた。


「パンなのに……もふ度ゼロなのに……味が……人生味すぎてツラい……!」


「お前、人生2周目なのか!?」


 


──その日、グリスは“ベーカリーたんぽぽ”で、短期バイトとして働くことになった。


履歴書には書けない経験。

でも、記録者のノートにはこう記された。


 


《クロニクル・レコード No.028》

「噛んで泣けるパンは実在した。痛い。でも、やさしかった。」



        第6話「その手の温度、初任給の重み。」へつづく

 

どうも、お世話様でございます!


焼豚の神でございます。

新キャラ登場しました!

その名も「ヘル=おばば」略して「ヘル婆」とでも呼んでくださいな(^^♪

いや~、新キャラが増えたことでますますグリス君のツッコミの制度に磨きがかかっていますねぇ~。

キャラ同士の掛け合いが面白いですねぇ~( ^)o(^ )


グリス君が、終始振り回されている感じがしますけど、そこは愛嬌ということで


許してあげてくださいな♬


でも、こういうアップテンポなキャラクターたちの掛け合いも良いものです


なぁ~(*ノωノ)ホッホッホ♬


良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!

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