第2話「◆ボク、帰ってきました。……ただいま?」
今日もよろしくお願いします!
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
あと、腹筋崩壊注意報発令します~。
読むときは、電車内とか、人混みは避けて一人になれる時間帯に読んだ方が良いかもしれませぬ!
近くに人がいると、「この人何クスクス笑っているの?」って言われるかもしれませぬ故、気を付けるでござるよ!('ω')ノ
森を抜けた先の空は、驚くほどに──変わっていなかった。
淡い夕焼けが滲む空。
湿った土の匂い。
どこか寂しげな風鈴の音が、遠くでチリンと鳴っている。
グリスは、草を払いながら坂道を歩いていた。
「……地元、めっちゃ空気薄く感じるんだけど?」
荷物もなければ、ちゃんとした旅装すらない。
かろうじて身につけていたのは、使い込まれた肩がけバッグと、胸ポケットに収まった《記綴筆》だけ。
カバンの中には──魔導書《記綴録》。
右手でペンを握りしめながら、グリスはぽつりとこぼす。
「これ一本と1冊だけで、どうにかなるもんなのかねぇ……現実ってやつは」
そんな独り言に応える者は、森にはいない──
……はずだった。
「そんなの、やってみなきゃわかんないでしょ?」
「わっ!?」
いきなり頭上から声がして、グリスは飛び跳ねた。
視線を上げると、肩の上にちょこんと乗っているのは、白くてモフい何か。
──いや、白くて、めっちゃモフい。
それはもう、例えるならば、羊毛1000%のもっふもふ。
「お、お前……出てくるの早くない!?」
「だってさ、なんかもう“顔に書いてある”んだもん。『このあと絶対、メンタル落ちる』って」
涼しい声でそう返すと、モフは軽くグリスの肩を叩いた。
「呼び名、覚えてる? シロ=モッフだよ。よろしく、冴えない記録者さん」
「冴えないとか言うな!! ……っていうか、なんで出てきてるの!? モフ化75%超えで実体化じゃなかったっけ!?」
「これはねぇ、“緊急共鳴”っていう裏ルール。要は、君が“寂しい”って書いてるからだよ。顔に」
「感情ログ読まれてる!?ボクの顔ってチートデバイスなの!?」
「うん。チートってよりチープ感あるけど」
「黙っててシロモフ!!」
モフの容赦ないツッコミに、グリスは頭を抱える。
──やがて、住宅街の路地が見えてきた。
日もすっかり落ちて、街灯の光がポツポツと灯る中、グリスは足を止めた。
目の前にあるのは、木造平屋の──地区25年以上は経っていそうな、年季の入った家。
昔と変わらぬ──けれど、妙に距離のある、自分の家。
「……ただいま、って言えば、いいのかな」
玄関前で立ち尽くすグリス。
だが、すぐには扉を叩けなかった。
どこか、胸の奥がざわついていた。
「あの頃のボクは、この家が息苦しくて──逃げたくて仕方なかった。
でも今は……ちょっとだけ、“帰りたくない理由”が消えてる気がする」
「うん、成長ってやつだね。モフ化も進んでるし」
「その成長いらない! ていうか黙っててシロモフ!!」
バタバタと騒ぎながらも、グリスは深呼吸をひとつした。
そして、そっと扉を開ける。
「……おじゃましまーす、自分ちだけど」
廊下の感触。埃っぽい空気。
馴染んだ、でもどこか遠い気配のする部屋たち。
そして、居間。
「ふぅ……帰ってきたって感じするなあ」
グリスは畳の上にごろんと転がる。
──だが、数秒後。
「……ねぇ、ここ家なの? 小屋? 仮設? 鳥小屋の拡張版?」
「うるさいな!! やっと落ち着けたのに!!」
「いやいやいや、ちょっと狭すぎるっていうか、段ボール感あるっていうか……
もしかして君、段ボールで家を作る種族だった?」
「やめろおおおおお!! それ今、心にくる!!」
「つまり、ボクらが今いるこの空間は──“モフ箱”だね」
「モフ箱て何だよッ!!!」
日常、再開。
モフとの軽妙なやり取りは、グリスにとって“平穏”であり“ストレス”でもある。
でも、それはきっと──今の自分にとって、必要な空気。
その折、グリスは布団代わりの薄い毛布にくるまり、畳の上で天井を見つめていた。
「……なあ、シロモフ」
「ん?」
「ボクさ。やっぱり……未来、変えたいんだよね」
「未来って、“断罪の刻印”のこと?」
「うん。あれがこのまま現実になったら、ボクは……焼かれて真っ二つになる。真っ黒こげでジューシーな、炭化カット焼豚エンドだよ」
「そんな終わり、シナリオとしても不出来だね。どうするの?」
グリスはごろんと寝返りを打つ。
「まず、半年。……半年間で、“記録者”としての修行をしながら、情報を集めて、スキルの練度を上げて、回避フラグ立てまくる。
それから──親友の“死”も、なんとかして書き換えたい」
「……そっちも、まだ諦めてなかったんだ」
「そりゃね。あいつの“死”が、一番最初にボクの本に記された“悲劇”だったんだから。忘れろってほうが無理だろ。それに、まだあいつに謝ってないから逃げた時のことを。それも言えないなんて男が廃るってものだしさ。」
シロ=モフの表情が、少しだけ柔らかくなった。
「いいね。その意気込みは天晴れだ。ただし、その書き換えには“ステータス改竄”と“世界系干渉”の両方が必要だよ。今の君のレベルじゃ、物理的に不可能だ」
「わかってるよ。でも……それでもやりたいんだよ」
静かな、でも強い決意。
しばしの沈黙のあと──
「じゃあ、まずは“身バレ”対策からやらなきゃだね。君の今の肩書き、名前とスキル名クロニクルベアラー《物語を綴る者》。この2つだけでも、世界から見たら“超重要存在”だよ? 国によっては“捕まえて国宝にしよう!”って動くレベル」
「うわ、それマジでシャレにならんやつ……」
「だ・か・ら!」
シロモフは、得意げにふかふかボディを張って威張った。
「ここで、第三のスキルの出番! ◆盗命の手、通称。このスキルは、対象の“運命情報”を“軽く盗んで”自分に適応・改ざんできるスグレモノ!」
「それ、マジで便利だけど“チートくせぇ”響きすぎて逆にバレそうなんだけど」
「安心して。今回は“君自身”のステータスだけを改ざんするから、外部ログには一切痕跡が残らないように処理するよ」
「で、どう変えるの?」
「君の肩書き、クロニクル・ベアラーを──フォーチュン・スニッチャーに改変!」
「……」
「ほら、占い師+スリ師?盗賊??まあいいや。とにかく、“見抜く力”と“奪う力”の合体。未来を読む&道を切り開く、って意味でもぴったりでしょ?」
「え、待って。スリ師!?盗賊って。ボクそんなアウトローキャラじゃないし。
シーフとかローグとか、職業にしたくないんだけど!?」
「いやいや、占術師オンリーだと胡散臭いし、情報収集もままならない。盗賊キャラって便利なんだってば」
「なんか“財布をこっそり抜き取る系の主人公”になっていかない? 大丈夫??」
「大丈夫。“占術”がメイン。“盗賊”はサブ。バレた時の言い訳として“トリック”枠よ。あと、“フォーチュン・スニッチャー”って語感、最高じゃない?」
「それっぽく言っても、いやなものはいやだぁぁぁ!」
「うるさいなもう、“スニッチャー”で登録完了っと♪」
「勝手にやるなあああああ!!」
バタバタと畳の上で転がりながら、グリスは絶叫する。
だが──
その顔はどこか、少しだけ笑っていた。内心かっこいいと思っていたのは内緒である。
──こうして、クロニクル・ベアラ《物語を綴る者》は影を潜め、
“未来を見て”“運命を盗む”職業が誕生した。
新たな名を得たグリスは、明日へと動き出す。
世界を書き換えるために。
誰かの死を“なかったこと”にするために。
そして──炭化カット焼豚ENDを回避するために。
新たな名を得たグリスは、畳の上にどさっと寝転ぶ。
だがそのとき──
「グゥ〜〜〜……」
「……」
「……」
「……お前さ、記録は改ざんできても、腹の音だけは“誤魔化せない”んだね」
「うるさいな! そういう仕様なんだよ!」
グリスは顔を真っ赤にしながら、部屋の隅にある魔冷庫へふらふらと向かう。
ガチャ──
「…………」
「…………」
「空っぽじゃん!!!」
「未来を盗んでも、魔冷庫の中身は盗めないんだね。盗賊って名乗ってるのに、そこ無力なの?」
「うるせぇ! 食料っていうリアルが一番強いんだよ!!!」
崩れ落ちたグリスの横で、シロ=モフがふよふよと浮遊しながら提案する。
「じゃあ、そろそろ現実に戻ろっか。バイト探そ?」
「……だな。物語を綴る者にも、胃袋はあるんだよ」
その夜、グリスは重たい体を起こして、
街の掲示壁──求人の壁の前に立っていた。
ふと目に留まったのは──
【急募!朝5時開店のベーカリー スタッフ(短期可・週1~)】
「……いいかも。パンの香りとか、癒されそうだし」
「癒されるのは鼻だけで、心と身体は絶対に擦り切れるやつじゃん」
「黙っててシロモフ!!」
──次の朝、早朝4時。
グリスは、ヨレたシャツに旅装の上着を重ねた、
“外出儀装まがい”のいでたちで、まだ眠そうな目をこすりながら、面接会場へと向かっていた──。
(第3話『朝五時のバイト面接、落ちました』へつづく)
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
いや~、グリス君とシロモフの掛け合いが面白いですねぇ~( ^)o(^ )
グリス君が、終始シロモッフ改め、シロモフに振り回されている感じがしますけど、そこは愛嬌ということで許してあげてくださいな♬
でも、こういうアップテンポなキャラクターたちの掛け合いも良いものです
なぁ~(*ノωノ)ホッホッホ♬
あと、スキルを改善した後のグリス君のステータスボードの内容はこちら↓
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◎名前:グリス(偽装中)
▽ 職業:占術師&盗賊
◆ 身分:旅の記録者(※登録なし)
▲ 滞在世界:アフター=ホーム
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※【基本ステータス】
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▶ HP :125 / 125
▶ MP :60 / 60
▶ 力(STR):★★☆☆☆(2)
▶ 耐久(VIT):★★☆☆☆(2)
▶ 速さ(AGI):★★★☆☆(3)
▶ 知性(INT):★★★★☆(4.5)
▶ 幸運(LUK):★★★★★★(6)※MAX値5超え
────────────────────
◎【占術スキル系統】◎
《星読の技法》
スキル名効果説明
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◆ 脂流占Lv.2
脂の流れ、温度、滴り具合から「目の前の選択肢の先」を読み解く。
▶ 小回りの利く短期予知術。
▶ 天ぷら屋の揚げ鍋の前で覚醒。
◆ 燻影占Lv.1
他人の“後悔した未来”を読み取り、現在へとフィードバック。
▶ 対象の行動を逸らす、干渉型予知術。
▶ 精神干渉系スキル。やや消耗大。
◆ 盗命の手Lv.1
相手の“運命の断片”を一時的に盗む禁術。
▶ 発動後、激しい倦怠感&自己の運命値も揺らぐ。
▶ 一部の存在からは“運命災い喰らい”として警戒対象。
◆ 千識眼Lv.2
▶未来予測・感情読解などの“流れ”を視る力。読解には集中と詠唱が必要。
※短時間の断片的未来視が可能。使用後、軽いめまい。
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◆【盗賊スキル系統】◆
《影潜の技法》
スキル名効果説明
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◆ 影抜き《シャドウ・リフト》Lv.1
足音・気配・視線の“隙間”を盗み取り、存在感を希薄化。
▶ 潜入・逃走に特化。ステルス系スキル。
◆ 鍵喰らい《キーヴォラス》Lv.1
錠前やセキュリティの“癖”を“喰らって”解除する擬似魔術。
▶ 「おばあちゃんの知恵」+「盗賊的直感」で成立。
◆ モフ交換Lv.1
シロ=モッフとの秘術連携。
▶ 所持アイテムを“一時的に見えないモフ物質”に変換して隠す。
◆ 幸運強奪Lv.1
▶ 一時的に他者の“運”を引き寄せるスキル。効果時間は短いが、クリティカル率が爆上がり。
ただし、終わると反動で大きな“ツキの落差”が訪れる。
◆ 隠語翻訳Lv.2
▶ 古代語・暗号・刻印文字などの判読能力。※パンとか石碑とかに便利。
◆ 自動記録(※常時型・バレ注意)
▶ 本来の職業に由来。
▶ 視界内の“重要イベント”を自動で記録・保存してしまう。
※無意識に発動するため注意。再生には《記綴筆》が必要。
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■【所持アイテム】■
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・《記綴筆》:特殊インクが込められた多機能記録ペン
・《記綴録》:綴られた記録が蓄積する魔導書
・羊毛99.9%の相棒《シロ=モッフ》:しゃべる。ツッコむ。腹黒い。
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✑【補足メモ】
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※グリスの「名字なし」は身分偽装の一環。
※「フォーチュン・スニッチャー」は複合職。真の職業は秘匿中。
※ステータスは定期的に自動ログが漏れる恐れあり。モフが監視中。
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【現在の目標】
自身に起こる「断罪の未来」の回避。
亡き親友の死を書き換える方法を探す(現時点では不可能とされる)。
ステータスの秘匿・偽装【改編済み】
半年以内に“スキルの実戦運用”と“運命介入耐性”を獲得する。
まずは生活費の確保(現在、異世界パン屋に挑む予定)。
グリス君の今のステータス画面はこんなかんじですね!('ω')ノ
良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!




