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『未来視オークはぬいぐるみ!?』 〜美女たちに癒されながら、悩める運命をブッタ切る!〜  作者: 焼豚の神!
プロローグ(第0章):もふもふの運命、始まりの焼豚顔と神様兄弟との邂逅
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第5話③「最終試練と行ってきます、ブラザー!」

今日もよろしくお願いします!


ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…


今日のお話は、グリス君が己の心の弱さと対峙して克服していくお話になります。


ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!

「“書き手”として、ボクはここに在る」


冷たい石の床。

黒と金の模様が浮かぶ広大な空間。その中心に、グリスはひとり、立ち尽くしていた。


天井はなく、見上げれば果てのない夜空。星々が不自然な軌道で巡りながら、どこか彼を見下ろしているようだった。


「……ここは?」


そう口にした瞬間、ふいに空間が揺らめく。


──神の領域。

そう、ツカサが言った。最終試練の場として彼らが創り出した、“書き手”の可能性を見極めるための最後の檻。


目の前に、二つの扉が現れる。


右は、黄金に光り、微かに郷愁を誘う。

左は、黒鉄のような色合いで、重厚な空気を放っていた。


「……どっちを選ぶか、ってことか」


だが、次の瞬間──


「グリス。選択の前に、“問おう”」


高い空間の上段から、ふたりの青年が現れる。


片や陽光のように明るく、柔らかな笑みを浮かべる筆神ツカサ。

もう一方は、夜を纏うように静かで鋭く、冷静な眼差しを向ける筆神レンジ。


「“書く”とはなんだ?」


ツカサの声は穏やかだが、核心を刺していた。


「……未来を記すこと、かな」


「違う」

即答したのは、レンジだった。


「“書く”とは、責任だ。過去を残し、真実を刻み、そして選ぶこと。己が覚悟を込め、他者の痛みも背負う行為だ」


「……お前はまだ、どこかで逃げている」

「自分の言葉に、まだ命を吹き込んでいない」


グリスはぐっと唇を噛む。

心がざわつく。胸が痛む。


逃げていた──確かに、どこかでそう思っていた。

他人の優しさにすがりながら、“本当の自分”から目を逸らしていた。


「ボクは……ただの子どもだった。

誰かに選ばれたことに舞い上がって、でも……怖かったんだ。

“書く”ことで、誰かが傷つくかもしれないって」


「──なら、書くな」

レンジの声は冷たく突き放す。


「……!」


「だが、お前がそのペンを手放すなら、それもまた“書き手の選択”だ。責める者などいない」


静寂が落ちた。


……だが、次に口を開いたのは、ツカサだった。

彼はゆっくりと空を見上げ、星を指さす。


「でもなグリス……その星空も、最初は真っ白なキャンバスだったんだ」


「え?」


「誰かが“描いた”んだよ。世界の在り方も、時間の流れも、命の理も──全部、誰かが“選んで書いた”。だから、そこに在るんだ」


そして、ツカサはグリスの胸元に触れる。


「お前もまた、その“誰か”になれる存在だ」

「弱くても、未完成でも、“書き手”であることを放棄しない限り、お前はきっと世界を変える」


その言葉に──グリスの胸が、確かに熱くなった。


沈黙のあと、彼は小さく笑った。


「……ねえ、ツカサ兄さん、レンジ兄さん」


「ん?」


「この試練って、“どちらの扉を選ぶか”じゃなくて──」


「“選ぼうとするかどうか”ってこと、でしょ?」


ぴたりと止まっていたペンが、彼の手の中で再び震えた。


グリスはゆっくりと、万年筆を構えた。

白紙の本が、光に包まれて浮かび上がる。


「ボクは書くよ」


「“帰ること”も、“残ること”も……全部、自分の意志で選べるようになるまで」


ページに走る筆跡は、美しい蒼の光を残しながら──


──《未来記録・確定》の文字が浮かぶ。


その瞬間、空間が震えた。星が流れるように空を裂き、上空に輝く巨大な羽根が舞い降りる。


光が収まり、静寂が戻った神域の空間。

白銀の余韻に包まれながら、グリスは静かに立ち尽くしていた。


胸の中には、確かにあった。

“自分の言葉で未来を選び取る”という覚悟。

そして今、その決意に応えるように、ツカサとレンジが歩み寄ってくる。


「……おめでとう、グリス」

ツカサの声は、どこか誇らしく、少し寂しげだった。


「ようやく、“ここ”まで来たな」

レンジもまた、いつになくやさしい目で微笑んでいた。


そして、ツカサは懐から一冊の厚い革表紙の本を取り出す。

背表紙には金の箔押しでこう記されていた。


《Chronicle of Yuzuriha》


「ユズリハ……?」

グリスは文字を読み上げ、目を瞬かせる。


「そう。俺たちの苗字だ」

ツカサがうなずいた。


「ツカサ・ユズリハ、レンジ・ユズリハ。そして、今日から──」

「お前も、“ユズリハグリス”だ」

レンジが続ける。


「俺たちの“義理の弟”として。正式な“記録の兄弟”だ」


驚きに言葉を失うグリス。


「……ボクが……兄弟に……?」


「そうだ。うるさい弟分が増えて、正直オレは困ってる」

「誰がうるさい弟分だ!?」

「ほら、もううるさい」

「レンジ兄さんまで!?」


「あと兄弟になったからって、ツカサ兄さんのボケに全力で付き合う義務とか、ないですからね!?」


「ええ〜!? 契約に書いてなかったっけ?」

「どこの契約書ですかそれ!!」

「“兄弟あるある・第一条”だよ。“ツッコミ役は義務とする”って」

「なにその地味にうまいネーミング!!やめてくださいよ、もう!」


三人の間に笑いが弾けた。

最後のこの瞬間すら、彼ららしく──笑いのある、あたたかなひととき。


だが──その時だった。


空間の端が、淡く波打つ。


七色の光がゆらめき、ゆっくりと空間を裂いていく。

その中心に、グリスがよく知る“虹の扉”が現れた。


「……!」


グリスは一歩、扉の前に歩み出る。


“帰れる”──その直感が確かにあった。


けれど同時に、それが“片道切符”かもしれないことも、グリスにはわかっていた。


二人の兄と過ごした日々。

“記録の兄弟”として認められた喜び。

全てが、この世界に置いていくものになるかもしれない。


それでも──


グリスは万年筆を握りしめ、静かに言った。


「……ボク、この世界で“書くこと”の意味を知ったよ。

過去を記すことは、誰かの痛みと向き合うこと。未来を描くことは、誰かを想うこと──」


「だから、ボク、元の世界で生きてみる。“記録者”として、自分の言葉で、自分の居場所を選ぶんだ」


ツカサとレンジは、じっとグリスを見つめる。


そして──同時に、ニィーッと笑った。


「よく言った! じゃあその覚悟、最後の試練だな!」

「えっ……まだあんの!?」


「この“兄貴ギャグ”を一発聞いてからじゃないと通れません!」

「やだ!もう扉閉まってもいいからやだ!!」


「……ふっ。じゃあ、オレから一言」

レンジが不意に真面目な声で言った。


「グリス──必ず、また会えるさ」

「え……?」


「俺たちは“心で通じている”。

この名で、絆で、記録で──きっと、また繋がる」

ツカサが続ける。


「そう、俺たち“記録の兄弟”は──再会の物語も、自分たちで書くんだからな」


「……兄さんたち……」


思わず、涙が頬を伝う。


でも、その涙はもう、孤独のものじゃない。


「……うん、わかった。絶対また会おうね……!」


そして。


グリスは、大きく息を吸い込み、精一杯の笑顔で振り返った。


「行ってきます、ブラザー!!」


その叫びとともに、虹の扉へと駆け出す。


七色の光が彼を包み込み、扉は音もなく閉じていく。


──残された空間に、静かに風が吹いた。


ツカサは、ぽつりと呟く。


「……また、うるさいのが戻ってくる日が楽しみだな」


レンジは珍しく、ほんの少しだけ笑った。


「ああ──“楪グリス”が、どんな未来を“記す”か、見届けよう」


白銀の空に、朝が近づいていた。


兄弟たちの願いと共に、物語は確かに進んでいく。


                                 (つづく)

どうも、お世話様でございます!


焼豚の神でございます。

今回も読了しに来てくださった皆様ありがとうございます('◇')ゞ!

本日、夜20時10分ごろに、第0章の閑話を投稿します!

その閑話で第0章が最後となります。そしていよいよ第1章の本編へと物語が動き出していきます。

その閑話はツカサとレンジがグリスの事をどう思っていたのかがわかる内容になっています。

また、今後の伏線につながるような話が出るかもしれません(/・ω・)/

お楽しみに(^_-)-☆


感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!

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