第5話①:「“怖い”は、進んでる証拠だから──それでも、前に歩んで行きたい」
今日もよろしくお願いします!
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…
今日のお話は、グリス君が己の心の弱さと対峙して克服していくお話になります。
ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
――夜が明けきる前、深い霧が森を包んでいた。
グリスは、その霧の中をひとり歩いていた。
本とペンを携えて、重い足取りで。
(ボクは、あの未来を変えられるって……本当に、信じていいのかな)
風が、冷たい。
朝露で濡れた草が足元を冷やすたび、心の奥の迷いが顔を出す。
もう何度も心の中で繰り返してきた問い。
でも、その答えはまだ、出ていなかった。
“クロニクル・ベアラー”としての力。
過去を書き記し、未来を変える力。
けれどその力は、万能じゃない。
強く願い、強く信じたときにだけ、微かにページが動く。
そして、グリスの“信じる力”は、まだ足りていなかった。
グリス(モノローグ):「だって……怖いよ」
「もし、あの未来が変わらなかったら……ボクが全部、間違ってたら……」
声が、かすれて出ない。
胸が、重くて、苦しい。
「ボク、また……誰かを失うかもしれないのに、何もできないかもしれないのに……」
そのとき。
風が、ふっと止まった。
そして――
かすかに、何かが聞こえた。
ツカサ(幻聴のように):「進め、グリス」
レンジ(低く、静かな声で):「怖いのは、お前が真剣だからだ」
グリス(振り返って):「……神様……?」
誰もいない。
けれど、その声は確かに聞こえた。
心に、小さな灯が灯る。
「怖い」という感情は、立ち止まっているからこそ湧き上がるものじゃない。
それは、進もうとしている証。
たとえ迷っていても。
たとえ震えていても。
それでも歩み出した先にこそ、“変化”はある。
その夜、グリスは神様兄弟のもとに戻った。
ツカサは何も聞かず、ただいつものようにグリスにおにぎりを差し出した。
レンジは、黙って薪を火にくべた。
グリス(小さく):「ただいま……」
神様兄弟、顔を見合わせて、にやりと笑う。
ツカサ:「よう、帰ってきたな“記録者”」
レンジ:「……いや、“綴る者”か」
その言葉が、グリスの胸にまっすぐ届いた。
(ああ、ボクは今……また一歩、前に進んだんだ)
――そして、その翌日。
グリスの“本”が、初めて自ら震え出した。
まるで、何かに反応するかのように、ページが勝手に開かれていく。
グリス(驚きつつ):「な、何……?これは……」
そこには、見覚えのある景色。
懐かしい町並み。
ボクが、かつて過ごしていた“元の世界”。
【未来予測】
《転位可能地点、出現の兆候アリ──》
それは、帰還の兆しだった。
“運命改筆”の力が動き始めたことで、
グリスが過ごしてきた「異世界」と「元の世界」の境界が揺らぎ始めている。
その知らせは、チャンスなのか。
それとも、別れの序章なのか。
グリスの胸に、再び問いが浮かぶ。
(……もし、ボクがこのまま帰れたとして。
それって、“逃げる”ってことになるのかな……?)
怖い。
でも、知りたい。
この世界に来た意味を。
自分がこの力を手にした理由を。
――そして今度こそ、自分自身の選択で未来を決めたい。
グリス(ペンを見つめながら):「……ボク、やっぱり書くよ。
“帰ること”も、“残ること”も……自分で選べるようになるまで」
そう決めたとき、本が優しく光を放った。
少年の背中に、また少しだけ、光が差し込む。
第5話②:「“帰れるかもしれない”その予感が、ボクの中でざわめきを起こした」
――つづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
今回も読了しに来てくださった皆様ありがとうございます('◇')ゞ!
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