第4話④:「“強くなりたい”って思ったんだ。誰かのために、じゃなくて──自分のために」
今日もよろしくお願いします!
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…
今日のお話は、グリス君が己の心の弱さと対峙して克服していくお話になります。
ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
――霧の森に、朝靄が差し込む。
グリスは一人、湿った草の上に腰を下ろしていた。
“ペン”は握っていない。
“本”も閉じたままだ。
ただ、胸の奥にわずかに灯った想いだけが、
かすかに熱を帯びていた。
グリス:
「……強くなりたい」
「誰かのために、って前は思ってた。……でも、違った」
「それだけじゃ、ボク、また壊れそうで──」
一枚の落ち葉が、風に揺れて足元に舞い落ちる。
(自分が信じられないまま、誰かの未来なんて書けない)
思い返すのは、ずっと誰かの顔色を見ていた日々。
期待されるのが怖くて、何かを始める前に諦めてきたこと。
ツカサの言葉が、ふとよぎった。
『書きたい時に、書きたいことを書けばいい。けどな──
自分の“感じたこと”に、ちゃんと責任持てよ』
責任。
それは、たぶん“自分で選ぶこと”。
誰かに委ねるんじゃなく、自分の足で立って決めるってことだ。
グリスは、静かに立ち上がった。
風が頬を撫でる。
木々の間から差す光が、やわらかく全身を包み込んだ。
グリス(ボヤキ気味に):
「……てか、訓練サボってるって気づいたら、
レンジにガチ説教されるやつじゃんコレ……」
少しだけ笑った。
その時だった。
森の奥から、ぱちん、と木の枝が折れる音。
「……誰?」
振り返ったグリスの目に映ったのは、
焚き火の前で佇むツカサだった。
ツカサ(ぼんやり火を見ながら):
「たまに来るんだよ。こういうとこで、頭の中を整理してさ」
グリス(少し照れながら):
「……そっか。ボクも……そんな感じ」
ツカサ(ふっと笑って):
「お前、ちょっと顔変わったな」
グリス:「え、顔に何かついてる!? 虫!?」
ツカサ:「そうじゃねえよ。目だよ、目」
その言葉に、グリスは少し黙る。
ツカサ(静かに):
「無理に人のためにって思わなくていい。
でも、お前が自分のために“強くなりたい”って思ったんなら──
それは立派な、はじまりだ」
グリス(心の声):
(強さって、戦うことじゃない。
誰かを守ることだけでもない。
……自分の弱さを、ちゃんと見つめること)
(それが、きっと“記録者”としての最初の強さ)
その夜。
“本”が、ひとりでに開かれた。
光の粒が浮かび、文字がゆっくりと浮かび上がる。
《ひとりで泣いた夜。自分で自分を抱きしめて、泣き止んだ。
そのとき初めて、自分が“生きてていい”って思えた──》
“本”が淡く光った。
ページが、あたたかく揺れていた。
グリス(そっと微笑んで):
「ありがとう、ボク……」
小さなひとつの言葉が、
ひとりの少年の心に、確かな“芯”をつくっていく。
過去の傷を記録し、痛みを受け入れた先に。
ようやく少年は、自分の“始まり”に立った。
まだ不安は残る。
それでも、歩き始めた道の上に、
少年は、もう一度立っていた。
そして、物語が動き出す。
第5話①:「“怖い”は、進んでる証拠だから──それでも、前に歩んで行きたい」
――つづく
どうも、お世話様はでございます!
焼豚の神でございます。
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