第4話③:「“やっぱ無理かも”って言いかけたとき、声が聞こえた気がした」
今日もよろしくお願いします!
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…
今日のお話は、グリス君が己の心の弱さと対峙して克服していくお話になります。
ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
――小さな町へと続く獣道を、グリスは一人歩いていた。
足元の草を踏みしめる音。
遠くで小鳥が鳴く声。
だが、グリスの耳には、それらがどこか遠くの出来事のように感じられていた。
(……あれから、もう三日か)
神様兄弟のもとを離れ、街へ向かっていたグリスだったが、
本に記された“未来の崩壊”を思い出すたび、足がすくんでいた。
彼は、まだ迷っていた。
本当に、未来は変えられるのか?
自分なんかに、そんなことができるのか――と。
立ち止まり、空を見上げる。
雲の隙間から差し込む光が、眩しかった。
グリス:
「……ボク、やっぱり向いてないかも」
「“クロニクル・ベアラー”って肩書きだけじゃ、どうにもならないよ……」
胸元で、静かに揺れる“記録の書”。
その表紙をなぞる指先が、わずかに震えていた。
(やっぱ無理なんじゃないか。
本当に未来が変わる保証なんて、どこにもない)
俯いたその時だった。
ふわり。
風が吹いた。
どこかから、誰かの“声”が聞こえた気がした。
『きみは、遠くに行ける人だと思うんだよね』
それは、たしかにあの時、
リーアが自分にかけてくれた言葉。
だが。
『それでも、こわいときは、無理しないで。少し立ち止まってもいいから』
その言葉は……聞いたことがなかった。
思わず顔を上げる。
が、まわりに誰の姿もない。
でも、確かに心の奥で何かが“ふれた”。
グリス(心の声):
(……幻聴? それとも、本の力……?)
(いや……でも、なんだろう。涙が出そうだ)
その瞬間、記録の書が一瞬だけ光を帯びた。
ぱら、とページがめくれ――そこに現れたのは、
誰かの名もなき“優しさ”を記した、淡い記憶だった。
《かつて、誰かが、誰かを想って涙を流した記録》
未来だけでなく、過去もまた、書の中に宿っている。
それは時に、記録者に力を貸し、道を照らす“灯火”となる。
グリスは、そっと目を閉じて深く息を吐いた。
「……そうか。こわくてもいいんだ」
「それでも、前に進みたいって思えたなら──」
記録の書に、そっと言葉を記す。
《ボクは、弱い。でも、それでも“変えたい”と思った。
この思いを、どうか力に変えてください》
ほんの少し。
風があたたかくなった気がした。
そして、記録の書が小さく光り――
【占術エネルギー:74% → 78%】
【モフ化進行度:5% → 4%】
小さな決意が、記録者を一歩進ませた。
たとえ誰にも見えなくとも。
たとえ、その一歩が、とても小さなものだったとしても。
それは確かに、未来を変えるための――“始まりの一歩”だった。
第4話④:「“強くなりたい”って思ったんだ。誰かのために、じゃなくて──自分のために」
――つづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
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