第19話 「虚無の継承者 ― Heir of the Void ―」
おはようございます!
よろしくお願いします!('◇')ゞ
書架の光が消えた後、塔の中は深い静寂に包まれていた。
しかし、その静寂の奥で、微かな振動が生まれる。
――それは光でも闇でもない、存在そのものの痕跡。
無数の書物の間を、ひとつの影が滑るように動いた。
その形は漆黒で、輪郭は定まらず、まるで霧のように揺らめく。
光に触れれば反射し、闇に触れれば溶ける――それ自体が虚無の象徴のようだった。
――“虚無の継承者”が、目を覚ました。
塔の最上層から零れ落ちた“もう一つの存在”。
それは“創造主の最後の書”に封じられていた、忘却と否定の意志そのもの。
人が神を綴るために紡いだ光と秩序に対する、影の存在。
目覚めた瞬間、周囲の書物が微かに震える。
書架全体が、まるで息を呑んだかのように止まった。
その一方、地上ではグリスたちが書架から帰還していた。
手元に残された“最後の書”の微かな余香を感じ、リーアは眉を寄せる。
「……なんだか、違和感があるわ」
アルマも頷く。
「光だけでは説明できない、影の気配……」
相棒は剣を握り、険しい目を空に向けた。
「書は開いた。だが、何かが零れ落ちた……それは俺たちの知らない“意志”だ」
風がざわめき、遠くで微かに、人の声のような囁きが聞こえた。
――「私を、継ぐ者よ……」
誰の声でもなく、しかし確かに届く命令のような響き。
それは冷たく、しかし鋭く、人の心の隙間に滑り込む。
虚無の継承者は、塔の外に存在を投影した。
それは人間の形を模しているが、皮膚は漆黒に塗りつぶされ、瞳は深淵を映す鏡のようだ。
触れる者の心に恐怖と空虚を同時に呼び起こす――まさに“神の影”を宿す者。
継承者は静かに、だが確実に歩みを始める。
世界を見渡し、秩序の中で綻ぶ隙間を探す。
それは人間が神を描く時代に、影として入り込む者――
――人が綴る神話の裏側で、虚無を育む影。
森の奥、廃墟の街、再生する都市の隙間。
どこにでも現れ、世界の秩序を“書かれざる章”として塗り替えていく。
グリスたちはその兆候を感じていた。
相棒は剣を握りしめ、冷静に指示を出す。
「光と秩序だけで、この影は止められない。だが、放置もできない。奴は人の意思、そして人の神話に寄生して動く。……俺たちの手で、対峙するしかない」
リーアは深呼吸し、微かに光の魔法を手のひらに宿す。
「……わたしたちは、再び始めなければならないのね。光を紡ぎ、影を綴る前に」
アルマも頷いた。
「影を知る者だけが、光を正しく描ける……」
そして、虚無の継承者は、世界の果てで静かにその姿を現す。
まだ名前はない。だが、その瞳は確かに、次の物語を待っていた。
遠くの空に、一筋の光が差し込む。
だがその光の下、黒き影は微笑む。
「次の章は……誰が綴るのか」
――人が神を描く時代の、影の物語が始まる。
第20話 「虚無の継承者との遭遇」へつづく!
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ
物語が現在、狡猾と狡猾が交差しています!
今後も加速度的に物語が進行していきます!
それでは、引き続き物語をお楽しみください!('ω')ノ
これもひとえに読者の皆様のおかげです!
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!
また、良かったら筆者に別作品である『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』通称:【ナナクラ】も是非、この機会に知って頂けますと幸いです!
それでは、また次話でお会いしましょう~~~(^^♪




