第4話①:「弱さを抱えてるのは、ボクだけじゃない──だから、」
今日もよろしくお願いします!
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…
今日のお話は、グリス君が己の心の弱さと対峙して克服していくお話になります。
ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
――その朝、空はやけに高く見えた。
けれど、グリスの心は晴れてはいなかった。
山に向かって歩きながらも、その足取りは重たく、何度も後ろを振り返ってしまう。
(……ボクなんかが、変えられるのか? 本当に、あの未来を……)
リーアの言葉が胸をよぎるたび、鼓動が痛む。
だがその優しさすら、今はプレッシャーにすら思えてしまう自分が、嫌だった。
ページを綴る“責任”。
誰かの命を救う“選択”。
……それは、とても重たくて。
神様兄弟からもらった短い休息を抱え、グリスは森を抜け、山へと続く小道を歩いていた。
その途中、小さな祠のようなものが目に留まった。
苔むした石の前で足を止め、グリスはぼそりと呟いた。
「ねぇ、神様って、本当にいるの? ……いや、いるか。目の前に兄弟の形で現れたし」
でも、と続けるように口が動いた。
「……ねえ、神様。どうしてボクを選んだの?」
問いかけても、返事はない。
それでも、その沈黙の中でこそ、グリスは思い出していた。
――過去の自分。
まだこの異世界に来る前、地味で、声も小さくて、誰にも気づかれなかった日々。
誰かに手を差し伸べるどころか、助けてもらうことにすら怯えていた。
村や街にも居場所がないと思っていたみじめな自分。
それが、グリスだった。
(……変わってないじゃん、ボク)
ため息がこぼれる。
(今だって、“誰かを救いたい”とか言いながら、自分が傷つきたくないだけなんだ)
そのとき、風がざわりと草を揺らした。
どこか遠くで、小さな子どもの笑い声が聞こえたような気がした。
幻聴かもしれない。
けれど、ふと記憶が揺らいだ。
(……前にも、こんな風に感じたことがあった)
誰かを“見て見ぬふり”をしてしまった、あの瞬間。
震える手で、“本”を開いた。
すると――また、新たなページが自動的に開かれた。
そこには、こう書かれていた。
《過去の記録に向き合うことで、クロニクル・ベアラーの“根幹”が整います》
《恐れるな。見つめることからしか、書き換えは始まらない》
グリス:「……ボクの弱さも、書かなきゃダメってこと?」
本は何も言わない。だが、ページが光った。
そして、自然とペンが動き出した。
《あの日、助けられなかった。声をかける勇気がなかった》
《見ないフリをした。怖くて。傷つきたくなかった》
《でも、本当は、助けたかった。助けたかったんだ》
涙がぽろりと落ちて、インクに滲んだ。
けれどページは、優しくそれを受け止めたように、ふわりと淡い光を放った。
――心の奥に押し込めた“弱さ”。
それを見つめることができたとき、人はほんの少しだけ前に進める。
誰かのためじゃない。
まずは、自分のために書く。
その一歩が、やがて“誰かのために書ける自分”へと変わっていくのだ。
神様兄弟の元に戻ったとき、ツカサはぽつりと呟いた。
ツカサ:「目がちょっとだけ変わったな、グリス」
レンジも、無言で頷いた。
グリスは、照れくさそうに笑った。
「……なんか、ちょっとだけ自分のこと、許せた気がする」
そしてその手には、静かに光を灯す“記録の書”。
未来は、まだ何も変わっていない。
けれど、心の奥で確かに芽生えた。
“記録を綴る者”としての、一歩目が。
第4話②:「“自分を信じる”って、こんなにも怖くて、あったかいんだ」
――つづく
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
今回も読了しに来てくださった皆様ありがとうございます('◇')ゞ!
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