第33話「氷花の記憶、紅蓮の誓い」
おはようございます!
よろしくお願いします!('◇')ゞ
――白銀の嵐が、戦場を凍てつかせていた。
氷の刃が幾重にも舞い、吹き荒ぶその中心に立つのは、氷華のごとき美貌をもつ少女――リーア・ヴァレンスタン。
その瞳は冷たく、だがどこか哀しげだった。
「……あなたを、止めなくてはならないの」
声は震えていた。けれど、剣を構える手には一片の迷いもない。
ヴァルツェル卿が施した“感情抑制”の術式が、彼女の心を締めつけていた。
一方、対峙するグリスは荒い息を吐きながら、その姿に見覚えのある既視感を覚えていた。
氷の剣、舞う髪、そして――かつて聞いた声。
「……お前、まさか……リーア……なのか?」
一瞬、リーアの動きが止まった。
吹雪の音が遠のく。
脳裏の奥で、幼い日の笑い声が蘇る。――陽だまりの下で笑い合う二人。
パン屋の前で、焼きたてのクロワッサンを分け合った記憶。
*(……グリス? 私、なにを……)*
リーアの手が微かに震える。だがその瞬間、頭の奥に鋭い痛みが走る。
――ヴァルツェル卿の術式が、記憶の芽を無理やり潰そうとしていた。
「くっ……邪魔を、しないで……っ!」
冷気が爆ぜ、氷柱が一斉にグリスを襲う。
グリスは咄嗟に剣を振るい、閃光のような炎を纏わせて氷を砕いた。
その炎が雪を溶かし、赤と白が交錯する。
「リーアッ!! 俺だ、グリスだ! 思い出せよ!!」
叫びと同時に、グリスの胸の奥が灼ける。
“初めての反逆”――魂の奥底に眠る炎が、黒い鎖を焼き切るように燃え上がった。
◆ ◆ ◆
――その頃、帝都・元老院会議室。
燭台の灯が、重厚な石壁に揺れている。
長机の前に並ぶ老人たちの瞳は、冷たい硝子のようだ。
「……ヴァルツェル卿の報告は、実に興味深い。
“感情操作”がここまで進展するとはな」
「だが、制御率はまだ不安定だ。
対象が“記憶の因子”を持つ場合、術式が破綻する恐れがある。」
そのやりとりを静かに聞いていたのは、一人の仮面の男。
闇に沈むフードの奥から、わずかな笑みが覗く。
「問題ありません。
あの二人――いや、“彼ら”が再び出会うのは、我々の計画の一部です。
因果とは、美しく再現される輪舞なのですから。」
男の声には、微かな狂気と陶酔が混じっていた。
誰も知らない。
その仮面の下の顔こそ、帝国創成期に消えた“最初の賢者”であり、今なお人の理を嘲る存在――《輪廻の観測者》だった。
――そして、研究塔の最上階。
ヴァルツェル卿は淡い光を放つ水晶球を前に、満足げに笑った。
傍らで記録を取るマッドサイエンティスト、リッケルが狂喜の声をあげる。
「成功だ! 対象A、記憶干渉を受けてもなお感情反応を保持!
そして対象B――“炎の反逆因子”を発現! これぞ、我らが“リスタート計画”の証明ですぞ!」
「フム、どうやら運命とは因果なもののようだ。
リスタートさせても、またこうして巡り合うことになろうとは。」
ヴァルツェル卿は、水晶に映る二人の姿――戦うグリスとリーアを見つめながら、低く笑った。
再び戦場へ。
グリスの炎が、リーアの氷を溶かし始める。
二人の間に流れる風が、記憶の断片を呼び覚ます。
「……グリス。わたし……あなたを……」
リーアの瞳に、一筋の涙が伝った。
それが地に落ちる瞬間、グリスはその手を掴み、静かに言った。
「もう二度と、誰にも操らせない。
お前の涙も、笑顔も……俺が取り戻す。」
炎が、雪を焦がし、空を赤く染めた。
その輝きは、かつて二人が誓い合った“未来”の記憶と同じ色をしていた。
リーアの唇が、微かに動く。
「……あの時、約束したね。どんな世界でも……また会おうって。」
グリスは頷き、剣を構える。背後に広がる紅蓮の焔が、彼の決意を象徴するように揺らめいた。
「この世界が何度リセットされようと――俺はお前を、そして俺たちの絆を、取り戻す。」
その瞬間、二人の間に溢れ出した光が、凍てついた戦場を包み込む。氷が砕け、炎が昇り、空に描かれた紅と白の花がひとつに溶け合う。
遠くでヴァルツェル卿が見ていた水晶球が、突然、ひび割れた。
「なに……? 感情値の異常上昇!? ば、馬鹿な……制御を超えておる!」
リッケルが悲鳴を上げる。
ヴァルツェル卿は静かに目を細めた。
「……やはり、“因果”は人の手では完全に操れぬか。フム……実に興味深い。」
そして、水晶が砕け散る。そこに映るはずだった映像が、光の粒となって消えた。
――運命の輪は、再び回り始める。
炎と氷が交わり、紅蓮の誓いが空へと昇った。
その瞬間、グリスの記憶の奥底で、封印されていた言葉が静かに蘇る。
*「約束だよ、グリス。何度生まれ変わっても、あなたを見つける」*
リーアの声が、暖かく胸に響いた。
そして――物語は、次なる“反逆の夜明け”へと進み出す。
第34話 「崩壊の黎明 ― 反逆の余波 ―」へつづく!
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ
物語が現在、狡猾と狡猾が交差しています!
今後も加速度的に物語が進行していきます!
それでは、引き続き物語をお楽しみください!('ω')ノ
これもひとえに読者の皆様のおかげです!
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!
また、良かったら筆者に別作品である『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』通称:【ナナクラ】も是非、この機会に知って頂けますと幸いです!
それでは、また次話でお会いしましょう~~~(^^♪




