第32話「氷刃の幼馴染(リーア・ヴァレンスタン)」
おはようございます!
よろしくお願いします!('◇')ゞ
戦場の静寂が、張り詰めた糸のように空気を縛っていた。瓦礫の散らばる旧市街の一角。夜霧が地面を這い、焼け焦げた匂いが血の匂いと混じる。そんな中で、グリスはただ一人、氷の剣を構える少女と対峙していた。
「……リーア。」
その名を呼んだ瞬間、胸の奥にかすかな痛みが走る。忘れたはずの声、笑い、夏の日の記憶――それらが、断片的に脳裏をかすめていく。
目の前の少女は、氷の瞳でグリスを射抜いていた。蒼白の息を吐きながら、彼女は無感情に言う。
「命令は一つ。貴方の排除。……それが、私の役割よ。」
その声には、かつての温もりも、幼馴染としての面影もない。まるで、魂を氷に封じ込められたかのようだった。
グリスは、無意識に拳を握りしめた。胸の奥で、何かが軋む。
「違う……お前は、そんな目をする奴じゃなかった。」
言葉が届くはずもない。それでも、彼は前へ踏み出す。
瞬間、空気が凍り付いた。リーアの周囲に展開された氷結陣が唸りを上げ、数十の氷刃が花弁のように舞い上がる。次の瞬間、それらが一斉に放たれた――。
金属の悲鳴が響く。グリスは両腕で受け、霧散する魔力の破片が頬を掠めた。その中に、微かな声が響いた。
(……リス、にい……)
懐かしい声。記憶の奥底で、凍り付いていた感情が軋みながら溶け出す。かつて、幼い彼女が呼んだその名を。
「――リーアッ!!」
叫びとともに、グリスの魔力が爆ぜた。黒と紅の奔流が腕を包み、抑圧されていた“何か”が解き放たれる。瞳の奥で、紅蓮が灯った。
その瞬間、遠くの観測塔からヴァルツェル卿が冷ややかに笑った。
「やはり……感情刺激による覚醒反応。興味深い。記憶と感情を媒介とした“ユズリハ・【楪】”かッ!」
彼は装置の前で、記録水晶に手をかざす。円環に刻まれた runic code が淡く光り、彼の声が漏れた。
「悲哀、執着、そして“絆”――それらは最も制御困難な魔力素だ。だが……同時に、最も美しい。」
ヴァルツェルの背後には、無数の水槽。その中には“実験体”と化した戦士たちが眠っていた。彼はゆっくりと目を細める。
「感情とは、力そのもの。だからこそ、壊してみたくなる。」
その冷酷な声が響く頃、戦場では炎と氷が激突していた。
リーアの氷刃が空を裂き、グリスの紅炎が地を焦がす。互いの技がぶつかり合う度、かつての笑顔が脳裏を掠める。過去と現在、記憶と命令、その狭間でリーアの瞳がわずかに揺れた。
グリスは、見逃さなかった。その微かな震えを。
「リーア……思い出せ! 俺たちは、あの日……」
「黙って……! それ以上、言わないで!」
叫びとともに、氷の槍が胸元を貫こうと迫る。だがその瞬間、グリスの紅の腕が軌跡を描いた。轟音と共に氷が砕け散り、炎の奔流が夜を照らす。
そして――彼の右腕から紅い紋章が浮かび上がる。それは、“反逆”の刻印。
「……もう、止められねぇ。」
グリスの声は低く、しかし確かに震えていた。炎の奥に、悲しみと怒りが共存する。彼の中で、眠っていた何かが完全に覚醒する。
ユズリハ――“己を縛る枷すら燃やす、禁断の魔力”。
その夜、戦場を紅と蒼の光が二分した。かつて手を取り合った幼馴染は、運命に引き裂かれながらも、確かに互いの記憶を呼び覚ましつつあった。
第33話「氷花の記憶、紅蓮の誓い」へつづく!
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ
物語が現在、狡猾と狡猾が交差しています!
今後も加速度的に物語が進行していきます!
それでは、引き続き物語をお楽しみください!('ω')ノ
これもひとえに読者の皆様のおかげです!
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!
また、良かったら筆者に別作品である『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』通称:【ナナクラ】も是非、この機会に知って頂けますと幸いです!
それでは、また次話でお会いしましょう~~~(^^♪




