第30話「夜明けの残響 ― 因果の輪廻(カルマ・リスタート) ―」
おはようございます!
よろしくお願いします!('◇')ゞ
帝都、黎明。
濃紺の空を背に、巨大な円形議場――元老院の尖塔が沈黙を保っていた。
無数の蝋燭が揺れ、光が円卓の上の老獪な男の顔を照らす。
「……諸君。時は来た」
低く、しかし確信に満ちた声が響く。
ヴァルツェル卿。帝国を陰から動かす《元老院》最古参の議員。
その冷徹な眼差しは、もはや人間のそれではない。
「《蒼月の系譜》は再び動き出した。
グリス・ユズリハ──“彼”がリスタートしたことを確認済みだ」
その言葉に、議場がざわめく。
黒衣の報告官たちがざわつき、魔法端末の記録が青白く光った。
「なに……!? あの男、記憶を消したはずではなかったのか!」
「観測値が一致……いや、これは……」
円卓の奥から、ひときわ静かな声が響く。
仮面を被った報告者が一歩前へ出た。
「報告します。対象、再び“始まりの地”に出現。
魔力波形、旧データとの一致率──九十九・八パーセント」
しばし沈黙。
その静寂を破るように、ヴァルツェル卿がゆっくりと微笑んだ。
「フム……。どうやら運命とは、実に因果なもののようだ。
リスタートさせても、またこうして巡り合うことになろうとはな。」
その声は、薄ら笑いではなく、まるで“確信”に満ちていた。
誰よりも、未来を読んでいる者の声だった。
同刻。帝都郊外、地底研究塔。
奇怪な音が響く。
液体の中で泡立つ魔結晶、脈打つ眼球、歪んだ魔導管。
そこに、一人の狂気がいた。
「ほほぉぉぉぉっ! 素晴らしいッ!!!」
白衣の男――マッドサイエンティスト・ロドレク博士が、狂ったように笑っていた。
「つまり、“彼”はまた地上に戻ったというのだな! しかも、記憶を微かに残したまま!」
その背後、仮面の報告官が淡々と応じる。
「……博士、あくまで観測上の推測だ。だが、我々の予測を超えているのは確かだ。」
「ククク……! だからこそ、実験の価値があるのだよ!
“記憶を持つリスタート個体”が、どこまで世界に干渉するか――見ものだぁ!!」
仮面の男がため息をつく。
「……博士、ヴァルツェル卿の命は《クロニクル・コード》の奪取だ。遊びではない」
「わかっておるとも! だが……彼の“相棒”がな。あの白いモフモフ……“シロ=モッフ”。あれは実に厄介だ。記録上、存在してはいけない存在だ。まるで“神話級”だぞ……!」
一方その頃――
深い森を抜け、グリスは荒い息を吐いていた。
(……ちくしょう、まだ胸が痛ぇ……)
墜落の衝撃で全身が軋んでいたが、なんとか立ち上がる。
「……あれ? 俺……生きてる?」
思わずつぶやく。
鳥の鳴き声、風の匂い、そして、妙に懐かしい木立の景色。
(リスタート……? いや、俺は……)
記憶は断片的だった。
戦い、炎、そして誰かの声。
そのとき――
「グリスうううぅぅぅ!!」
もふっ、と何かが飛びついた。
「うわっ!? モッフ!? おまっ、早くない!? 俺の葛藤タイム返せぇぇぇ!!」
「だってぇ〜、置いてかれたら悲しいモッフよぉ〜! “再会の感動”とか要る? 要らんよね!?」
「要るわ!! ちゃんと演出させろよ!!」
「じゃあ泣く? 今泣く? ほら、泣けるBGM流れてるモッフ〜」
「脳内再生すんな!!」
森に、二人(と一匹)のツッコミが響いた。
だがその軽口の裏で、グリスの目は真剣だった。
(……みんな、生きてるよな? リーア、セフィーナ……。俺は必ず、もう一度会いに行く)
そのとき、森の奥で音がした。
靴音。重く、ゆっくりとした足取り。
空気が張り詰める。
黒衣の男が、木々の間から姿を現す。
仮面の奥から、冷たい視線がグリスを射抜いた。
「運命は、何度でも試される。
貴様が記憶を失おうと、我らは再び“観測”する。」
その声に、グリスの背筋が凍る。
「お前……あの時の……!」
男はゆっくりと剣を抜いた。炎のような魔力が迸る。
「フム……やはり。貴様は“記憶を超えて”やって来たか。
ならば、運命の修正を試みるとしよう。」
――戦いの火蓋が、再び切られた。
だが、その戦いの最中、仮面の男が漏らした言葉がすべてを変えた。
「……お前たちの“リスタート”は、ヴァルツェル卿の掌の上だ」
その名を聞いた瞬間、グリスの中で何かが弾けた。
「ヴァルツェル……だと?」
そして仮面が割れる。
現れた顔は――かつてパン屋で見かけた、あの青年。
「……だから言っただろ? パンの焼き加減は、人生と同じだって」
「なっ……!? お前、あの時の……!」
微笑む青年の瞳の奥に、帝国の闇が宿っていた。
運命はまた、グリスを飲み込もうとしていた。
第31話「反撃の咆哮」へつづく!
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ
物語が現在、狡猾と狡猾が交差しています!
今後も加速度的に物語が進行していきます!
それでは、引き続き物語をお楽しみください!('ω')ノ
これもひとえに読者の皆様のおかげです!
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!
また、良かったら筆者に別作品である『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』通称:【ナナクラ】も是非、この機会に知って頂けますと幸いです!
それでは、また次話でお会いしましょう~~~(^^♪




