第53話◆「戦闘の余韻、揺らぐ心」◆
おはようございます!
今日もよろしくお願いします!('◇')ゞ
戦いの終わりを告げる静寂が、森の奥に広がっていた。
先ほどまで荒れ狂っていた黒い霧は跡形もなく晴れ、梢の隙間から白銀の月がのぞいている。
その月光は淡く戦場を照らし、血の匂いと焦げた土の残滓を、まるで夢の名残のように浮かび上がらせていた。
倒れ伏す魔獣たちの亡骸の傍らに、グリスは腰を下ろしていた。
肩は大きく上下し、吐く息は白く、まるで凍える夜気に心臓を晒しているかのようだった。
彼の手には大剣ではなく、黒革の魔導書と赤く光を帯びるペン。
そのペン先からは、つい先ほどまで戦いのために綴られた「物語の文字」が、煙のように立ち上り、夜空へと融けていく。
まるで物語そのものが、月の光に吸い込まれて消えていくように――。
「……はぁ、はぁ……書きすぎたな、これ」
掠れた声で呟き、額を手で覆う。
指先に触れる汗は熱を帯びていたが、それ以上に胸の奥に渦巻く違和感が、彼を落ち着かせなかった。
戦いの最中、彼は普段ならば慎重に調整できるはずの「モフ度」を暴走させてしまった。
毛並みは膨れ上がり、ただ愛らしい存在を超えて、異形の威圧を纏うほどに。
仲間を守るために力を解放した――それは揺るぎない事実。だが、心の奥で別の声が囁く。
(……あんな姿を見せて、みんな……怖がってないだろうか?)
モフ度は癒しの力であり、彼の本質そのもの。
だが一歩間違えば、癒しではなく「怪物」として映るかもしれない。
その想像に、胸を締めつけられる。
すぐ傍らで、セフィーナが膝をつき、両手を胸に当てていた。
彼女の長いまつ毛が影を落とし、瞳は宙をさまよっている。
彼女が見つめているのは、戦闘の最中に垣間見た未来――だが、その残像は曖昧だった。
「……どうして……」
小さな吐息のように声が零れる。
「これまでなら、もっとはっきり見えたのに。あの瞬間……未来が、揺れて……」
セフィーナの声は震えていた。
「グリスさんを中心に、いくつもの道筋が絡み合って……どれが正しい未来か、分からなかった……」
聖女としての強さではなく、一人の少女としての不安。
未来を見失うということは、未来を導く者としての存在意義を失うことと同義だった。
その恐怖が、彼女の指先を小さく震わせていた。
一方で、リーアは少し離れた場所で剣を拭っていた。
布に付着する血を淡く照らす月光。彼女の表情は凛としていて――しかし、どこか柔らかさを帯びていた。
(……やっぱり、あなたはただの書き手なんかじゃない)
瞳に浮かんでいたのは、戦いの中で仲間を守ろうと必死に物語を綴ったグリスの姿。
モフ度に呑まれかけながらも、最後には己を取り戻して皆を救った姿。
それは力の暴走などではなく――仲間を想う心の強さに他ならなかった。
「……グリス」
リーアは小さく名を呼び、唇を結ぶ。
心に芽生えた感情はまだ言葉にならない。
けれど確かに、それは彼女の剣を強く支える「灯」となっていた。
ふと、その視線に気づいたセフィーナがちらりと顔を上げる。
ふたりの間に流れる空気を感じ取り、思わず小声で――。
「……大胆です~。」
そうつぶやいた。
戦いの疲労が支配する中で、そんなやり取りこそが唯一の安らぎだった。
――仲間同士が笑い合う時間。
それは何よりも尊く、かけがえのないもの。
だが、その裏側で静かに忍び寄る影に、彼らはまだ気づいていなかった。
木々の隙間。
誰も気づかぬ暗闇の奥から、一対の視線が彼らを射抜いていた。
赤く滲む光が、じわりと夜気を染めていく。
まるで、次なる物語の幕が、音もなく上がるのを待っているかのように――。
第54話「森の夜、ほのぼのドタバタ」へつづく!
どうも、お世話様でございます!
焼豚の神でございます。
最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ
物語が現在、狡猾と狡猾が交差しています!
今後も加速度的に物語が進行していきます!
それでは、引き続き物語をお楽しみください!('ω')ノ
また、次話でなんと!!
100話達成します!!!!
これもひとえに読者の皆様のおかげです!
次話から少々特別なエピソードを投稿予定です!!
お楽しみに♪('ω')ノ
◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆
グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」
→ 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。
→ 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。
モフ度
- 0~19%:平常
- 20~29%:末端ふわ化
- 30~49%:耳/尻尾ふわ化
- 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)
- 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)
- 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”
良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!
また、良かったら筆者に別作品である『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』通称:【ナナクラ】も是非、この機会に知って頂けますと幸いです!
それでは、また次話でお会いしましょう~~~(^^♪




