第2話④「“記録者”って言われても…ボク、まだ日記1日坊主なんだけど!?」
今日もよろしくお願いします!
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…
ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
――朝が来た。
まだ陽の差さない薄暗い森の中、焚き火の残り火がパチリと音を立てた。
グリスは、寝袋から顔だけ出しながら、ぼんやりと空を見上げていた。
「……結局、昨日も眠れなかった。
っていうか、眠れるわけないだろ。言葉に力? 過去の浄化? 世界の歪み?
そんなの聞かされたら、どこのファンタジー小説だよって話だし……」
体は筋肉痛でバキバキ。
でも、それ以上に頭と心が、ざわついていた。
――神様兄弟は、もう起きていた。
ツカサは木に寄りかかってあくびをし、レンジは湯を沸かしている。
いつものように淡々としているその姿に、少しだけ安心する。
「おい、グリス。飯食ったら、今日は“実地訓練”な」
ツカサの声に、グリスの肩がぴくりと跳ねた。
「いやいやいや! 昨日あれだけボコボコにされたボクに、追い打ちとか正気!?」
ツカサ「言葉のチカラが出せるようになったなら、その“言葉”が、どこまで届くか知る必要があるだろ」
レンジ(静かに)「今日から“記録者”としての第一歩だぞ!気を引き締めて行こうぜ兄弟(^_-)-☆」
グリス「え~いつの間にか弟認定されてるし。まあ、嫌じゃないけどさ。あと、“記録者”って言われても……ボク、日記だって1日で飽きるタイプなんだけど……」
――そして始まった、“記録者”としての最初の訓練。
森の奥、誰も近づかないという古い祠の前に案内される。
その祠には、長い年月忘れられた“記録”が封じられていた。
それは、かつての記録者が書き残した、誰にも語られることのなかった過去の感情――
ツカサ「中に入って、“声”を聞け」
レンジ「そして、自分の“ことば”でそれを受け止め、記せ」
グリス:
「うん。(内心)【なにそれ、スピリチュアルすぎる……でも、断れる空気じゃないし……】」
祠の中は、驚くほど静かだった。
空気が重く、光もほとんど入らない。
グリスは一人、ノートとペンを手に、そっと祠の中央に座った。
すると、耳元で、誰かのすすり泣く声が聞こえた。
「……どうして、ボクだけ……」
「誰も、気づいてくれない……」
「さみしいよ……」
それは、まるで幼い子どものような、けれど確かな“悲しみ”だった。
グリスの胸が、ぎゅうっと締め付けられる。
「これって……ボク自身の記憶? それとも、誰かの想い?
いや、そんなこと、どうでもよくなってきた。
とにかく……書かなくちゃ」
震える手で、ペンを走らせる。
《さびしいって、言えなかった。言っちゃいけない気がしてた。》
《誰かが傷つくのが、怖かった。》
《でも本当は、ただ、わかってほしかっただけだった。》
――その瞬間、祠の中にふわりと風が吹いた。
壁に刻まれていた古い言葉が、光となって溶けていく。
それと同時に、先ほどのすすり泣きが、ふっと静かになった。
祠の奥に置かれていた石版がひとつ、静かに砕け、光の粒が空へと昇っていく。
過去に刻まれた“誰かの叫び”が、グリスの言葉で癒され、昇華された。
それは、記録者の本当の意味を知る最初の一歩だった。
祠を出たグリスは、ぐったりと座り込んだ。
「……しんど……これは、メンタルにくるやつ……」
でも、どこか不思議な感覚だった。
(自分の中にあった言葉が、誰かを救うことにつながるかもしれない)
(そんなの、信じられないくらい、すごいことじゃん)
そこへ、レンジが無言で水筒を差し出してくる。
ツカサは木の上から、くしゃっと笑って言った。
「……どうやら、ちゃんと“記録者”の道、歩き出したみたいだな」
「……日記1日坊主のボクが、“誰かの想いを記録する”ことになるなんて。
ちょっと前までなら、絶対笑ってた。でも今は……ちょっとだけ、書いてみたいって思うかな。」
その日、少年のノートには、ひとつの記録が刻まれた。
“他人の痛みを感じ、自分の言葉で癒す”という、
簡単ではないけれど、とても美しい力。
それはこれから、幾度となく彼を悩ませ、支え、そして……導いていく。
だがこのときの彼は、まだ何も知らない。
後に言葉で数多の闇を照らす存在になることを。この時はまだ知る由もなかった。
第3話①「“書くことがコワい”って思った瞬間、ボクのペンが止まった...。」
(つづく)
どうも、おこんばんはでございます!
焼豚の神でございます。
今回も読了しに来てくださった皆様ありがとうございます('◇')ゞ!
感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!