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SSスペシャル中編◆「揺れる想い、選べぬ未来」◆

おはようございます!

皆さん、100話到達記念エピソード!

引き続きお楽しみください(^^♪


暑さに負けず、今日も乗り越えていきましょう!


さて、そんな微妙な天気をも吹き飛ばすほどの笑いとシリアスが入り混じった絶妙なストーリーはいかがでしょうか?


ではでは、ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!

「ん……」

グリスが目を覚ました時、視界に飛び込んできたのは、赤い瞳でじっとこちらを覗き込むリーアの顔だった。


「……起きた? グリス」

柔らかな声。けれどその頬はうっすら赤く、何か言いたそうに揺れている。


「リーア……?」

彼はまだ、ぬいぐるみのままの体をもぞもぞと動かす。

その姿を見た瞬間、リーアは表情をぐっと引き締めた。


「もう……心配させすぎ。あなた、戦場では頼れるのに……こういう時ばっかり手がかかるんだから」

そう言いながらも、彼女の指は優しく毛並みに触れていた。

撫でる手つきは、まるで大切な宝物を確かめるように。



◆◆◆


「おはようございます~! お目覚めですか、グリスさん!」

間の悪いタイミングで、セフィーナが元気よく顔を出す。

両手にはハーブをすり潰した薬湯を持って。


「わ、私がついてますから安心してくださいね! ほら、愛情たっぷりの――」

「はいストップ。今、わたしが看てるの」

「ええっ!? ずるいですリーアさん!」


ふたりの間に、またも火花が散る。


「……だから言っただろ。俺は看病されるほどじゃ――」

「「黙ってて!!」」

ぬいぐるみ姿のグリスに、声を揃えての怒号が飛ぶ。

仲間たちは「また始まった……」とため息をついた。




◆◆◆




夕刻。

グリスはテントの中で休んでいた。

リーアとセフィーナは交代で看病を続けていたが、今は二人きりの番が重なってしまった。


沈黙の時間。

ぽつりと、リーアが切り出す。


「ねぇ、セフィーナ。あなたは……どうしてそんなに、グリスに構うの?」


聖女は少し驚いた顔をして、薬湯の器をそっと置いた。

そして、視線を落としたまま小さく答える。


「……私はね。聖女だから、人々を救う使命があるの」

「ええ、知ってるわ」

「でも……本当は、ずっと恐かったの。使命に縛られて、自分を見失ってしまうことが。そんな時に現れたのが――グリスさん」


彼女の瞳が揺れる。

「彼は……私を一人の女として見てくれた。聖女じゃなく、ただの“セフィーナ”として。だから――」


言葉を飲み込んだ聖女の横顔を、リーアは黙って見つめた。

やがて、彼女は小さく息を吐く。


「……そう。私も似たようなものよ」


「え?」


「私は貴族で、騎士で。常に“模範”であらなきゃならなかった。剣を握る手に迷いを許されなかった。でもね――」

リーアはぬいぐるみ姿のグリスを撫でる。

「グリスと一緒にいると、騎士でなくていい。姫でなくてもいい。ただの“私”でいられるの」


セフィーナが驚いたように見つめる。

リーアの声は震えていた。


「……私は、女として彼を求めてしまうの。きっと騎士としては間違ってる。でも、この気持ちは止められない」


テントの中に、静かな沈黙が流れた。

それは戦場で剣を交えるよりも重い沈黙だった。




◆◆◆



「……ふ、ふたりとも……」

当のぬいぐるみは、布の体を震わせていた。

(俺は……どうしたらいいんだ?)


胸の奥で答えが見つからないまま、彼はただ彼女たちを見返すしかなかった。


その時――。


「ふふ……甘い。甘いですねぇ」


不意に声がした。

布一枚隔てた外から。


「!? 誰」

リーアがすぐに剣に手をかける。

だが、入ってきたのは敵ではなく――リゼット=アルマロード、聖女のメイドだった。


「失礼、様子を伺いに参りました」

彼女はにこやかに微笑みながら一礼する。


「リゼット……」セフィーナが声をかける。

「お嬢様は……随分と素直になられましたね」


その声音は、どこか含みがあった。

セフィーナが小さく身を縮める。





◆◆◆



「あなた……本当に“従者”なの?」リーアが問いかける。

「ええ、もちろんですとも。ですが――」

リゼットの瞳がふっと細まる。

「私はセフィーナ様に仕えつつ、もう一つの誓いを抱えております。彼女の“幸せ”を見届けること。それが、真の使命です」


「幸せ……?」

「はい。聖女としてでなく、一人の女性として」


その言葉に、リーアもセフィーナも息を呑む。


「ですから……グリス様。あなたは罪深いお方ですね」

リゼットの視線がグリスに突き刺さる。

「姫騎士と聖女、二人の未来を揺らがせてしまうのですから」


「……っ」

返す言葉を失った。




◆◆◆




夜。

焚火を囲んで仲間たちが眠りについた後も、グリスは一人、毛玉の姿で空を仰いでいた。

リーアとセフィーナの告白。

そしてリゼットの含みある言葉。


(俺は……そもそも選んでいいのか?)


もふもふの体に夜風が吹き抜ける。

その時、ふっと冷たい視線を感じた。


「――……っ!」

振り返るが、そこには誰もいない。


しかし、闇の奥に確かにあった気がした。

“第三の気配”。


誰かが、じっと自分たちを見ている。

未来をかき乱すかのように。




◆◆◆




「グリス……」

背後から声がした。リーアだった。

「眠れないの?」

「……まぁな」


彼女は少し逡巡してから、隣に腰を下ろす。

焚火の残り火が、彼女の銀髪を赤く照らしていた。


「ねぇ。もし……もしよ。あなたが全部を抱え込もうとしたら、私は怒るわ」

「え?」

「だって……私は、あなたに笑っていてほしいから」


その言葉に、グリスは胸が熱くなった。


「リーア……」

その瞬間――。


「おふたりとも、なにをこっそり甘いことを!」

セフィーナが乱入。

「私は……むっつりじゃありませんからね!」

「やっぱり気にしてたんだ……」


場がぐらぐらと揺れる。

だが、その陰でシロモフだけが真剣な眼差しをしていた。


「……来るモフ。次の影が……もう近くまで来てるモフ」


彼の呟きは、誰にも届かなかった。





◆◆◆




――そして。


月明かりの下。

森の奥の断崖に、一人の影が立っていた。


フードに隠された顔。

女とも男ともつかぬ細いシルエット。


「……ようやく、見つけた」


その声は確かに女のものだった。

だが、グリスたちはまだ気づいていない。

次の波乱を告げるその存在に――。




(続く:後編「未来を抱きしめて」へ!)



どうも、お世話様でございます!


焼豚の神でございます。


最後までお読みいただきありがとうございます。('◇')ゞ


今後も加速度的に物語が進行していきます!


それでは、引き続き物語をお楽しみください!('ω')ノ


お楽しみに♪('ω')ノ


◆グリスの「モフ度」と能力関連設定◆


グリスの能力:「クロニクルベアラー(物語を綴る者)」


 → 他者の記憶・感情・空間の“物語構造”を感知し、世界を“読み解く”力。


 → 使えば使うほど“内側の温度(感情)”が昂ぶり、モフ度が上昇する。




モフ度


 - 0~19%:平常


 - 20~29%:末端ふわ化


 - 30~49%:耳/尻尾ふわ化


 - 50%以上:ぬいぐるみ化進行、人格への影響(語尾に“ぷぅ”など)


 - 75%以上:上半身下半身がぬいぐるみ化急行、人格への影響(発声が可愛くなるなど)


 - 100%:完全ぬいぐるみ化(意識あり)=“魂を綴る最後の綴り”



良ければ、感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!



また、良かったら筆者に別作品である『ナナシの豪腕とモンスター三姉妹 ―最弱から始まる最強クラン伝説―』通称:【ナナクラ】を是非、この機会に知って頂けますと幸いです!


それでは、また次話でお会いしましょう~~~(^^♪


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