第2話③:「“言葉のチカラ”とか言うけど……え、これマジで世界変えるやつ!?」
今日もよろしくお願いします!
ストーリーに、どれだけ脂が乗っているか…
ぜひ読んで確かめてください(*'ω'*)!
――地獄のブートキャンプ初日が終了した夜の、団欒タイムのことだった。
暗く、静かな森の奥。
小鳥の鳴き声も、風の音も聞こえない。
ただ、張り詰めた空気と、自分の呼吸音だけが耳に残っていた。
グリスは、言葉を失って立ち尽くしていた。
目の前の光景に、何が起きたのか、理解が追いつかない。
「これって……ボクの……言葉?」
ページに書かれた、ほんの数行の言葉。
《はじめて、温かいごはんを食べた。》《ぼくは、うれしい。》
それだけのはずだった。
でも、その文字が浮かび上がった瞬間。
空気が変わり、風が生まれ、ページの上に虹のような光が広がった。
ツカサとレンジ、神様兄弟が、それをじっと見つめている。
「……やっぱりな」
ツカサがぽつりと呟いた。
「グリス、お前の“言葉”は、ただの記録じゃない。力を持ってる」
「チカラ……って、なにそれ。よくあるアニメ展開……?」
思わずグリスはそうボヤくけれど、指先はまだ、かすかに震えていた。
これは、冗談じゃない。何かが、本当に動き出している。
レンジが、ゆっくりと歩み寄る。
「この森はね、『記録者』が生まれると反応する。
いま、お前が本に書いた言葉……それは、過去を浄化した」
「過去? 浄化?」
「お前が“あのとき感じた想い”をちゃんと認めて、言葉にした。
それが、この世界の“闇”に対する光になるんだ」
意味はわからない。でも、胸の奥がズキリと痛んだ。
(ボクが……ボクの気持ちが……そんな、大事なことなの?)
自分の感情なんて、ちっぽけなもんだと思ってた。
寂しかった記憶も、誰にも言えなかった言葉も、
全部、ただの“忘れたい過去”だと思ってたのに。
「……じゃあ、ボクが、これからもっと書いていったら……?」
レンジは頷いた。
「この世界の“歪み”が少しずつ正されていく。
お前の中の“記憶”が、他の誰かをも救うんだ」
「そんなの……プレッシャーで死にそうなんだけど」
笑うつもりで言ったのに、声が少し震えてしまった。
ツカサが、ぽん、と肩を叩いてきた。
「まあ、急がなくていいさ。
書きたい時に、書きたいことを書けばいい。
でもな、忘れるなよ。
お前が“感じたこと”は、お前にしか書けない。
そして、それが誰かの人生を変えるかもしれない。
それって、ちょっとだけ、スゲェことじゃね?」
グリスは、うつむきながら頷いた。
胸に抱えた本が、ほのかにあたたかい。
――その夜。
焚き火のそばで、ひとりページをめくっていた。
小さな火花がぱちぱちと弾ける音。
あたたかな湯気の立つスープの匂い。
そして、自分の書いた言葉たちが、白いページに浮かんでいた。
《ひとりで泣いてたとき、誰かが背中をさすってくれた夢を見た》
《起きたら、布団の中がすごくあたたかくて、泣いた》
ただの夢の話。
でも、そのとき感じたあの感覚は、確かに自分だけのものだった。
「……こんなこと、誰が読んでもつまんないって思うよな」
そうボヤいたけど、ページはまるで、それを否定するように、
やさしく光っていた。
(……いいんだ。
これは、ボクが“自分のために書いた”言葉だから)
ナレーション:
世界はまだ静かに眠っている。
でも、ひとつの言葉が灯るたび、
その眠りの中に微かなぬくもりが差していく。
かつて忘れられた記憶が、言葉になる。
それは誰かにとっての“救い”になる。
少年の物語は、始まったばかり。
けれどその胸には、
たしかにひとつ、“自分の言葉”が刻まれていた。
「……“記録者”とか、“運命を変える言葉”とか……
そんな大層なこと、正直まだよくわかんないけど。
でも、書いてよかったって、今は……ちょっとだけ、思えるかな」
第2話④「“記録者”って言われても…ボク、まだ日記1日坊主なんだけど!?」
(つづく)
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焼豚の神でございます。
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