▽プロローグ① 〜焼豚顔のオーク少年グリス〜
初めて投稿します。
是非最後までお楽しみくださいませ('◇')ゞ!
焼けた石畳に靴底が吸いつくような音を立てる。
この裏路地に入ってくる者は少ない。いや、ほとんどいない。
グリスは、今日もいつもと変わらぬように、残飯をあさっていた。
「……お~い、今日もひとりなのかぁ?」
腐った芋の皮をくわえたそのとき、声がした。
振り返ると、そこには浮浪者――いや、この辺を縄張りにしている“ゴロツキ”が立っていた。
その男は、ニヤリと笑いながら言った。
「また来たな、焼豚顔。」
グリスは思わず顔を伏せた。
焼豚顔。
オーク族の中でも彼だけが、生まれつき頬がつやつやと光り、鼻先はまるで焼かれた肉のように赤い。
「なんだその顔? 腹減って焼けちまったのか?」
「うわ、臭ってきそう!焼きすぎだぜ〜」
笑い声が響く。
グリスは耐えた。耐えて、その場から走って逃げた。
彼は足が速い。
それだけが取り柄だった。
* * *
空腹はもう限界だった。
人目を避けて寝ていた薄暗い通路の中で、グリスは呻いた。
「俺は……なんでこんな顔なんだ……」
ひとりごとが空に溶けて消えていく。
そのときだった。
──チリリリ……
耳障りな音がした。目を開けると、そこには虹色に光る扉が立っていた。
「……なに、あれ」
突然目の前にある扉からまばゆい虹色の光を放っていた。
「え、扉が光ってるんだけどなんで?滅茶苦茶入ってくださいって誘われている気がして、怖いんだけど...。よし、見なかったことにしよう。」
少年は、扉を無視して食べ物を探しに歩き始める。思いのほか、少年は利他的に頭が回る子だった。
そして、裏路地の角を曲がった。すると、
「え?また、光る扉があるんだけど。なんで??」
少年の前に、虹色に光る扉が鎮座していた。まるで、目の前の扉から「さっさと入らんかい!」と言われている気がしてならなかった。さすがに、入らなきゃダメかなと思うかもしれないが、少年は《超慎重派》な性格をしていた。それは、スラムで生を受けた少年が生き残るために身に着けた術だった。
「え~、ボク、腹減ってるんだけど。こんな上等な扉くぐっても追い返されるのは目に見えてるし。怒られるの嫌だから、いつもの場所行こう。」
見るからに怪しい。誰かの罠か、幻覚か。
グリスは背を向けて歩き出した。
彼は、右を向いて迂回しようとした・・・が、
その先にまた扉が出現してとーせんぼされた。
「・・・。」
無言で今度は、少年は左を向いた。
目の前に扉が出現した。
そんな攻防を繰り広げて5分が経過した。
目の前の扉から「さっさと入れよ!!?」と言われている気がした。
「・・・ザッ!」
少年は、今度は勢いよく後ろを振り向きかけて反転、フェイントをいれつつ、左へとジャンプして駆け出した。
「フン!抜けた!!あばよ!変な扉~。」
勢いよく駆け出す、少年。裏路地がダメならと大通りを目指して一気に少年は
トップスピードで駆ける。意外と動きが俊敏なオーク君である。
「うぉぉぉぉ~!もう少しで大通りだ。とうッ!!!」
少年は勢いをつけてジャンプダッシュした。大通りまであと、50メートル。彼は、50メートル5秒58である。つまり、足がずば抜けて速かった。
目の前に扉はなし!
勢いよく飛び出して、人とぶつかるかもしれない点も考慮に入れつつ、最短で避けて逃げる。今から出るのは大通り、もし貴族様にぶつかったりでもしたら、後で何があるかたまったものじゃない。
だけど、シミュレーションさえすれば避けるのは容易いッ。
俺なら、逃げ切れるッ。彼の頭には、無数の策が浮かんでいた。
トップスピードで駆け抜けつつ、後ろをチラリと見て扉がいないことを確認。コンマ0.5秒で、目の前を確認しつつ扉が出現していないことを確認。抜けられるッ!少年は確信した。
「フッ勝った!!」
もう少しで、大通りに出られるという安堵感からか少年はコンマ0.1秒目線を下げてしまった・・・。
その油断が仇となることも知らずに。再び、彼が目線を上げると、あの虹色の光を放つ扉が扉を開けて待ち構えていた。
「いらっしゃ~~い。お前の負けだッ!」虹色に光る扉にそう言われている気がした。
「え?」
少年は悟った、「あ、無理だ。」と。
勢い良く駆け出し、トップスピードに乗っていた両足を急に止めることができず、少年は扉の中へと転がるように吸い込まれていった。
その少年が入った扉も忽然と姿を消した。まるで、そこには最初から扉なんてものはなかったかのように。そしてその間、大通りを歩いていた人たちは誰一人気づくことはなかった。
これは、運命を“焼き直す”物語。その前日譚にあたるお話。
少年が、自身の運命に抗う術を手に入れる前にあった、ほんの少し、裏路地で起った小さな攻防戦であった。そして、その戦いを知る者はまだ誰もいない。
プロローグ②へつづく
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◎【焼豚の神、降臨⁉️】◎
はじめまして、そして突然すみません。
焼豚の神と申します。(※自称です)
ある日の深夜、突然──
「これだッ!!」
と頭に焼豚……じゃなかった、異世界の光景と物語が降ってきました。
気づけばメモ帳がベーコン脂で……じゃなくて物語でびっしり。
これはもう、”投稿するしかない!”という謎の使命感に駆られ、今ここに筆を取った次第です。
▽プロローグは全3話構成!▽
6月 9日(月)6:10 → ▽プロローグ① 〜焼豚顔のオーク少年グリス〜
6月10日(火)6:10 → ▽プロローグ②〜神様は町中華にいた!〜
6月11日(水)6:10 → ▽プロローグ③~焼豚グリスの断罪!?~
そして――第1話「白紙の本と書けないペン」
【本編スタートは、6月12日(木)20:10から!】
その後は20時10分に毎晩更新予定です。|夜のお供《晩酌の肴》にいかがでしょうか?
「初投稿」という名の第一歩に、どれだけ脂が乗っているか…
ぜひ読んで確かめてください!
感想・ブクマ・お気に入り、おかわり自由でお待ちしてます!
また、公式Instagramも脂マシマシで配信中!
脂ノリノリで配信しています。
ストーリーではまだ出てきていない、これから出てくる焼豚キャラクターたちが脂ノリノリで動き回っています。
良かったら、公式Instagramにも遊びに来ておいでませ~~~!
https://www.instagram.com/chaasyuu_uranai/?locale=ja_JP
では、また脂力が満ちる頃に、お会いしましょう。バイナラ(^^)/
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