悪女マリア・ベルージュ
「罪人マリア・ベルージュ、お前を国家秘密漏えいの罪で今から処刑する!」
違う、私は何もしていない!!でも、もう遅い…今から処刑だし誰にも聞く耳を持って貰えないだろう。だって私は悪女のマリア・ベルージュなんですもの。
私はベルージュ公爵家の一人娘だった。それ故に何をしても注意されず、大体のことが許されてきた。だが何でも手に入る立場のマリアにも手に入らないものがあった。それは親からの『愛情』だった。
父親からは関心も向けられず、母親も愛人を作り、マリアのことは侍女任せでほとんど放置されている状態だった。そんなマリアは関心や愛情を向けて貰うために、我がままを言うようになった。だが、それでも親は気にもしなかった。そのせいで私はどんどん傲慢になっていき、親から貰えなかった愛情を男の人を弄んで埋めていた。そんなマリアのことを、いつしかみんなはこう呼ぶようになった、悪女だと。
だからいくら反論しても、私が罪を犯していないことを信じてくれる人はいなかった。(あぁ、私ってこんなにも信用されていないのね…)でも当然だとも思った。今までの人生を改めて振り返ると、私は恨まれるようなことはしても、感謝されるようなことはしてこなかったのだ。(それでも、両親は信じてくれるなんて最後までわずかに期待した私はバカね…)
私の人生こんな風に終わるなんて思わなかった。きっとこの処される罪も今までの行いのせいだろうと思うと、もう意味なんてないのに後悔ばかりが押し寄せてくる。でも、もう時間だ。
「今から処刑を執行する、罪人は前へ」
(もし、人生をやり直せるならば次は愛されてみたいなぁ…そして次は悪女なんて呼ばれない、人を癒せるような存在になりたい。)多分無理だろうけど…
「それでは、執行始め!」
(痛いッ!)こんなに痛いなんて死にそう…あ、でも執行されたからもう死んでるのか…じゃあなんで私まだ意識があるのかしら?それになんだか眩しいような…?
「奥様、生まれましたよ!可愛らしいお嬢様です。」 「本当だわ!まるで天使みたいね。」
どういうこと…この人達は誰なの?それにお嬢様って??
(ていうか私なんで生きてるの!?)