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第96話 [白王の勇者]と[白亜の魔剣士]

 「ここまで堕ちたか。2代目勇者(ユーライ)

 そう。魔王軍四天月、[白の月]は2代目勇者のユーライだった。



 約650年前、ラリバルトは、唯一認めた仲間のユーライより一足先に、勇者パーティと共に魔王討伐に出た。しかし結果は惨敗。魔王の強さと味方の無惨な死に様を目に焼き付けたラリバルトは、数ヶ月間鬱のような状態になっていた。


 ラリバルトの鬱を終わらせたのは、2代目勇者(ユーライ)の敗北だった。【虹の勇者】の後継者、【白王の勇者】であるユーライも当然、ヂーナミア王の命によって勇者パーティと共に魔王討伐に赴いた。


 しかし2代目勇者パーティもまた、魔王に壊滅させられる事となった。生き残ったのはユーライのみ。ユーライもまた、鬱のような状態となる。

 その頃、2代目勇者パーティの敗北を知ったラリバルトは、ある決断をした。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事にしたのだった。

 ラリバルトは、唯一認めたユーライを誘い、共に禁術を使う事で魔族となった。

 しかし、ユーライの考えはラリバルトとは異なる物だった。


 「あれに勝てる人間など現れるわけが無い。時代を変えるのは僕達なんだ。

 ......ワンバルムを、内側から変える」


 吐き捨てるようにラリバルトにそう叫んだ後、ユーライは行方不明となっていた。


 「久しぶりだね。ラリバルト、魔王様に勝てる人間は見つかったのかい?」

 しかしラリバルトは、すっかり魔王軍の一員となったユーライをただ睨むだけだった。それを見たユーライは顔をおさえ、笑い始める。

 「ハッハッハ! やっぱりいなかったか! 君もようやく我慢の限界が来たのかい?!

 魔王様に勝てる人間など、存在するはずがないんだよ!」


 「黙れ! あの時の......あの時のお前はどこに行ったんだ!

 ああ...! クソが! ×××の野郎が! とっとと×××で×××に×××やがれ!

 お前もだユーライ! ×××で×××に×××でも×××しやがれこの×××野郎!」


 ユーライは久しぶりのラリバルトの剣幕を感じ、興奮していた。

 「久しぶりの感覚だ......懐かしいよ!」


 「お前はもう...! ユーライじゃねぇ! [魔力強化 level-max]!」


 黄金の魔力がラリバルトの身体を巡り、剣の先まで至る。

 ユーライは余裕の表情を見せていた。

 「おいおい。そんな事したら、ここら一帯、平地になっちゃうじゃないか」


 ラリバルトはユーライの言葉を無視して剣を振り下ろす。

 「スドォォォーン!」

 20mはある高さの壁が一気に崩れ落ち、衝撃で魔王軍の建物は全壊、その余波は見えるだけで山を5つ消し飛ばした。

 「...ふっ! 容赦ないなラリバルト! 相当鍛錬したんだろう? 流石の剣術だ! けど……力の方は()()()()()()()


 魔王軍の四天月は、基本的に親からその称号を受け継ぐ事で続いている。例えば【紅の月】はヴォルトデア家、【紺の月】はベリオン家だ。

 しかし【白の月】だけは、実力で決まる。魔王軍の者が立候補し、予選を通過し、ライバルを殺し、魔王に謁見し認められる。よって、いつの時代でも四天月最強は【白の月】になる。

 ユーライはその顕著な例である。人間から魔族になったため、家柄などはなく、ただ実力でのし上がったのだ。

 そのためユーライは、ラリバルトとも互角に戦える戦闘力を持つ。ラリバルトの絶大な威力の斬撃を前にしてほとんどダメージを受けずにそこに立っている。


 「僕は君が唯一認めた人間だ。そんなもので死なないことくらい分かっているだろう?

 それとも何だい? まさか今更僕の考えを変えようとでも言うのかい?」


 ラリバルトはただ、剣を振り続けた。一振りの度に地が揺れ、地形が変わっていく。今、彼の頭は怒りに埋もれていたが、その表情はかすかに、笑顔を感じるものでもあった。

 「唯一……か。


 それは650年前の話だ」


 ラリバルトの言葉に、ユーライは眉をしかめた。

 「なに?」


 ラリバルトは、ユーライに聞こえない程小さな声でつぶやいた。

 「俺らの永遠の星には、闇を照らしてもらうための力を、温存してもらわねばな」

 そしてラリバルトはユーライに叫ぶ。

 「いくぞ【白の月】!! こっからが本番だ!


 [虹の勇者]ァァァ!!」


 その瞬間、虹色の魔力の波動が広がり、周囲の魔族を吹き飛ばし、消滅させた。

 「初代、聖なる勇者……かますぞオラァ!!!」

 地面を蹴り、高く飛び上がり一瞬でユーライを間合いに納めた。虹色の剣がユーライに襲い掛かる。ユーライはほのかな笑顔を浮かべた。

 「それでこそ君だ! [白亜の魔剣士]!」

 魔族化し、魔王軍に加入した元・白王の勇者ユーライの現在の主要スキル、[白亜の魔剣士]。それは、魔剣士とは名ばかりの、


 勇者スキルだった。


 純白の魔力を纏ったユーライが反撃にでる。剣がぶつかる度に衝撃波が広がり、周囲の空間には、2人の魔族しか存在しない。

 純白と虹のぶつかり合い。どちらも最強クラスの勇者であり、魔族。


 「お前とは! 今! ここで! 落とし前を付ける!」


 「[麗塵剣]! [天墜る千槍(あまつるちそう)]!」

 「[夢影の迅閃(むえいのじんせん)]! [極楽が示す静寂(ヘブンズ・サイレンス)]!」


 互いの全力が世界に大きな影響を与えていく。

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