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第8話 疑惑

 ある日、アリスが真剣な様子で話しかけてきた。

 「ただの拠点とは思えない巨大な拠点を発見し、セイ様のリベルシステムと相談したところ、あれが第2次元最大の拠点、[セイクリッド・リベル・ベルクリア支部]である可能性が非常に高いと結果がでました」

 セイのリベルシステムはなぜか他人の意識と一時的に接続することができるようで、アリスの拠点探しに協力していたようだ。

 第2次元最大の拠点と聞いてセイは少し興奮していた。「あいつらにこれまでより大きな損失を与えられる……! それに、クラインもそこにいる可能性が高い!」

 そしてこの興奮はアリスとミカも感じているようだった。


 「それじゃあ明日の夜、落とそう」


 そうしてセイ達は、全次元を揺るがす大事件が起こる前の、最後の眠りについたのだった。


 翌日、セイ達は最後の準備をしていた。セイの[黄金の武器庫]でアリスに刀を渡し、ミカの魔力を増幅させた。

 剣士の強さとは、身体能力と剣術の練度、そして経験によって決まるといえる。そしてこの3つのバランスもこれまた重要な要素となるのだ。


 魔法使いの強さとは、主に魔力と魔力制御力の2つの要素によって決まる。魔力が多ければ多いほど魔法を多く発動できるようになる。また、魔力制御力が高ければ高いほど魔法をより精密に、連発ができるようになる。ミカは魔法制御力に長けており、魔力量さえあればかなり強力な魔法使いになるだろう。


 EX神話級を2つ、神話級を2つもっているセイはもちろん、アリスとミカも既に強力な仲間となっていた。


 「それでは参りましょう。この次元最後の掃除です!」

 アリスはあきらかにワクワクしていたようだった。もしかしてサイコパスだったりするのかな……?

 日が落ち、人々が眠りについた頃、セイ達は第二次元首都、ベルクリア地区の地下にある拠点の前に立っていた。

 手には[永氷(アイシクル)()支配者(ドミネーター)]で生成した永氷の剣を、胸にはお父様の記憶を強く持ち、殲滅する。


 まずはアリスの[静夜を呼ぶ者]で鋼鉄の扉を切り刻む。襲撃に気付き襲い掛かってくるリベルメンバーを、ミカの重力魔法で拘束し、セイの[赤血の鳥籠]で切り刻む。

 『リベルメンバー27名の死亡を確認』

 「2人逃がしました!」

 「おっけー! 任せろ!」


 気付けばかなりのリベルメンバーを殺していた。興奮して記憶が曖昧だが、意識がはっきりした時のシステム音声ははっきり聞こえた。

 『リベルメンバー121名の死亡を確認』

 『残り1人と思われます』

 更に地下へと続く階段を見つけ、淡々と降りていく。巨大な地下施設に三人の足音が響き渡る。


 「おうおうおう!  派手にやってくれたなぁ! なっ?! あんたらか!」

 荒々しくたくましい男の声が耳を刺激する。

 「じゃ、改めて俺様はクライン。≪支配≫の異名持ち。そうだな……お前らの人生を終わらす者さ! その手際の良さ、お前らだろ? 最近小さな拠点を潰しまくってるのは」

 セイ達とクラインは再び立ち会う。


 その瞬間、男の姿が消えセイの体にとてつもなく強い重力がかかりセイは潰されかけた。

 「あっぶな…… 咄嗟に自分がそこにいない運命に切り替えて良かったぜ」

 この重力魔法はミカのものだ。

 もちろんミカもリベルに復讐心があり、裏切るとは思えなかった。


 セイは直ぐに運命を操作し、ミカを取り戻す。

 「なんだぁ!? もう終わりかぁ! もっと遊ばせろや!」

 ミカは思ったより早く冷静になる。が、体を支配されたのは気に障らなかったようで、明らかにキレてる。

 「貴様ごときが僕を支配するだと……? ふざけるな!」

 ミカはその瞬間擬似的なブラックホールを創り出し、周囲の物を吸い付くそうとした。


 しかし今度はアリスの体を乗っ取り、ブラックホールを切った。

 もちろんまたセイは運命を操作しようとしたが、アリスは自力で支配を退けた。

 「なっ!? 俺の[身体支配]はEX伝説級レベルだぞ?! そこらのやつに破られるものではない!」


 アリスは怒りを隠しながら冷静に返す。

 「簡単な話です。私は神話級ですので」

 あれ……? これミカに喧嘩売ってない?


 『 マスター「アリス」の強い怒りを確認。神話級スキル[静夜を呼ぶ者]のセット奥義、[魂を滅す者(グランド・スラスト)]が解放されます』


 「[魂を滅す者(グランド・スラスト)]!!!」


 [魂を滅す者(グランド・スラスト)]は魂を斬る技。身体支配だろうが関係なく斬れるわけだ。


 「俺様…が負ける時が……来るとはな。

 だが、おい小僧……()()()()()()()()()()()()() 気配で分かるんだよ。同類の気配がな!……」

 セイは強い怒りと不快感を感じたが、クラインはすぐに力尽き、魂は無へと還った。


 最後の1人を倒し、セイは周りを見渡す。


 数日前、セイはある予想をたてていた。

 それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事だ。


 理由は簡単。どちらも神に対して否定的で何をするか分からない奴らだからだ。

 リベルは説明するまでもないが、第二次元の中心、ベルクリア研究所は科学を何よりも重要視しており、それを簡単に引っくり返す事ができるスキルや神を嫌っているのである。


 そしてもうひとつ、セイ達がリベルを潰した後はベルクリア警備隊に任せていて、それなりに大きな拠点も潰してきた。だが、そのニュースが1回も放送されていないのだ。

 この世界にもテレビ的なものがあり、毎日ニュースもやっている。が、流石にここまで報道されないのはおかしい。

 何か不都合で隠蔽しているとしか思えないのである。


 この疑いの証拠を探す事も目的の1つとしてセイはここに来たのである。

 この事をアリスとミカに伝えると、2人は黙ってうなずき、証拠探しを手伝ってくれた。


 約20分後

 「あった」

 そこには「ベルクリア研究所」と書かれた荷物があった。

 開けて見ると、そこには多くのレーザー銃などの武器が入っていた。

 「確定だな」


 そういえばスキル取得の儀式の前日の襲撃時、あいつらはレーザー銃を使っていた。


 これではベルクリア警備隊も信頼出来ないので、現場を爆発させた。

 かなり叱られたがほぼ無視だ。そしてこれが最も大事。

 第二次元中のスピーカーをハッキングしこの声明を発表する。


 「ベルクリア研究所はセイクリッド・リベルと手を組んで神への反乱を企んでいる」


 世界中で疑問の声が響いた。

 「なんだこの声?!」

 「研究所がリベルと組んでいるですって?!」

 「確かに両方とも神を嫌ってるな……」

 これはベルクリア研究所の信頼性を落とし、俺達が襲撃しても、容疑者の特定を少しでも難しくするためだ。だがその前に潰す。


 その頃、主要次元連盟の某所、セイクリッド・リベル本部では、残り7人の異名持ちが揃い、[運命の円卓]で話し合っていた。

 「……クラインが殺られた」


 「ようやく神話会が動き出したって事か?」


 「いや。どうやら違うっぽいよ」


 「え?」


 「覚えてる? 数年前に神話級判定を受けた……セイってヤツ! そいつが仲間と一緒にやったんだって!」


 「まぁ、数年程度で[異名持ちの恥]と呼ばれるクラインに勝てたのなら、及第点……といったところか。しかし、仲間と共になら実力はたかが知れている」


 「そーだねー」


 「では、そろそろ行くとするよ。まだ私には計画があるのだから」


 「いってらっしゃ〜い! もしピンチになったら、フランが助けに行ってあげる!」


 「フンッ! そんな事態になるとは思えんな」

 フランに送り出された女は部屋を出ていった。


 「ところでさぁ〜 デッドアイ、あんた目つき変わったぁ?」


 「その呼び方はやめろ。それと、私の目つきが悪いと言っているのか」

 デッドアイと呼ばれた初老の男はフランを睨む。


 「いや〜?」

スキル解説

EX神話級[赤血の鳥籠]

対象の足元に巨大な赤い鳥籠を生成し、対象を閉じ込める。

鳥籠は破壊不可であり、ワープ等でも脱出できない。

最後には、無数の斬撃により対象を分子レベルで切り刻む。

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