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第87話 レイ・カルカソンヌ

 カイルの元に届いた招集、そこには、魔王城周辺で魔王軍の集会が行われたという情報が記載されていた。

 「師匠、よければ師匠も……」

 「誰が行くか!!!」

 カイルはラリバルトを誘ったが、一瞬で断った。仕方なくラリバルトを置いて、カイル達勇者パーティはヂーナミアに戻っていった。


 カイル達が出発した後、ラリバルトは剣を持ち、振り返った。

 「あいつらが出発するまで待っていたのはいいが、お前の存在自体が不快だ。とっとと出てきやがれ!」

 岩の陰から出てきたのは、鬼の面を付けた男だった。そして、ラリバルトはその男を知っていた。

 「シャーぺ・べリオン……!!」


 シャーぺ・べリオンと呼ばれたその男は、無言でラリバルトに向け右腕を伸ばした。そして、右腕の周囲に刀が浮かび上がった。そしてそれを凄まじい勢いで発射した。

 「このクソ野郎がぁ!」

 ラリバルトはそのほぼ全てを避け、斬り、止めた。最後の一本を指で止めたラリバルトは、それをシャーぺに向かって投げ返す。発射された時よりも速く投げ出された刀は、まっすぐにシャーぺの顔に飛び、


 鬼の面を突き破り、顔面に命中した。シャーぺは倒れ、魔力の塵となった。が、後ろからまた一人シャーぺが現れた。

 「チッ……! っぱニセモンだったか! どうせお前もだろ!」

 すると、2人目のシャーぺは大きな翼を生やした。ラリバルトはすぐにスキルを展開する。

 「[麗塵剣]!!」

 地面から現れた塊の質量攻撃がシャーぺを襲う。しかしそれを華麗に避けたシャーぺは、口を大きく開け、エネルギーを溜めはじめた。

 「させるか! [天墜る千槍(あまつるちそう)]!!」

 数えきれない程の槍が降り注ぎ、シャーぺの右足、右翼、脇腹に命中した。少しずつ落ちてきたシャーぺの身体は、またも魔力の塵となって消えていった。


 「クソが!!」




 フェルノートリゾートでの一件から三か月が経とうとしていた。ストラシアの面々は、そのほとんどがフェルノートリゾートの復興を手伝っていた。そこには異端審問官(インクイジター)のレイ・カルカソンヌの姿もあった。

 「私のあの力は何だったんだ……

 なんとか定……とかシステムは言ってたが意味が分からない……」

 レイはあの怪物を消し去った謎の力に関して何も知らず、何も覚えておらず、ただ、あの怪物を消し去るために知らない力を行使した記憶しかなかった。するとアリスが後ろから声をかける。

 「大丈夫ですよ! これから少しづつ、思い出していきましょう? もしあれが本当にレイさんの知らない力なら、我々ストラシアがあの謎の力の正体を調べ上げますよ!」


 レイは優しい微笑みを浮かべた。

 「ありがとう。だがこれは私自身の問題だ。君たちが気にすることではない」



 「「記憶喪失!?」」

 休憩中のテントから驚きの声が響いた。

 「ああ。数年前、第3次元で倒れていたんだ。自身がレイという名だったことは覚えていたが、それ以前の事は全く覚えていなかった。カルカソンヌという姓も、シアン様から授かったんだ」


 「じゃあ、そのスキルは……」

 アリスは尋ねると、

 「[幻影録(レギストロ)]のことか? あれは、目を覚ました時には既に持っていたんだ。[界眼]や[断裂]は、その後自身で作り出した、魔力制御の応用にすぎない」


 「ほんと、すごいんだな……」

 セイは、レイの魔力制御力に驚いた。そしてセイは、魔王討伐の話を用いて、レイのスキルや[界眼]、[断裂]について尋ねた。

 「レイ、お前も魔王討伐戦線に参加するんだろ? 仲間のスキルや戦い方は把握しておきたい。できれば教えてくれないか?」

 レイは静かに頷いた。

 「ああ。お前達がリベルに本気で立ち向かっている姿を見れば、おのずと信用はできる。

 [幻影録(レギストロ)]は、事前に行動を記録し、その動きを行う幻影を召喚する。この幻影は実体を持ち、ダメージを与えることが可能だ。記録した動作を行う幻影だから、それを弾くなどして中断させることができないのが強力なポイントだな。

 同時に召喚できる幻影の数に制限がないから、同時に多方向から斬りかかることが可能になる。だから私は【幻影千刀流】と呼ばれることもあるんだ。


 次に[界眼]だな。これは血液に魔力を流し、さらにそれを目と腕に集中させる。それだけだ。これにより動体視力を向上させ、腕の筋力も向上させる。魔力の濃度は高ければ高い程効果が上がるが、私が安全に戦えるのは8.25%が限界だな」


 アリスははっとし、あの戦いを思い出した。

 「あの時レイさん、9.5%って言ってませんでした!?」

 「ああ。あれは、私も死ぬ覚悟でやったんだ。あの力で私を再生していなければ、死んでいただろうな。

 話を戻そう。前に試したんだが、8.25%では発射された弾丸に刀で文字を刻むくらいなら可能だった」


 「それめっちゃすごくないですか!?」

 アリスは興奮しているようだった。何故かは分からないが、とても楽しそうだった。

 「最後に[断裂]だな。これは……[界眼]との併用が基本だが、目視で分子の配列を確認し、その隙間に入り込むよう魔力を変形させ、それで武器を覆うんだ。そして、その配列に沿って変形させた刃をぴったりそこに差し込む。そうすれば、分子で構成されているほとんどの物体は斬る事ができる。魔力伝導率が高い[零刀Ⅳ型(れっとう しがた)]だからこそできる技でもある」


 セイは、[界眼]ならある程度魔力制御力が高ければ可能だろうと考えていたが、[断裂]はレベルが違った。

 (嘘だろ……目視で分子の配列を見る? 人間顕微鏡かよ?!

 んで分子レベルで魔力を操るのもおかしいが、それを分子レベルで差し込むだと!? 人間とは思えない……スキルもなしに、アリスの[静夜を呼ぶ者(グランド・スラスター)]を再現しているようなものじゃないか!

 自分のスキルをスキルなしで再現されてアリスはどういう反応を……)

 セイがアリスの方を見ると、

 「あれ?」

 「ふぇぇ~~……?」


 あまりの衝撃で頭がおかしくなったようだ。

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