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第86話 英雄は13の切望を実現せし永遠の星なり

 カイルはなんとかエイレン達にも、魔王と戦う術があると信じていた。

 「でもエイレン達は魔王を倒すためにたくさん努力して……」

 しかしラリバルトはその言葉を遮る。

 「伸ばせるのは基礎的な部分だけだっつてんだろ。魔王討伐において、それは些末なことにすぎねぇんだ」


 カイルは言葉に形容しがたい感情に包まれた。近いもので言えば、絶望、だろうか。しかし、ラリバルトの次の言葉は予想外にも、希望あるものだった。

 「だが活躍の場が全くねぇわけではねぇ」

 カイルは驚いてラリバルトの顔を見た。

 「奴が大きな行動に出れば、間違いなく人間達(ヂーナミア)魔族側(ワンバルム)間で大規模な戦争が起こる。お前の仲間達、全く戦えないわけではねぇんだ、魔王以外との戦闘からなら役には立つんじゃねぇか?」


 「よかった……」

 カイルは安堵し、ラリバルトは話を戻した。

 「お前、話が逸れてることを忘れてるだろ。なぜ俺がお前を弟子にしたか訊きたいんじゃねえのか」


 「あっそうでした!」

 「理由は、この本だ。これは(魔王)が販売を禁止し、そのほとんどを処分した、予言書だ。内容が人類に希望を与えてしまうという理由で販売禁止にされた。これは魔王が一応保管していた、残りの一冊だ。

 基本的には絵しか描かれていねぇんだが……これの最後のページ、見てみろ」

 ラリバルトが示したページには、少し字がかすれながらも文が見えた。

 「死と悪意を司りし死神の王、13の切望により破られる。しかし万象の支配者は闇に堕ち、共生の王は望みを抱いて溺れる。

 英雄は13の切望を実現せし永遠の星なり。2柱が降臨せし時、かの戦が再び燃え盛る」


 「英雄は13の切望を実現せし永遠の星なり……まさかこの[永遠の星]って……」


 「そう、俺の見立てでは、この[永遠の星]は【永星の勇者】、お前のことだ。つまりお前が、このクソッタレな状況を変える鍵かもしれねえから、頼みを聞き入れたんだ。お前の仲間はついでだな」


 カイルは少し嬉しながらも、その予言の信ぴょう性を疑った。

 「でもそれ、信じられるんですか……? あくまで予言ですし……」


 ラリバルトは、この予言の最後の文を指さした。

 「大丈夫だ。少なくともこの最後の文、「2柱が降臨せし時、かの戦が再び燃え盛る」。この予言は的中している……いや、現在進行形で実現しようとしている。

 (魔王)が、何らかの神の降臨にむけて動いていることが分かった」


 カイルは大声を上げて驚いた。エイレン達を起こしてしまいそうだったが、どうやら大丈夫だったようだ。

 「神の降臨!? それって……」

 「確証はねえが、多分魔王スキルを創りやがった【邪神】アムノアだろうな。

 だが俺でも分かんねえのが、「2柱が降臨」って書いてあるところだ。戦が燃え盛るって事はその2柱の神が戦うんだろうな。だとしたら、もう1柱は勇者スキルを創った【正義の神】アレスの可能性が高い。だが……


 今ヂーナミアに、神の降臨を行えるほどの魔力を持つ奴はいねぇはずだ。魔力量はお前でも厳しいくらいだしな」

 ラリバルトはカイルを見た。


 つまり、魔王は【邪神】アムノアの降臨を企んでいる可能性が高いが、同時に【正義の神】アレスも降臨する可能性がある。しかし、アレスは誰の手によって降臨するのか予想がつかない。ということである。


 翌日以降、少しながらも希望を見たカイルは、より一層修行に真剣に取り組んだ。


 そしてある日、カイルの元に知らせが届いた。


 冒険者ギルドからの召集だった。

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