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第83話 魔王次元

 「ええ!? 僕でもダメなの?」

 カイルは残念そうに驚いた。

 「はい……申し訳ございません。例え勇者様でも、魔族に操られていたり、魔族にそそのかされている可能性など、様々な可能性に対策せよ。という動きがヂーナミア城でありまして……」

 ノルーセは少し考えた後、ある提案をした。

 「ならば、[聖魔力探知]を行うのはどうだ? それなら魔族の息がかかっていない事が証明できる」


 「それならまぁ……」

 司書はそれでもグレーゾーンと言いたげだったが勇者たちの前でそんなことを言う勇気はなかった。[聖魔力探知]は、闇属性の一種である「魔属性」の発見に特化した特殊な魔力探知である。魔族の気配や魔法、魔族と接触した痕跡までもを発見する事ができる優れものである。

 「なら早速始めるぞ。ここで時間を使いたくない。

 [聖魔力探知]、[感覚共有]」


 ノルーセは司書に手を伸ばした。司書はそっとその手を取ると、その視界が鮮やかに切り替わった。

 「これは……」

 そこには、一切の紫や黒がない、金色のオーラを纏うカイル達が立っている。司書は[聖魔力探知]の効果で見る視界は初めて見たが、あまりの壮観さに言葉を失っていた。

 「そろそろいいか?」

 ノルーセが手を離したそうにしていた。

 「あっすみません! と、とりあえず、大丈夫です! では、希望の魔導書はこちらですね?」

 慌ててノルーセの手を離すと、司書は魔導書に目を配った。

 「魔導書、[魔力掌握]……うん。これで間違いない」

 「では……」

 司書は分厚い本にメモを残すと、

 「どうぞ。返却は1ヶ月以内になります」


 「ありがとう。じゃあ、行こうか! ハルミンの所へ!」

 エイレンは魔導書を丁寧に鞄に入れると、3人を呼んだ。

 その後、前回通った森の中を通り、川を渡ってハルミンの家に着いた。カイルはドアをノックした。すると、

 「はいはい〜……あら?

 勇者君達? どうしたの?」


 エイレンが前に出て、魔導書をハルミンの顔の前に近づけた。

 「これ。貴女が探していた魔導書です。見つけたので借りて来ました」

 「え? かなり早かったわね〜 私1週間くらいかかると思っていたのに」


 「と、とにかく、これで初代勇者ラリバルトの居場所を調べて下さいますか?」

 エイレンは汗を流し、少し緊張してハルミンに尋ねた。

 「ええ。協力するわ。ただ、それにもこの[魔力掌握]が必要なの。ちょっと待っててくれる?」

 そう言ってハルミンは部屋の奥に入っていった。


 薄暗い部屋の真ん中に座ったハルミンは、魔導書を開いた。すると魔導書は光を放ち、浮かび上がった。

 『魔導書を使用し、レベル3スキル[魔力掌握]を取得しました。

 全てのスキルの魔力消費が10%減少し、一部のスキルの効果が強化されます』


 「よし……」

 ハルミンは立ち上がり、カイル達の元に戻った。

 「今から使う魔法は本来対象の現在の方向を示す物。けど、[魔力掌握]を併用できる今ならその距離まで分かる!

 だから魔導書を取りに行って貰ったのさ。私が探していたのは事実だし、お互いにいい事ばっかりだったからね。さ、始めるよ。


 [魔力掌握]、[追跡]」


 ハルミンの脳内に、ラリバルトの情報が休みなく入り込んでくる。そして、方向と距離の情報を元にハルミンはラリバルトの現在地を特定した。

 「西方……この距離で考えると……まさか、魔界?」

 魔法次元と魔王次元は隣接しており、物理的につながっているため、徒歩での次元間移動が可能になっているほぼ唯一の境界である。また、その次元の身近さから、魔法次元の人々は魔王次元の事を魔界と呼ぶことが多いのである。

 ちなみに魔法次元の空気中の魔力濃度が高いのも、「魔」の根源である魔王がいる次元と物理的に繋がっているからである。

 「このスキルは対象が移動してもマークは更新されない。行くなら急ぎな。

 まぁ、魔界にまで到着したら、大体の場所は分かるんじゃないかい? 勇者の勘って奴で」


 それを聞いたカイルは満面の笑みを浮かべ、扉を開けた。

 「ありがとうございます!! エイレン、ノルーセ、サント、行こう!」

 その後4人は、魔導書の返却を済ませ、魔王次元との境界であるフェミア山脈へ向かった。


 魔法次元の魔物は、そのほとんどが魔王次元から迷い込んだため、魔王次元との境界であるフェミア山脈に近づけば近づくほど魔物の数は多くなり、その強さも段々上がっていく。依頼が出ないでない限り人がここに近づくことはないので、魔物の数はなかなかだったが、EX神話級と筆頭とする勇者パーティの敵ではなかった。


 「依頼で近くに来たことはあるけど、麓まで来たのは初めてだね……」

 魔法次元と魔王次元の境は、フェミア山脈であり、その山々の麓にある大量の洞窟が魔王次元に繋がっているのである。一つ一つの洞窟はそう大きくはないが、およそ10メートル間隔で穴が並んでおり、近い所では5メートルしか離れていない地点もあった。

 「別にどれから入っても変わらないよ。洞窟同士はほぼ平行に伸びてるから」

 エイレンは前もって用意していた知識を披露しながら、適当な洞窟に入っていき、他の三人もその後ろを追いかけた。


 洞窟を出たその瞬間、4人全員が空気中の魔力濃度が激増したことに気が付いた。魔法次元の魔力濃度は、通常の約二~三倍と言われるが、魔王次元の魔力濃度はそれのさらに五倍近いのである。そのため、その次元に入った瞬間、その大量の魔力に体調を崩す者までいるとされている。

 「すごい魔力……皆、大丈夫?」

 カイルは他の三人の様子を気にして振り返った。その瞬間、景色が変わった。四人は別の場所に転移させられたのである。

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