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第81話 先代勇者の道標

 セイ率いるストラシアが魔法次元を出発した後、勇者カイルは[片翼の英雄]とともに[13代勇者パーティ]として、冒険者業を続け腕を磨いた。


 ーヂーナミア城にてー

 「[王の領域(KING WORLD)]」

 ヂーナミア王は王の大剣を掲げる。王の領域が展開され、ヂーナミア王の威厳が響き渡る。そこで跪いていたのは、カイルと[片翼の英雄]の3人だった。

 「そなたらを[第13次勇者パーティ]と認め、魔王の討伐及び魔族の殲滅を命ずる!!」


 カイルは、出せるだけ大きな声を出した。

 「13代目勇者、カイル・グランシス、拝命いたしました! 必ずや魔王の首を偉大なるベルノーシャ・ヂーナミア殿下へ献上致しましょう」



 数週間後、カイルは1日に30件という驚くべきペースで、依頼をこなしていた。ある夜、エイレンはため息をついて宿のベッドに飛び込んだ。

 「はぁ~~疲れた~~

 カイル~強くなりたいのは分かるけどここまで一気に依頼を片付ける必要あるの? 他の冒険者の仕事を奪ってるみたいだし……」


 カイルは日誌をまとめながら答える。

 「確かにそうかもね。でも、あんなに強いセイさんを見たらもっと早く強くなりたいって思うのは当然でしょ?」

 「それはあの人がEX神話級だ……し……あっ、カイルもEX神話級だったんだ」


 カイルはゆっくりと振り返る。その顔にはなんとも言葉にしがたい怒りの顔が浮かんでいる。

 「それ、どういうこと?」

 「ご、ごめんって! え~と……あ、じゃあ、カイルは憧れの勇者とかいないの?」

 エイレンは慌てて話を逸らした。カイルはムッとしたが、先代の勇者を思い浮かべた。


 「う~ん……僕は勇者ではあるけど、先代の事はあんまり知らないしな……

 でもこれまでEX神話級の勇者はいないんでしょ? じゃあ、僕以外で最強の勇者って誰なんだろう」


 エイレンは目線を逸らした。

 「そ、それは……」

 「何? 昔すぎて記録が残ってないとか?」

 カイルはエイレンに詰め寄る。エイレンはまたため息をついて仕方なく答えた。

 「あっ……いやぁ、その……強さだけなら、神話級[虹の勇者]を持つ、初代勇者ラリバルトだろうね。でも……

 ラリバルトは性格……というか考え方に問題があったんだよ」


 「考え方?」

 カイルは気になって調べてみることにした。


 翌日。カイルは図書館で、ラリバルトの逸話などを調べていた。

 「[虹の勇者]ラリバルトは圧倒的な力を有しており、スキルも魔力も使用することなく、魔族の3万の軍勢を剣一振りで屠ることができた」

 「初代勇者は、勇者パーティと行動を共にすることはほぼなかったが、唯一、初代勇者が現れて二年という早さで誕生した二代目勇者との仲は良かったと言われている」


 初代勇者はその偉大さからか、多くの書物に逸話が残っていたが、一際目立つところに置かれていた本には、ラリバルトの有名な話が書かれていた。

 「[虹の勇者]ラリバルトは、神話級の中でも最高峰ともいえる強さを誇っていた。


 325


 これは、ラリバルトが神話会に勧誘された回数。というよりは神話会の使者が、勧誘のためにラリバルトの元を訪れた回数である。おそらくラリバルトがあのような性格でなければ、この数字は一桁になっていただろう。

 当時の神話会会長、メノアは、何千回でもラリバルトを神話会に迎え入れるまで勧誘を続けるつもりだった。

 ではなぜ325回でその勧誘は途切れたのか。それは、()()()()()()()()()()使()()()()()()()()だ。

 ラリバルトは、異常なほどにプライドが高く、何があっても群がる気はなかった。それでも何百回と勧誘してきたことに苛立ちを覚えたのだろう。

 その後神話会はラリバルトの勧誘を諦めた。それ以降、650年間、[魔神剣騎士]テヌドットが会長になるまで、神話会はその栄光を失った


 神話会の栄光に陰りが見え始めたのと同時に、初代勇者ラリバルトは、()()()()()()()()()。これにより[虹の勇者]の名声も失墜。それ以降、11人の勇者が現れたが、魔王が討伐されることはなかった。しかし、[禁断の術を使用したラリバルトは今もどこかで生きている]という噂はヂーナミアに希望を与えている」


 カイルはそれを読んで目を疑った。

 「これが……本当に勇者?

 11人の勇者は……僕は13代目だから、きっと僕が勇者になる前に書かれた物だからだろうな。でも、収穫はあった……! ラリバルトは生きているかもしれない……確実な情報でなくても、もし生きているのなら、教えを乞える!


 ……ん?」

 カイルはある事に気付いた。ページの間に古いメモが残っていたのだ。

 「誰かが挟んだまま忘れたのかな? どれどれ?」


 「死神の王は天を創る者なり。資格を持たぬものが王の命を奪うべからず」

 

 「なんだろう……これ」

 カイルはあまり気にせずメモと本を元の場所に戻した。


 翌日、カイルはエイレン達に話を持ち掛けた。

 「エイレン、僕達、ラリバルトに修行をつけてもらおうよ」

 突然のとんでもない提案に、エイレンは持っていたカップを落としてしまった。

 「え?」


 大剣使いのサントは少し興味がありげだった。

 「悪くないかもしれないな! たしかに、650年経つ今でも実は生きているという噂はある!

 だが……居場所は分からないだろう? それに、初代勇者さんはプライドが高くて群れない性格だと伝わっている。会えたとしても俺達を鍛えてくれるとは限らないぞ?」


 しかしカイルは強くなること、それが今の一番の望みであり目標だった。

 「少しでも希望があるなら……僕はそれを掴みたいんだ! 僕は経験が少ない……もし生きているなら経験豊富なラリバルトに教えてもらえるのが一番だからね!」


 エイレンはため息を吐いたが、カイルの頼みを受け入れた。

 「わかった。初代勇者様を探すとしようか。だけど……どうやって探すつもり?」


 「それはセイさんに……あっでも頼りっぱなしもよくないか……」

 (たしかに難しい問題だなぁ……あっ確か前回の都市次元の武闘大会で【魔神剣騎士】と戦ったっていう魔法使いがいたっけ。

 その人、魔法次元のヂーナミアの辺境に住んでるって聞いたな)

 カイルは、辺境に住む【禁忌の魔法使い】ハルミンの事を思い出した。

 「ハルミンなら、ラリバルト探しに協力してくれるかも!!」

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