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第75話 異端審問官

 セイが[神葬]を抜いた瞬間、突然耳からアリスの声が聞こえた。念話だろう。

 「見つけました! 爆弾です!」

 セイがサラットと遭遇した時、アリスを含む多くのストラシアメンバーは既に魔力で強化された特殊な爆弾を見つけていた。しかし今になるまで念話などの通信が阻害されていたのである。それが、まだ戦い始めてもいないタイミングで解除されたのはなぜか。それは、

 「舐めやがって……」

 セイが動き出そうとした瞬間、サラットは近くに置いてあった爆弾に手を向けた。指先にはかすかに魔力が漂っている。

 「この爆弾は魔力で強化された特別製でね? 疑似的な魔力暴走を起こすものなの。それを数千万個、この次元に設置したの。

 この意味、賢い君ならわかるでしょう? セイ?」


 セイは手を止めた。

 「……そうだな。だがそれは、お前も同じだ」

 セイがサラットを鋭く睨んだ瞬間、

 「!?」

 サラットは何かに困惑したようだった。セイはゆっくりとサラットに歩み寄る。神葬を向けて。

 (海洋次元での戦いの後気付いた事だが、俺が≪覚醒≫、[権能化]を手に入れた事により、今まで[運命のディメンション・ドミネーター]にかかっていた「全次元に影響を及ぼす者への直接干渉はできない」という制約が緩和されていた。今なら異名持ちを直接消すことはできなくとも、行動不能にするくらいなら造作もない)


 セイは近くの爆弾に手を向け、[運命干渉]によって存在を削除した。そして身体が固まり、身動きを取れないサラットに神葬を突き立てる。その時だった。

 「ザシュッ!!」

 突然横から飛んできたのは、握りこぶし程度の石だった。神葬にとっては豆腐のように斬れる物だが、一瞬注意を引く事には成功していた。セイはその石を斬る。だが、それがどのような結末に繋がるか。それはすぐに予想がついた気がした。

 「久しぶり~ EX神話級のお兄ちゃん?」

 そこにいたのは、【愉悦】フランだった。暗い倉庫の上に立つ少女の姿は不思議な雰囲気を纏っていた。



 「一応集めてみたはいいものの……これ、どうする?」

 その頃、一度爆弾を集めて、船に戻ってきていた。爆弾の処理方法に悩んでいたアリス達は、様々な案を出し合っていた。

 「アリスさん、前に空間を無にする……創造者なんとかって使ってましたよね? あれでこれも消せるんじゃないですか?」

 「いや、あれは魔力消費量が多すぎる。ボーリング玉くらいの大きさの空間でも、消費魔力量は三兆を超える……こんな爆弾を消す目的で使うわけには……」


 すると、下部からローナが上がって来た。

 「……早く終わらせましょう。わたくしにお任せを」

 アリスとミカが振り返る。

 「そういえばローナのスキル、あんまり知らないね……」

 「ですね……直接戦闘に参加している所は見た事がありませんが」


 「でしょうね。わたくしのスキルは伝説級[汎用魔壁(フラクタル・シールド)]、攻撃には適さない防御専用のスキルですわ。だから、それの処理は、わたくしが」

 そう言って、ローナは魔壁で囲いを作り、爆弾を入れた。

 「これは一定量の魔力に触れると発動する魔力感知型爆弾ですわ、おそらくやつらがすぐに起爆できるようにしたのでしょう。アリスさん? こちらに小さな隙間を開けたので、魔力を流してくださる?

 すぐにわたくしが隙間を埋めますので心配はいりませんわ」



 その時、船に一人の女性が乗り込んだ。神話会とは少し違う、黒と金のコートに身を包み、サイバーパンクな刀を携えた一人の長白髪の女性だった。下部から階段に上って、広間にでた瞬間、

 「ドオォォォォォン!!!!」

 巨大な爆発音が船どころか、星全体に響いたようだった。その衝撃に、皆は倒れこむ。その女性も咄嗟に手を柄に掛けた。

 「……わたくしの魔壁には防音性能もそれなりにあるはずなのに……」

 体勢が崩れたローナやアリス達に、女性が話しかけた。

 「何のつもりだ。これが貴様達の歓迎の仕方なのか?」


 アリスは突然の事に困惑した。

 「え? あっ……まさかローナが急いでたのって……」

 ローナは立ち上がって服をはたいた。

 「そう。彼女、ルサリナ教最強の異端審問官(インクイジター)、レイ・カルカソンヌ様でございますわ」

 アリスとミカの2人は、突然のルサリナ教の来訪に驚いた。しかしそれも無理のない事であった。ネーレックから異端審問官(インクイジター)がきている事は知っていたが、その中でも最強と呼ばれる存在が、向こう側から来るとは思いもしなかったからだ。

 「えっと……初めまして。私はアリ……」

 アリスが自己紹介しようとした時、レイはすぐに刀を抜きかけた。

 「どういうつもりかと訊いている! まずはそれからだ」


 「お、落ち着いてくださいまし! 事情はすぐにお話いたしますわ!」

 ローナが急いで制止に入った。

 「……」

 レイは今にもアリス達を斬りそうな鋭い目つきで睨んでいた。状況を呑み込めてきたミカが急いで事情を説明した。

 「私達は神話会の許可を得てこの次元、正確に言うとフェルノートリゾートを調査していることはご存知ですね?

 私たちは調査中、魔力で強化された、魔力感知型の爆弾を発見したのです。それも大量に……

 全てではありませんが、その多くを回収し、ローナのスキルで周囲の保護を行った上で爆発させ、処理したのです。決して、貴方に危害を及ぼすような目的はございませんのでご安心を……」


 それを聞いたレイはやっと刀を納めた。

 「事情は把握した。だが、処理した爆弾は全てではないのだな?」

 ミカは少し胸をなでおろして答えた。

 「はい。全て回収するのは難しく……その場に固定された物や、爆弾を持ち出すには人が多すぎる場所にある物、おいてある場所から持ち出すのが難しい場所にある物など、回収できていない爆弾がかなり……」


 レイはミカの話を聞き終わった後、ローナに尋ねた。

 「この中で最も足が速いのは誰だ」

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