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第72話 許可状

 戦艦ストラシアはこの三日間、治安局に見つからないよう、魔力探知を繰り返してゲネトスへ向かった。それ以外にあった出来事といえば、セイのローブのデザインを元にして、ストラシアの戦闘部隊用の制服ができた事だ。しかも裁縫系のスキル所有者がいたお陰で、一瞬で量産ができてしまった。

 「そういえば、スキルには戦闘に使用するような物が多く、逆にそれ以外の生活に役立つ様なスキルはあまり見ない……これには何か理由があるのか……?」


 『……』

 セイはシステムに尋ねるように疑問を話したが、システムが口を開く事は無かった。システムに口はないが。



 遊楽次元の次元間転送陣がある、フェルノートリゾートの入り口、ゲネトスは、全次元から訪れる観光客全員が通る受付である。そのため、いつでも人が多く集まっている場所なのである。

 「流石にそのまま着陸するわけにはいかないな。システム、光学迷彩を」

 『了解しました。光学迷彩を起動します』


 「バチバチッ」

 こうしてストラシアは、目立たずにゲネトスに着陸する事に成功した。


 ネーレックがいるというフェルノートリアへはシステムの案内と戦艦ストラシアがあれば大丈夫なので、神話会からの許可状を持ってセイだけで船から降り、受付に向かった。

 「手続きはささっと終わらせたいから目立たないように慎重に行かないと……人が少ない受付窓口は……」

 セイが周囲の窓口を見渡していると、入り口から遠い端の方の窓口は人がほとんど並んでいなかった。

 「あそこだ……!」


 「すいませ~ん。神話会から許可状をもらってる場合の入場ってどうすれば……?」

 「……はい?」

 セイは小さめの声で尋ねる。が、窓口の女性は意味が分からなかったようだった。

 (流石に聞こえはしただろうけど、まあ、いきなりこんなこと言われて困るのも当然か)


 セイがもう一度説明しようとした時、

 「あ、う、上の者を呼んで参ります!」

 そう言って走っていった。三分もしない内にスーツ姿の男が出てきて、部屋の中へ呼ばれた。

 「お待ちしていただいて申し訳ございません……私、ゲネトス管理者のフーリと申します」

 そう言ってフーリは名刺を差し出す。


 「さて、早速ですがお時間を頂くわけにいきませんね。本題に入りましょう」

 そこでセイは、「ネーレックの名が次元間渡航技術提供者に記載されていた件」を隠し、あくまでリベル調査の一環であり、神話会の許可もあるという事を伝えた。

 「……分かりました。神話会への協力なら仕方ありませんね。社長へは話を通しておきます。ですが、我々フェルノートリゾートは、優秀な治安局との連携、厳重な入り口での検査とセキュリュティを誇っております。リベルがのほほんと侵入できるような場所ではありませんが……」


 (協力的ではあるが……疑問を持っているのか)

 「まあまあ、リベルがいなければそれはよい事ではあるのですから」

 セイはそう言って、フーリの気を緩ませておくことにした。


 「あっそうでした。セイ様、そちらの許可状、コピーでもよろしいので頂いても問題ないでしょうか?」

 セイは快く引き受け、コピーを渡した。


 セイが部屋を立ち去り、船に戻っている頃……フーリは許可状のコピーを隅々まで読んでいた。

 「神話会からの許可状……「神話会は第8、遊楽次元においてストラシアの活動を全面的に後押しし、フェルノートリゾートへの入場および調査等の全ての活動を許可する。※ただし、無差別攻撃や罪のない人への攻撃を禁ずる。これは決定事項であり、チルフェル社はこれに従わなければならない」ですか……それに…………

 「尚、ストラシアは常に軍事力を保有し、状況に応じてそれを執行できる。これはチルフェル社および治安局への警告である。ストラシアに全面協力し、争わない事。もしチルフェル社もしくは治安局が何かを企んでいるのならば、諦めた方が身のためだ」?

 こんな物……社長、どうやら我々は脅されているようです。そして……



 舐められている」



 ーフェルノートリア、小太りの中年の男が送られてきた紙を睨む。そして不機嫌そうに鼻をならし、紙を破り捨てた。

 「フンッ」



 「案外すんなりと入場許可が下りたな」

 『神話会の名声と権力は主要次元連盟の中で最も強力です。神話会の脅迫のような許可状があれば当然かと』

 セイは船に戻りながら呟いていた。


 「ただいま~……ん? どうした?」

 するとアリスが食堂の椅子に座りながら[妖刀:夜虚]を眺めていた。

 「この刀、[夜裂]が紫の焔を纏っただけなのに威力も桁違いになったので気になってるんです。これを手に入れた時のシステムの鑑定も文字化けしてて……」

 アリスは刀を少し鞘から抜く。紫の焔が舞い散った。

 「そう……か。ちょっと見せてくれるか?」


 「はい」

 そう言ってアリスは刀をセイに渡した。

 「[詳細鑑定]」

 『EX神話級[妖刀:夜虚(やこ)]

 攻撃力、598万440

 耐久度、1万5000/1万5000(自動修復適用済み)

 セットスキル、[止水乱舞:上の段ー炎華抜刀]、[止水乱舞:中の段ー紫焔流]、[止水乱舞:下の段ー狂い咲き]

 紫の焔を宿した妖刀。[闇鴉]が存在した時代と同時期に作成された。[闇鴉の大虐殺]によって犠牲になった全ての魂を封じており、その魂が放つ焔を纏う刃は絶大な威力を誇る』


 「これは……攻撃力が[神葬]に限りなく近いな……セットスキルも……詳細は分からないがかなり豪華だ」

 アリスは嬉しそうに尋ねる。

 「そ、そうですか……! 不気味な雰囲気の物だったので……問題なさそうならよかったです!」


 しかしセイには気になる事があった。

 ([闇鴉]って何なんだ……? 聞いた事もない……)


 そう話している内に、戦艦ストラシアは、ネーレックがいるフェルノートリアに到着した。

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