第68話 [物理攻撃完全無効]の抜け穴
「……ああ。わかった」
神話会本部、会長室でテヌドットは木田から、マーシュの訃報を伝えられた。
(以前の私なら深く傷ついていただろう……ただ今は、マーシュの犠牲を無駄にせず、前に進もうという気持ちが強いな)
「葬儀は……大規模な物はやめておこう。本人が恥ずかしがりそうだ。まあ、詳しい事は戻ってきてから決めるか。
今は、いまだ海洋次元にいるとされる【魔弾】の行方に集中してくれ」
マーシュの遺体はセイの[永氷の支配者]で冷凍保存した。これで数日ならストラシアは行動できる。
一方、【魔弾】コゥティは、既に近くの島に上陸し、次の戦闘に備えていた。
(サイアン殿も、メーノルも、逃げた。しかし俺の【魔眼】と【魔弾】は……
奴のスキルと相性が良い……!)
セイはストラシアで、テヌドットから受け取った黒いカードを眺めていた。
「これ……何に使うんだろう。表も裏も真っ黒で何も書かれていない……
テヌドットが言うには戦艦ストラシアに関係あるらしいけど……」
するとセイは、カードの端が弱い光を放っている事に気付いた。
「光って、る?」
セイは光が見えやすい暗い場所、座席エリアの真下の物置へ向かった。すると、
「光が強くなってる?!」
カードの端の光が明らかに強くなっているのを見つけた。セイは光が場所によって強く光ることに気付き、光が最も強い場所へとたどり着いた。そこは、
「操縦指令室?」
するとそこにいた驚いた様子のローナが話しかける。
「どうかいたしましたの? セイ様からおいでになるとは思いませんでしたわ」
「それが……このカード、テヌドットから「戦艦ストラシアに関係する物だ」って受け取ったんだけど、何なのかよくわからなくてな……
このカードが光っているのを見つけたから、光が強くなる場所を追って来たんだ。そしたらここに」
それを聞いたローナは心当たりがある様子だった。
「それなら、こちらの扉を開けるカードキーではありませんの?」
それは、二段構造になっている操縦司令室の上段の真下に繋がる扉だった。
戦艦ストラシアの下部は前方から、操縦司令室、飛行機のような座席エリア、上部へと繋がる階段とエレベーター、そして乗り降り口がある。
操縦司令室以外の下には地下室のような大きな物置があるが、上部が広すぎるためほとんど使われていない。操縦司令室の下段はその物置と同じ高さになっている。つまり、操縦司令室の上段の下には入れなかったのだ。
「本当だな…」
セイがカードを扉に近付けると、今までとは比べ物にならない明るさで光を放った。すると扉にもマークが浮かび出た。カードをそこにタッチしろと言わんばかりに。
「ピピッ」
扉がゆっくり開いた。そこにあったのは、1つの椅子だった。そしてそれを囲むようにモニターが設置され、レバーのような物もあった。
「こんなもの…見た事も聞いた事もないですわね……」
ローナは興味津々に観察した。セイはシステムに解説を求めた。
『こちらはーー』
数日後、セイ達はコゥティの居場所を特定することができた。リベルが使用する特殊な魔力、言えば[汚染された魔力]を追えばそう難しい事ではなかった。
「……森だな」
そのコゥティがいるとされる島に1人上陸したセイは、木々の中を突き進んでいった。
(相手はスナイパーだ。相対したら先に気付くのはあちら側、もしかしたら今の時点で既に狙われているかもしれないな。
だがまあ、俺の[物理攻撃完全無効]、[魔法攻撃完全無効]があいつの弾丸にも有効って事は分かっている。それなら早々に行動を開始し【魔弾】を見つける事が最優先になる)
そしてセイの、「今の時点で既に気付かれている」という予感は当たっていた。スコープ越しにセイを狙いながらコゥティは【魔眼】を連続で使用していた。しかしそれはセイのスキルを無効化するためではなかった。
「[多重未来視]……」
(未来視であらゆる世界線を視て、うまくいく方法を探る……!)
そしてセイが森の反対側へ到着し、島を横断しようとした時、コゥティは行動に出た。コゥティはある[魔弾]を装填する。
「[魔弾]、簡易弾薬、ーー」
コゥティが口にした弾丸は、大きな爆発音とともに発射された。セイは音速を超える速度で飛んでくる弾丸を避けられなかった。いや、避けなかった。弾道でコゥティの居場所を突き止める事を優先したのだ。
(どうせ弾丸は俺にダメージを負わせることはできない。そんな状況で弾を撃つなんて……しかも居場所も教えてくれたな)
そんなことを考えながら、セイは島で一番高い山の頂上を睨んだ。その時、
周囲に血しぶきが舞った。コゥティの魔弾はセイの胸元に命中したのだ。そのダメージが無効化されることはなく。
「ぐはぁっ!……なっ?!」
(どういう事だ! なぜ、なぜダメージを受けている!……急いで何かしなければ、次弾が来る……!)
セイは魔力障壁を形成しながら移動し、木の陰に隠れた。
山の上で、弾丸の命中を確認したコゥティはすぐに次弾の用意を進める。
「やはり俺の推測は正しかったわけだ。3000回の試行錯誤を経て、俺はEX神話級の防御を破った……
続けるとするか……
[魔弾]、簡易弾薬……[時空超越弾]」
(奴の物理攻撃や魔法攻撃を無効化するスキル……
あれは、奴に害をなす物体を確認した場合、一瞬だけ時間を巻き戻し、その過程で害をなす物体を、時空もしくは運命の歪みを利用する事でダメージを消していた。つまり、その時空を超越してやればいい)だけの事だ)
「これで奴の行動は制限でき……」
コゥティは大きなミスを犯している事に気が付いた。
(……? 何かがおかしい。なんだ? いつものように[魔弾]を…… !?
回復妨害を付与していない! 普段俺が使っている[貫通弾]や[炸裂弾]、[追跡弾]は、回復妨害機能をデフォルトで付与し、テンプレートとして使っていた……! 今回の[時空超越弾]は簡易的に作った弾丸だ! つまり回復妨害が付与されていないという事は……)
その瞬間、コゥティの後ろから完全に無傷のセイが襲い掛かった。
「痛かったじゃねえかぁ!!! [明光の一刀]!」
金に輝いた[神葬]がコゥティに迫るが、コゥティは身軽に避け、もう一度[時空超越弾]を装填しセイを狙う。しかしセイは仁王立ちのままだった。
「俺は、お前が俺にダメージを与えることができた理由は分からない。どんな手を使ったかなんて知らないし興味もない。だが……
痛みを知った俺は、よりお前達を殺すことに迷いがなくなる……!」
セイの瞳の輝きに、コゥティは違和感を覚えた。しかしその違和感の正体を、コゥティは5秒もしないうちに知ることになる。
セイは空中に浮きあがり指を鳴らす。
「チェックメイトだ。これが戦艦ストラシアの本領……
[魔力強化型超電磁砲]!!!」




