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第65話 創造者権限

 「僕は……あの人がいれば負けることなんて……死ぬどころか、け、怪我する事すら……ないと思ってました……」

 細く目を開けたマーシュは、弱々しい声で話し始めた。

「これ以上喋るな……! 傷が開くぞ」

 木田はうっすらと瞳を潤しながらマーシュに呼びかける。


 「最期に会えたのが……木田さん、あなたで本当に良かった……

 ずっと、僕の面倒を見てくれて……ありが……とう……」

 マーシュは途切れ途切れに、木田に感謝を伝えると、マーシュは動かなくなり、木田はマーシュの身体から力が抜けていくのをしっかり感じた。


 「……」

 木田は、声を上げて泣く事はなかった。ただし、周囲の人々がこぼす全ての涙よりも多くの涙をこぼした。



 一方、海上では、セイとアリスの2人と、数えきれないほどのリベルの大軍が向かい合っていた。セイは[永氷(アイシクル)()支配者(ドミネーター)]で海面を凍らせて作った足場に、アリスと共に降りる。

 サイアンは、セイの50m以上前方に少しずつ降下すると、海面にゆっくり足をつける。ただしサイアンの足は沈むどころか濡れる事すらなかった。


 「お初にお目にかかります。わたくし、セイクリッド・リベル異名持ち序列1位、【調停】サイアンと申します…… 高名なあなた方とお会いできて光栄で……」

 サイアンが自己紹介を終える前に、セイとアリスはサイアンに斬りかかった。2人が前に踏み出してから刃がサイアンの首に到達するまでの時間は、実に0.5秒。これに反応できたのは、サイアンともう1人、


 「カキンッ!!」

 セイの[神葬]とアリスの[妖刀:夜虚]を弾いたのは、1つの短剣だった。

 (これはセルトの物ではない……なら、奴まで来ているのか。ちょうどいい。ここで全員始末できれば最高だな)


 「サイアン、今のは自分でも防げただろう。お前はもう昔のお前ではない。俺はまだ新しい力をまともに扱えないんだ。俺ばかりに頼るのも終わりにしろ」

 そう言ってどこからともなく現れたのは紫と黒の迷彩柄のローブを着、スカーフで顔を隠している男。

 (メーノル……)


 アリスは、メーノルの姿を見るのは初めてだったが、身に纏う洗練されたオーラ、雰囲気、セイの殺意に満ちた眼差しですぐに悟る。

 「奴が……リベル最強の……!」


 「[一縷の月光]」

 メーノルが持つもう一つの短剣から発せられたのは、一筋の光。暗い闇の中で、永遠へと続く月光のような一筋。

 2人がその光を認識した瞬間、そこにメーノルの姿はなく、背後に回っていた。

 「は、速い! 俺が移動を認識できなかった!?」

 セイはあまりの速さに驚愕するが、その隣のアリスは、顔に切り傷ができていた。


 「ッ……!」

 セイは足を強く海面にたたきつけ、目に映る限りの海面を凍結させた。しかしサイアンはそれと同時に後方へと跳んだ。あまりの跳躍力に、2人はすぐに追う事が難しかった。

 なぜなら、2人の周囲にはリベル最強と謳われる【月光】メーノルと、サイアン率いる援軍がいたからだ。


 セイは興奮気味に、アリスに提案する。

 「出番だ。俺がサイアンに迫るまでの5秒稼げるか?」

 「フン、ご冗談を。あの海賊なんてリベルメンバー10人程度の相手で数分かけてますが、私なら1秒で殲滅してみせましょう」

 アリスはしれっとヌイトを皮肉りながら応える。


 「行動開始!!」

 セイは一瞬で前方へ踏み出す。ほぼ同時にメーノルが止めに入ったが、アリスの刀によって防がれる。

 「行けええ!!!」

 「死んでも奴を殺せ!!」

 周囲から怒号が飛び交い、リベルメンバーの矛先がアリスへと向き、迫る。


 アリスは納刀する。

 ([静夜(グランド・スラスター)]は対象の性質を無視して切断するというスキルだが、その本質は、斬った箇所を完全に消失させ、あたかも切断したように見えるという物……それを応用した形が、[龍神化]についてきたこの正体不明のスキルなのだろうな。

 あの声の主が一体何者で、何を目的にこのスキルを私に授けたのかどうかは分からない。でも確定していることならある。それは、

 私はこの力でもっと強くなれる!!)

 アリスは大きく目を開く。納刀したアリスを見て好機だと感じたリベルメンバーは一斉に襲い掛かる。

 「今だ! 武器を納めて、俺達を舐めたこと後悔させてやる!」


 「[創造者権限:滅]!!」


 「……!」

 何かを察知して離れていたメーノルは絶句した。なぜならメーノルが目にしたのは、まるで、まるで、

 ()()()()()()()()()()のような存在だったからである。


 アリスがそのスキルを発動させた瞬間、アリスの足場となる凍った海面も、20人はいたリベルメンバーも、アリスの周囲の空気すら、()()()()()()()。それによりアリスの足元はクレーターのように丸く海水が消えていた。窪みが飲まれ、平面に戻った海面から跳ねる水しぶきを浴びながら、宙に浮いたアリスはメーノルを睨んだ。


 その瞬間メーノルは、人間ながらも本能で感じた。

 「絶対に、高位存在に逆らってはならない……!!」


 冷や汗をかいたメーノルは、一瞬、視界からアリスが消えたことに気付く。

 「ッ……!」

 メーノルの背後にまわったアリスは、首に[妖刀:夜虚]を斬りこむ。メーノルはなんとか短剣を出して防ぐが、衝撃で左腕に力が入らなくなってしまっていた。


 一方、セイはサイアンを追っていた。サイアンは浮遊のスキルでもあるのか、海上を凄まじいスピードで飛び回る。

 (誘導されているな……)

 セイは、サイアンの逃げ方が妙だと疑い、一度足を止め周囲を見渡す。すると、ギリギリ目視できる程度の光が、セイの目に留まった。

 「!?」


 セイは咄嗟に反応するが、避けきれずに肩に弾丸が命中した。スコープで命中を確認したコゥティは、サイアンがセイにトドメを刺す瞬間を見ようとする。しかしそこには無傷のセイがスコープ越しにこちらを睨んでいた。


 「[物理攻撃完全無効]、なかなか効果を信じられなかったが、これで証明されたな」

 セイはゆっくりと[神葬]を構える。それを見たサイアンは、細く閉じた目を少し開けた。

 「……セリス、ですか。あなたに心を開いたのですね。彼女が幸せそうで何よりです」


 それを聞いたセイは、頭に怒りがこみ上げた。

 「セリスを騙した連中が、今更何を言っている!!! 貴様らはセリスを殺した! 二度とその口からセリスの名を呼ぶな!!」

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