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第63話 開戦

 「なら大丈夫でしょう。奴らはおそらくリベルの戦力集中点、つまり戦場にいることでしょう」

 ブリヌダースは微笑み、タブレットで周辺の図が表示された。

 「作戦については……

 まず、我々の先駆隊が具体的なリベルの戦力配置を把握し、それを直ちにこの船へ送信します。その後、ストラシアとトスコリカ軍の本隊が左右に広がり、包み込むように進行します。それと同時に、戦艦ストラシアは中心から攻撃を仕掛けていただきたいのです」


 アリスはすぐにそれを理解した。

 「我々総出で敵軍を包囲し、この船で攻撃する。という事ですね。分かりました。ローナ、できそう?」

 ローナはタブレットに映し出された図を凝視した後、答えた。

 「ええ。不可能ではありませんが、できれば戦艦ストラシアの攻撃前に、戦闘機と個人のスキルで先制攻撃を仕掛けてほしいですわ」


 ブリヌダースは、少し考えた後、ローナに尋ねる。

 「それは……理由を伺っても?」


 「ええ。

 これまで、リベルは海洋次元にて大規模な襲撃を繰り返し行ってきたと聞きましたわ。それならリベルも本気……つまり異名持ちの参戦も大いに可能性があります。

 この船はセイ様の保護により、ある程度の攻撃は防ぐ事はできますが、相手が異名持ちともなれば、話が変わってくるのです。なので先に異名持ちの存在の確認、願わくば先に討伐しておいていただきたいのです」

 それを聞くと、アリスはすぐに名乗りを上げた。

 「なら私とミカが行くよ。海上での動きは、マーシュが支えてくれるしね」

 そう言ってアリスはマーシュに視線を送ると、マーシュは緊張した面持ちで頷いた。


 「では、この作戦でよろしいですね?」

 「はい! ぜひこの船の滑走路も利用してくださいね!」


 「感謝します!」

 ブリヌダースは笑顔で礼を言うと、後ろのトスコリカ軍に指示を出した。

 「では、行きましょうか」


 トスコリカ軍はそれぞれの戦闘機に、ローナは操縦指令室に、アリス、ミカ、マーシュは屋上にて各々の武器を構える。

 それぞれが付けたインカムに、ローナの声が響く。

 「戦艦ストラシア、進行開始しますわ!」

 するとブリヌダースの声も聞こえた。

 「包囲網は完成しました! 戦艦ストラシアの先導を開始します!」


 連合軍の包囲網はバイデント状に、海の上に広がった。

 マーシュは、[大地の支配者(アース・ドミネーター)]で海底から、岩の柱を何本も立てた。そのうちの数本はリベルの船に直撃し、沈没していった。

 十分な数の柱が出来た事を確認したアリスとミカは、戦艦ストラシアを跳び立ち、戦力の確認へ向かった。


 「やつらが来たぞぉ! 構えろ!」


 その先には、多くの船が浮かんでいた。


 「デッドアイ様! やつらが、ストラシアとトスコリカが来ました!」

 リベルの下っ端が慌てて呼びかけたのは、異名持ち序列三位【魔弾】コゥティだった。

 「……まだだ。その時までは、お前達が対処しろ」


 「は、は!」

 勢いだけは良く返事した下っ端は、甲板に走って行った。コゥティは周囲に誰も居なくなった事を確認すると、一人乗るのが限界なほど小さなボートに乗り込んだ。

 そして一つの小さなボートが戦場を離れている事に、誰も気付かなかった。

 同時に、リベルを包囲した戦闘機から次々と攻撃が行われた。それにより、リベル側のほとんどの船は逃げられない状態になり、反撃のタイミングを伺うしかなかった。


 「遠距離攻撃ー、はじめ!」

 リベルのそれぞれの船から魔法が放たれ、上空を飛ぶ連合軍の戦闘機に向かった。

 しかしその全ての攻撃魔法は、ミカの重力魔法によって押し潰された。

 「カバーします!」


 その頃、アリスは順調にリベルの船を真っ二つにしていく。トスコリカ軍の軍艦から放たれる魚雷が、リベルの船に着弾するよりも前に。


 インカムから再びローナの声が聞こえた。

 「戦艦ストラシア、殲滅開始! 先駆隊、退避!」

 アリスとミカは直ちに前線を離れ、ストラシアに戻った。

 「今の所、異名持ちの姿、気配はなし!」

 ローナはそれを聞くとすぐに、ストラシアの全武装を展開した。

 その瞬間、数え切れない程のミサイルと弾丸が、リベルの船が浮かぶ海へと降り注いだ。


 「ここは海の上だけど、炎が……地獄みたいだ……」

 アリスは、戦艦ストラシアの恐ろしさを初めて理解できたような気がした。


 するとブリヌダースが操縦指令室に入ってきた。

 「今の攻撃により、リベルはほぼ壊滅。残った者も数名程度なので、こちらで対処可能です。

 つまり、作戦成功です!」


 「よっしゃああ!!」

 「見たか野郎どもー!」


 ストラシアとトスコリカ、両者が大きな喜びに浸っていた時、戦場から十数キロメートル離れた海上、一つの小さなボートが波で揺れていた。

 「[魔弾]、[貫通]、[解呪不可]……」

 戦艦ストラシアに向けられた黒いライフルは、揺れる波の上で、静止していた。

 「……黄泉送りだ」


 「バァァン!!」


 弾丸は紫の光を帯びながら、音を超える速さでストラシアに迫った。

 紫の弾丸が戦艦ストラシアに衝突しようとした時、()()()()()()()()()()


 「……?」

 何も声を発せず倒れたのは、マーシュだった。

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