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第61話 古代の異名

 アリスが戦艦ストラシアの武装設備を確認しているのと同時刻……


 第一、都市次元・神話会リーンカム支部・地下牢獄


 「コン、コン、コン……」

 コンクリートに囲まれた薄暗い廊下に、足音が響き渡る。


 「……何の用です」

 クラークは、部屋の隅に座り顔を上げることなく足音の主に声をかけた。

 「いやいや、あなたが「私たちの秘密」を話してしまっていないか確認しに来ただけですよ」

 足音の主の男は細い目でクラークを睨んだ。


 「はぁ……話してたら私の頭は既に散ってますよ。相変わらずいい性格していますね。

 異名持ち序列一位【調停】サイアン殿」

 クラークはため息を吐いた。


 「実はもう一つ……お知らせがございまして」

 するとサイアンは細い目を少し開けた。

 「海洋次元での戦、わたくしも参戦する事にしました」


 しかしクラークはその言葉が意味する事にすぐに気付かなかった。


 「……? あなたは戦闘は苦手なはずでは?」


 サイアンは不敵な笑みを浮かべる。

 「わたくしを含める異名持ちの上位三名が、()()()()を手に入れたと言ったら?」


 サイアンの話を最後まで聞かずとも、新たな力と聞いた途端、クラークは背筋が凍りついたような感じがした。そして慌ててサイアンを問いただした。

 「まさか【古代の異名】を?! あれは私とセリス、それとサラットが復活に反対していたはずだ! なぜそう勝手なことを!」


 その瞬間、クラークの目の前にいたサイアンは姿を消した。

 「セリスが死にました」

 クラークの耳元でサイアンの声がはっきりと聞こえた。サイアンは牢の中に瞬間移動したのだった。しかしクラークはその事の深刻さを誰よりも理解していた。

 「その力……! まさか既に!」


 クラークの問いかけを無視したサイアンは、牢の壁へと歩き出した。

 「それに……敗者の意見は無意味な物です。まあ、サラットはよくやってくれましたよ。今頃、計画の次の段階に進むため、遊楽次元に向かっている頃でしょうか

 どちらにせよ、もうあなたには関係ないですね。


 さようなら」


 その瞬間クラークの視界が地に落ち、赤い血が地面を侵食していた。


 その後、終身刑を言い渡された元異名持ちが牢の中で首を切断されて見つかったというニュースが広まるのは、数時間後の事だった。



 一方、海洋次元のストラシアでは参戦の準備が進められていた。

 「ふう……対空ミサイル、ガトリング砲……大丈夫そうね。ローナ、これらの武装設備って操縦指令室から操作できる?」

 アリスはローナと共に武装設備の確認を行っていた。

 「できない事はないかと思いますわ。でもベルクリア研究所の最新技術を詰め込んだ傑作ならもっと武装設備が多くてもおかしくないと思いますわ」


 アリスは既にストラシアの武装設備は全て見て回ったはずだと主張した。

 「ストラシアの武装設備はすべて確認したはず。ガトリング砲やミサイル等は、後方に集中していて、前方は戦においては空母の役割を担っていたみたいだし大規模な武装設備はなかった……」


 「今はこれらを使うしかなさそうですわね。個人個人のスキルも重要になりそうですわね……それと、一時的にでもワタクシを執行者にしていただいて感謝いたしますわ」

 ローナはアリスに執行者に選んでくれたことを感謝すると、操縦指令室に戻っていった。


 「ローナの仕事はあまり変わらないもんね」



 すると、アリスは広場でゆっくりしていたマーシュを見つけた。

 「休んでるところ悪いけどちょっといい?」


 「? はい、なんでしょう」

 マーシュはゆっくり立ち上がると、アリスに尋ねた。

 「マーシュのスキルって、岩や地面を操るんだよね?」


 マーシュは小さな岩のかけらを手のひらに生成してみせた。

 「そうですよ。なので今回の戦争はあまり活躍できないかもしれません……辺り一面海ですし……」

 するとアリスは自信に満ちた表情を見せた。

 「じゃあさ、海底を操る事ってできる? 一応は地面だし」


 マーシュは少し考えこんだ。

 「少し強引な気もしますが、やってみないと分かりませんね」


 2人は屋上に出ると、目を合わせてうなづいた。

 「では、やってみます……」

 マーシュは海面、ではなくその奥深く、海底に向けて手を伸ばした。

 「大切なのはイメージ……」

 マーシュは目を閉じ、テヌドットからの教えを思い出した。


 「俺のスキルは[支配者(ドミネーター)]系ではない。しかし有識者から聞いた話では、スキル発動時、自身がそれを操る場面を頭の中でイメージすると、より繊細な支配ができる。と。

 [支配者(ドミネーター)]スキルではイメージが大切なのだと、それを持っていない俺でも分かったのだ」

 テヌドットがマーシュに話したのは、【雷撃(エレクトリック)()支配者(ドミネーター)】木田真一郎から聞いた事だった。


 その瞬間、マーシュは自身の魔力が海底に流れ込んでいくのをしっかりと感じた。

 「……くる!」

 すると海面から、大きな水しぶきを上げて岩の柱が飛び出した。細い岩の頂上では小さな魚がぴちぴちと飛び跳ねていた。

 大きな岩の柱は、戦闘機の操縦訓練をしている上空のストラシア軍からもよく見えた。


 「これは……今回の戦争、マーシュも大いに活躍できそうだね」

 アリスはマーシュに、笑顔で親指を立てた。

 「はいっ!」


 数分後、ローナを含む、参戦可能な執行者4人が会議室に集まった。

 アリス、ミカ、マーシュ、ローナである。

 アリスはミカに軍の訓練の様子を尋ねた。

 「戦闘機の操縦の方は順調?」

 急な会議だったためミカは、資料を用意できなかったが、状況は口で説明できるほどだった。

 「滑走路が限られているので全員は無理でしたが、第一から第三部隊は大方扱えるようになりました。魔力で操縦できるみたいなので、飲み込みは早かったですね」


 「分かった。スキルの活用も含めたら十分ね。ローナにはミサイル等の発射権限を任せる。私の命令がなくても自分の判断で発射して大丈夫だよ。

 マーシュは私と一緒に直接攻めるよ。なるべく継続的に柱を作って足場を確保しながら攻め込みましょう。

 それじゃあ、準備は整ったね?

 ストラシア、参戦!!」


 「「「はっ!」」」

 ローナは走って操縦指令室へ向かい、トスコリカに参戦準備完了の連絡を入れた。

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