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第60話 A-F2型

 海洋次元のとある孤島、そこの小さな洞窟はリベルの前線拠点となっていた。洞窟へ駆け込むリベルメンバーが叫んだ。

 「デッドアイ様! ご報告が!」


 「……その呼び方はやめろ。


 意味が変わってしまうだろう」

 デッドアイと呼ばれた初老の男は、黒く光る自身の武器を手入れしながら落ち着いた様子で部下を睨んだ。

 「はっ! すみません! 実は、トスコリカ上空に巨大な飛行船が滞空しておりまして!」


 「……奴らも遂に動き出したか。出陣だ。準備しろ」

 男はほとんど何も聞かずに立ち上がると、手入れをしていた武器をしまった。

 「了解しました! あっ、それと……奴ら、とは?」


 「史上最もリベルを殺した奴らだ」

 男の瞳は紫に光り、全てを見透かしているかのようだった。




 「大量の戦闘機?」

 アリスは、自身が率いる第一部隊の訓練中、ミカからの朗報を受け取った。しかしアリスはそこまで大きなメリットとして捉えることはなかった。

 「トスコリカ軍の特殊戦闘機みたいに魔力を活かした、スキルに対抗できる物ならまだしも、それは……」


 しかしミカは笑顔を崩さない。

 「いえ! それが、その戦闘機は玩具のように小さかったのが、魔力によって通常の戦闘機の大きさまで巨大化したんです! 魔力を使うって事は普通の戦闘機ではないはず!」


 「……え? そんな物がこの船に?」

 アリスは思わず動揺し、ミカは目を輝かせる。

 「はい!」


 「あなた達は次のメニューに進んでおいて。見に行くよ、ミカ、案内して」

 アリスはミカに案内を求め、滑走路横の物置に着いた。

 「あれ……? ヌイトがいない…… ヌイト! スコット・ヌイト!」

 ミカはヌイトの名を叫び続けるが、返事は返ってこない。


 「第五部隊の訓練にでも行ったんじゃない?」

 特に深く考える事はなかったが、ミカはそうではなかった。

 「そういえばヌイト、この次元に来てからテンションが低かったな……」


 「元からでしょ? あいつはストラシアに来てからずっとあんな感じじゃん」

 アリスはヌイトの性格を知ってはいたが、あまり気に留めていなかった。


 「だとしても海洋次元にきてからより一層……静かで真面目だった。まるで強い怒りを抑えてるみたいだった」

 しかしミカはヌイトの様子をしっかりと見ていた。

 「ま、故郷に来たら誰だって何か思うものなんじゃない? 私たちを除いて」


 アリスは特に気にすることなく、小さな戦闘機に魔力を込める。するとみるみるうちに大きくなり、人が2人乗れる程の大きさの戦闘機になった。

 「なるほどね、これは使えそう。試してみようかな」

 アリスは、戦闘機が入れられていた箱に一緒に入っていたデータを取り出して確認すると、戦闘機に乗り込んだ。


 「ふーん……[A-F2型]ねぇ。ここをこうして……」


 戦闘機のエンジンから炎が轟音とともに勢いよく吹き出た。ミカはあまりに大きな音に耳をふさいだ。

 「僕がいるのにエンジンをかけるなんて!」


 アリスが乗った[A-F2型]は滑走路を走り、飛び立った。

 「はぁ……」

 10分ほど飛んだ後、戻って来たアリスは、フラフラだった。

 「ちゃんと飛べた。けど……ちょっと私には……合わないな」


 アリスはゆっくりと倒れた。



 「うーん……」

 アリスは船内のベッドの上で目を覚ました。するとスキルの調整をしていたのかシステムと話していたミカがアリスを覗き込んだ。

 「起きたか。ヌイトもセルトもまだ見つかってないよ」


 「そっか……まあ、だろうね。目も覚めたし、セイ様にセルトの事話してみるよ。ヌイトはまた後で話すよ。でも見つかるまでは、ローナを一時的に執行者として活動させて」

 アリスはそう言って[念話]を発動した。


 「もしもしセイ様! セルトがどこにもいません! 次元間渡航の時はいたのに!」


 「え?」


 「隅々まで探しました! もしかしたら船のどこかに我々の知らない空間があるかもしれませんが……」


 「だとしても……ジジッろう。問題がどんどん増え……いくな……

 ひとまず、今はセルトがいなジジッても回るのか?」

 念話は不安定ながらもアリスとセイを繋げた。


 「はい! それは大丈夫です。今はローナを一時的に執行者として当たっています」


 「分かった。こっちも会議は終盤になって来たところだ」


 アリスはかすかに聞こえたセイの声を思い出した。

 「そういえばセイ様、何か言おうとしていましたよね。何かあったんですか?」


 「ああ。アリス達が参戦するジジッ、戦争の敵側……の正体が分かったんだ」


 しかしそれが判明する場面に立ち会ったアリス達はその正体を知っていた。

 「リベル……ですよね?」


 「?……よくわかったな」


 「きっと更新された情報で見たのでしょう。その捕虜を確保したのは、我々ですから」


 「えっ?! もう参戦したのか?」

 セイは慌てて尋ねた。


 「あまりに大量の魔法が飛んでくるので……多分戦争の最前線に出たからだと思います。トスコリカの次元首とも会って、先ほど正式に参戦しました」


 「分かった。ぶちかましてやれ!」

 セイは勢いよくアリスに命じた。

 「はっ!!」


 念話が切れると、アリスは起き上がり、ミカと共にストラシアの軍を集めた。

 「数が足りなければ一部でいいから、この戦闘機が扱えるよう訓練しておいて。

 私は……戦艦ストラシアの武装設備を確認してくる」

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