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第55話 天井の大きな穴

 周囲の目線はセイに集中していた。

 「話は終わったか?」


 「あぁ。さっきトスコリカの王と話したって、これから本格的に参戦するみたいだ。相手がリベルならやりやすい。任せておけ」


 テヌドットはユナを見て、

 「その通りだ、今はストラシアに任せて、我々は最後の議題へと移ろう」


 「[聖神路典]の著者か! たしかに、神域の場所などの世界の事ややスキルの情報など、まるで世界を外側から見た者が書いたような代物だからな!

 それで、一体誰が書いたんだ!? やはり神なのだろうか!」

 ドウガルーノは意外にも興味があるようだった。


 「結論から言わせてもらいましょう。[聖神路典]の表紙に書かれた名前、すなわち著者は……


 「アインシトル」です」


 テヌドットはいきなり大きな情報を叫んだ。

 「どういうこと!?」

 「そのアインシトルは神なのか?!」

 「ていうかストラシアのリーダーの姓ってアインシトルだったよね? 末裔とかそういう事かな……」


 一瞬で会議室に様々な意見が飛び交ったが、どれも予想に過ぎなかった。


 「静粛に」

 テヌドットは場を静めると、説明を続けた。

 「アインシトルが神なのか、それとも偉業を成し遂げた人間の冒険者なのか、それは[聖神路典]を7割解読した今でも分かっていません。恐らく、これからも分かる事は無いでしょう」


 「ただし、1つ確かな事は、セイ殿の姓に深く関係している、という事です。その真相を確かめる為には、セイ殿の母親、アルカ・アインシトルを捜し出す必要があります」


 「ではそのアルカ・アインシトルがどこにいるかの検討はついているのですか?」

 ヲウルトは冷静にテヌドットに尋ねたが、テヌドットは首を横に振った。


 「これ以上多くの事に人員を動員すると、人手が足らなくなってしまう……どうしたものか……」


 「ストラシアは戦闘要員以外にもそれぞれの得意分野を活かしてもらうようにしている。それに適したスキルを持つ者もいるかもしれないが、海上戦争に参加している以上、リベルに勝ってからでなければならないな」

 セイはアルカの捜索に比較的協力的だった。

 「それは助かるな。では、こちらでもできる限り人員は確保しておこう。

 さて、今回の神話会会議は以上です。会議、というよりは研究発表のようになってしまいましたね。また、地球次元についてなど、次回へ持ち越す課題もあるため、それぞれ改善案などをお待ちしております。では、改めまして、ご出席ありがとうございました!」


 テヌドットが深々と礼をすると、拍手が空間を包み込んだ。


 「さて……テヌドット、そろそろいいか?」

 他次元の代表者達が退出し、会議室にはセイとテヌドットの2人だけとなった時だった。

 「ああ。上の奴、そろそろ降りてきたらどうだ?」


 「はぁぁ……バレていたの?」

 爆音と共に天井の一部が崩れ落ちた。そこには、1人の女性が立っていた。

 「静音結界も侵入防止の保護結界も何もないから聞いて良い話かと思っちゃった?」


 「セイ……こいつ……!」

 「……お前、異名持ちだろ」

 2人は、その女の風貌からは考えられない結論を出した。


 「あら、何故そう思ったの?」

 「確かにお前は魔力や気配を隠すのが上手かった。きっとそれで終わっていたら俺もセイも気付かなかっただろう。ただな……」


 「魔力を使用しない探知機にお前は引っかかったんだよ!」


 「え?! そんなのあったの?!」

 その女が反応する前に、セイは驚きの声を上げた。

 「結界もないし空気中の魔力の流れも特におかしくなかったから、お前が何か特別なスキルを使ったり、何か特別な方法を使ったのかと思ったぞ……」


 「はぁぁ……今回の会議は急遽開催したものだから、関係ありそうな者全員に招待を送ったんだ。セイもその内の1人だな。

 ただ、一気にかなり多くの場所に招待を送ったから、リベルなど敵対勢力に情報が漏れ出る可能性はかなり高かった。だから、あえて結界も何もおかず、リベルをおびき寄せて、魔力の波長で存在がバレない、魔力を使わない探知機をベルクリアから持ってきたんだ」


 「そんな便利な物あるんだな……」

 セイは、

 (スキルで探知する時も、俺の場合は自分で指定しないと魔力の波長でバレてしまうからな……ま、自分で指定さえすればそれもないけど)


 その女は首を傾げた。

 「でもそれは私が異名持ちであるという理由にはならないんじゃない?」


 するとテヌドットは続ける。

 「それは……お前の容姿が、[聖神路典]に書いてあるデータとほぼ同じだからだ」

 その女は、ボサボサの水色の髪、大きなクマがある目、ボロボロの茶色のロングコートを着て、全体的に元気がないように見えた。


 「へぇ〜……そんな事まで書いてあるの?

 ますますそれが欲しくなるわね」


 テヌドットはアミリクスとゾルディクスを、セイは神葬を構える。しかし、

 「いつか私達は決着をつけることになるでしょう……でもそれは今じゃない」


 室内にも関わらず風が周囲に吹き荒れ、2人が一瞬目を瞑ると、そこに女の姿はなかった。


 「私は異名持ち序列4位、【悲哀】サラット……よろしくね」


 声だけが響き、何事も無かったかのようにサラットと天井の瓦礫は消え去った。しかし天井には大きな穴が空いたままだった。

 「瓦礫片付けるなら天井も直していけよ!」

 テヌドットはツッコミをするように叫んだが、返事はなかった。

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