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第54話 行方不明の執行者

 ヲウルトが手を挙げた。

 「主要次元連盟に加えるという事は、システムとスキルを導入するという事ですよね? 地球には一部の地域で戦争が続いていると聞いています。もしそんな状況でシステムやスキルを導入させてしまうとそれが悪化してしまうのではないですか?」


 ドウガルーノは大きく頷いた。

 「たしかに、その点で考えると今の地球はスキルを導入するには問題点が多すぎるな!」


 するとアントンは堂々と自分の意見を述べた。

 「等級が高いスキルは滅多に出ないのですよね? 特に神話級以上は。

 なので、スキルを導入した後、神話会の方々に過度な戦闘を鎮圧していただきたいと思っています。ただ、これはあくまでお願いなので……」


 テヌドットはそれを初めて聞いた様子だった。

 「確かに我々は1人1人が強力なスキルを所有していますし、できる限り協力するつもりでもいます。しかし……」


 「全ての戦争を鎮圧することはほぼ不可能でしょう。なにしろ人数が足りませんし……

 きっと数人で戦闘を止めても、別の場所で起きる戦闘に間に合わないでしょう」


 テヌドットが現実的な意見を述べると、アントンは黙り込んで考え出していた。しかし代案を早く出したのはテヌドットだった。

 「では、一か八か天使族に協力を求めるのはどうでしょう」


 「天使族?」


 セイのリベルシステムが反応したのか、解説を始めた。

 『天使族は、第3、神聖次元の先住種族で、人口は数十万人と比較的小規模です。しかし寿命が長寿種族の代表格であるエルフ族より圧倒的に長く、光属性魔法の適正が非常に高いことに加え、概念崩壊以外の攻撃を全て無効化するという戦闘面においてかなり強力な種族ですが、あらゆる対立において中立を保っています』


 説明を聞いたアントンは不安そうにテヌドットに尋ねた。

 「そんな種族に助けを? 大丈夫なのですか?」


 「……分かりません。だから一か八かなんです。「主要次元連盟の秩序を破る者達がいる」といえばもしかしたら……といった感じで、正直、協力を得られるのは10%といったところでしょうか……」


 するとアントンは思い出したかのようにセイの方を向いた。

 「ストラシアなら……!」


 しかしセイは無情にも首を横に振った。

 「俺達の目標はリベルの壊滅……しかも人数が少ないのはストラシアも大して変わらない。それに今は海上戦争に集中している」


 「具体的な解決案はほとんどなしだな! 天使族からの協力もほぼ無理だろう!」

 ドウガルーノは状況をそのまま理解し声に出したが、それはアントンを絶望させてしまった。


 テヌドットはため息を吐いた。

 「言い方はもっとあるが、それも間違いではない……具体的な解決案がでなかった今、地球の主要次元連盟加盟は先延ばしだな」


 「……」

 アントンは絶望とともに悔しそうだったが、それも仕方ないことだった。


 「さて、次はセイ殿の口からも出た、海上戦争について……」


 「そもそも海上戦争とは何なのかについて解説させていただきます。海上戦争は数日前に、第7、海洋次元で突如勃発した戦争で、トスコリカ軍が正体不明の敵と戦っています」


 すると、ヲウルトは

 「ストラシアがトスコリカ軍から援軍要請を受けて向かったと聞きました。それは本当ですか?」

 セイは頷くと、一応テヌドットに尋ねた。

 「やっちゃだめだったか?」


 「まあ、今の所敵側の正体は分かっていない。すぐに援軍を送ったのはよくなかったが……」


 その瞬間、ドアが勢いよく開いた。

 「会長様! 海上戦争の敵側の情報が更新されました!」

 神話会の職員だろうか。慌てて会議室に入って来た。

 「なにっ?」

 「こちらです!」


 テヌドットはそれを読み上げた。

 「拘束した捕虜からの情報を更新します。

 トスコリカに攻撃を仕掛けたのは、セイクリッド・リベル。目的は、トスコリカ研究開発所のメインサーバーに接続されている[データチップ]と推測される。リベル側は上空は戦闘機、海面は戦艦、海中は潜水艦にて襲撃を繰り返し実行している。スキルのような物を使う場面も記録されている。数は推定5000。異名持ちの目撃情報は今の所なし」


 「やっぱリベルだったんだ~」

 すると、ずっと携帯をみていたユナが突然立ち上がった。

 「これで、私も参戦できるでしょ?」

 ユナは伸びをしながらテヌドットに視線を送った。


 「……ストラシアが対応している。それに最後の議題は、リベル対策のカギになる可能性が高い」


 そんな中、セイはアリスに念話を繋げようとしていた。

 (参戦はなるべく避けろって言ったからな……これからは存分に暴れてもらおうか……)


 そして念話を繋げた時、セイは奇妙な事を耳にした。

 「ああ、アリス、敵側の正体が……」

 「ジジッ……イ様! セルトがどこにもいませ……ん! 次元間渡航の時はいたのに!」


 「……え?」


 アリスの説明によると、次元間渡航の後、海上に船を留めて戦争の準備をしていた所、いつの間にかセルトがどこにもいなくなったらしい。

 「隅々までジジッ、探しました! もしかしたら船のどこかに我々の知らない空間が……ジジッ」


 「だとしても戻ってくるだろう。問題がどんどん増えていくな……

 ひとまず、今はセルトがいなくても回るのか?」


 「はい! それは大丈夫です。今はローナを一時的に……執行者として作業に当たっていジジッ……」


 (流石だな。アリスだけでもストラシアはしっかり活動できそうだ。ただなんか接続が悪いな……)

 「分かった。こっちも会議は終盤になって来たところだ」

 するとアリスはセイが何か言おうとしていたことを思い出した。

 「そういえばセイさ……何か言おうとしていましたよね。何かジジッ…んですか?」


 「ああ。アリス達が参戦する海上戦争の敵側の正体が分かったんだ」

 「リベル……ですよね?」


 「?……よくわかったな」

 セイはアリスが既に敵の正体を知っている事に驚いた。

 「きっと更新された情ほジジッ……で見たのでしょう。その捕虜を確保したのは、我々ですから」


 「えっ?! もう参戦したのか?」

 セイは参戦が早すぎると思ったが、

 「あまりに大量のジジッ、魔法が飛んでくるので……多分戦争の最前線に出たからだと思います。トスコリカの次元首とも……会って、先ほど正式に参戦しました」


 「分かった。ぶちかましてやれ!」


 「はジジッ……」

 アリスが勢いよく返事をしたと分かると、セイは念話を切った。

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