第49話 獄炎の支配者
「そろそろですかね。セイさまぁー!!」
アリスの声が船内に響き、ドアの1つからセイの頭が飛び出した。
「もうすぐ着くのかー?! 準備はできたぞー!」
セイもまた大声で返すと、部屋から出て会議室へと向かった。
セイが席に着く頃には、ヲウルトを除く5人の執行者が集まり、席に着いていた。
「よし。全員いるな。では始めよう」
セイは長い机に手を置き、宣言した。
「ま、もうそろそろ到着するんだよな? アリス」
セイはアリスに視点をおくると、アリスは頷いた。
「はい。間もなく神話会本部がある神聖次元の首都、[聖地ルサリナ]に到着します」
「では、早速本題から入ろう。まず、俺はここで一旦船を降りる」
セイは、全員知っていると思って話したが、セルトとヌイトは全く知らなかったのか、とても驚いた様子だった。
「ああ……ごめん。言ってなかったか。実はこの次元に来たのは、テヌドットに呼ばれたからなんだ」
セルトはセイに尋ねた。
「じゃ、それで呼び出されたのが神話会本部って事すか? 随分偉そうに呼び出すっすね!」
「フッそうだな。確かに偉そうだ」
ヌイトは腕を組み、大きなため息をついた。
「あっごめん。話が逸れたな。えっと……それで呼ばれたのは、[神話会会議]だ。主に神話会メンバーで構成されるこの会議に、俺が招待された。俺のスキルに何か関係するようだ。こちらは俺が行かなくてはならない。だが……」
ミカは状況を理解した。
「戦争への参加は、セイ様は必要ない……という事ですか? すいません、言い方がよくありませんでした」
ミカは速攻で謝罪したが、セイは全く気にしていなかった。それどころか、その説明に満足した様子だった。
「そういう事。だから、俺が戻るまで一切の指揮権をアリスに譲渡する。指揮は任せたぞ、アリス」
「それと、戦争については海洋次元で行われている事以外情報がない。ひとまず最初は状況が分かるまで過度な干渉は控えるように。俺も何か分かったら連絡するようにはするから」
セイは皆に、慎重に行動するようにと伝えた。
「俺からは以上だ。何か用件がある奴は?」
するとマーシュがゆっくりと手を挙げた。
「よ、用件って程じゃないけど、神話会って意外と変な人が多いから気を付けてね……」
セイは苦笑いして応えた。
「まあ、確かに……
じゃあ、行ってくるよ」
船を降りたセイは久々の単独行動だったが、神話会本部は目の前だった。セイは初めての神話会本部と、久々の単独行動にワクワクしていた。が、その時、上空から隕石の様な燃える何かがセイに迫ってきた。
「……え?」
セイは咄嗟に[神葬]を抜き、氷の盾を生成してそれを防いだ。
「これ、人だな」
セイはその炎から感じる気配を強く感じていた。
「おうおうおう!! よく防げたな!
でもまだまだ! オレの[獄炎の支配者]を食らいやがれ! [永氷の支配者]!!!」
炎の中から姿を現したのは、見るからに熱血系な女だった。しかしセイはそれ以上に気になった事があった。
(え? 今俺の事[永氷の支配者]って呼んだ? 今頃珍しいな……)
「[爆炎]!!」
しかしセイがそんな事を考えている間に、[獄炎の支配者]を名乗る女はスキルでセイに襲いかかった。女が指を指した場所が爆発し、勢いよく炎があがった。
もちろんセイは黙っていなかった。
「いきなり何するんだ!! [究極者]、体術!!」
セイは剣を持ったまま、凄まじい速度で女との距離を縮めた。
「なっ?!」
一瞬で距離を詰め、セイは剣を振った。
「[明光の一刀]」
「氷の野郎に負けてたまるか!!」
突然女はそう叫ぶと、自身の手を爆発させ、その反動でセイから離れ、攻撃をギリギリでかわした。
「まだまだぁ!! [支配権能]!!」
すると大きな青い炎がセイを包み込み、その左右に炎の竜巻が現れた。
「どうだ! その炎はどれだけ冷やしたって消えない、超高温の炎だ!! 氷で太刀打ちできる訳がねぇ!!」
その時、セイはある事に確信を持ち、そして不敵な笑みをこぼした。
「そうか、では、見せてやろう。神話を超えた者の力を!!!」
「[特級支配権限]!! [支配権能上書き]!! 続けて[赤血の鳥籠]!」
その瞬間、炎の勢いは大きく弱まり、遂には消えてしまった。そして女の手足を赤い鳥籠が覆った。
「なんだこれ!? 取れねぇ!」
女はしばらく抵抗を続けたが、鳥籠から斬撃が放たれると、大きな悲鳴を上げた。
「ザシュッ……」
「うわあぁぁ!!! 手……明足がぁぁ!! オレの手足がぁぁぁ!!」
女はその場に倒れ込むと、気絶していた。
「一応死なせはしない」
セイは[運命の支配者]を使い止血し、応急処置を施した。すると、
「遅かったか!」
今度は見るからに脳筋のマッチョな男が歩いてきた。セイは先ほどのこともあり警戒したが、襲ってくることはなかった。
「ウチのレヌベータが迷惑をかけたな! 俺はドウガルーノ! [闘神降臨]を持っていて、レヌベータと神話会に所属している!」
ドウガルーノは全身の筋肉をセイに見せつけながら自己紹介した。
「安心しろ! お前を逮捕したりはしない! 彼女はいつもケンカっ早いんだ! 特に昔から[永氷の支配者]にはよくケンカを売ってるんだ! 炎を操る以上、氷には負けたくないのだろう!」
セイは立ち上がった。
「だとしても俺は[運命の支配者]だぞ…… よくケンカを売ってこられるな」
レヌベータは気を失ったままだったが、ドウガルーノが答えた。
「それはおそらく彼女がそのことを知らないからだろう! 彼女は昨日まで魔王次元で監視の任務にあたっていた! かなり長く勤めていたから知らないのも無理はない!」
「そうか。ところで俺も会議に呼ばれてるんだが、その会場はここか?」
セイはドウガルーノに尋ねると、彼は大きくうなずいた。




