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第48話 一人前になったら

 「そ、そうですねっ!」

 アリスとローナは慌てていたが、セイの一言で我を取り戻した。

 「ただ、わたくしもアリス様もカイル様達とはあまり関わっていないですわよね?」

 ローナは自分とアリスの、カイルとのかかわりが少ないことに気が付いた。


 「わたくし達は次元間渡航の準備をしてまいりますので、どうぞ行ってきてください」

 ローナはセイを見送ると、操縦指令室に戻っていき、アリスもそれについていった。


 「ま、そうだな。テヌドットも一応急ぎの要件とは言っていなかったけど早いに越したことはないか」

 そう言ってセイはそそくさと船を降りて冒険者ギルドへと向かった。


 「今日ってカイルは来たか?」

 セイは受付に立っている男に尋ねた。

 「勇者様ならパーティの皆様と共に先ほど依頼を受けて出発されましたよ」

 「行き先は?」

 「ヂーナミア高原です」

 男は淡々と答えた。その時セイはやっと疑問を口にした。

 「メサルテはいないのか?」

 そう、受付のカウンターは3つほどあるが、そのどれにもメサルテの姿はなかった。


 「彼女は「とんでもない逸材を勧誘した」という事で今日から副ギルド長になられました。僕の方が先輩なんですけど……複雑な気分です」

 (自分で言うのもなんだが、それ絶対俺じゃん……)

 セイは受付の男に感謝を伝え、ギルドを後にした。

 「ありがとう。彼女に、この次元を離れることになったけどまた会ったらよろしく。と伝えておいてくれ」


 男がうなずくのを確認すると、セイは笑顔で扉を開けて出発した。

 「そういえばヂーナミア高原の場所を訊き忘れたな……」

 『ヂーナミア高原はヂーナミア城の裏にある巨大な高原です。都市から遠くもなく、家族でのピクニックなどによく利用される場所です。どうやら最近はモンスターが近くで繁殖しているため、依頼が出されていたようです』


 「そうか。じゃあすぐに向かえるな。[自己改変]、[身体生成]」

 セイは新しいテンプレートを作成し、早速使ってみることにした。するとセイの背中から翼が生え、瞬く間に上空へと飛び上がった。

 「これは、かなり便利だな。ちょっと……操作が難しいけど……」

 セイはフラフラしながらなんとかヂーナミア高原まで向かった。


 1時間後、セイは何とかヂーナミア高原に到着した。

 「酔った……めっちゃ鳥とぶつかったし……いってぇ……」

 セイは地面でもフラフラしながら歩いて行った。すると数分もしないうちに剣の音と叫び声が聞こえてきた。


 「こっちだ!!」

 「誘導できた!! カイル、トドメを!」

 「うん!」


 姿が見えてくるときには、カイル達はモンスター達の頭を集めていた。

 「おーい!!」

 セイが声をかけると、気が付いたカイル達は駆け寄って来た。

 「セイ!! 来たんだね!」


 「よっ! 元気か?」

 セイは[片翼の英雄]にも視点を移した。

 「久しぶりね、依頼を受けまくっていたんだって?」

 エイレンはニヤニヤしてセイを見つめた。カイルはセイに尋ねる。

 「ところでどうしたの? ここにピクニックに来た……ってわけではなさそうだし」


 「それがな……この次元を離れることになったんだ。神話会から召集があったんだ」

 セイの言葉を聞くと、カイルはがっかりした様子だった。

 「そっか……セイも忙しいよね……」

 セイはカイルの頭にそっと手をのせた。

 「大丈夫。カイルが一人前になる頃には帰ってくるさ」


 エイレン達は無言でカイルを見守っていた。

 カイルは涙を見せず、ただただ悲しそうな表情をしていた。

 「じゃあ、早く魔王も倒せるくらい強くなるから、遅くならないでよっ!」


 「ああ。なんてったって俺にはストラシアがあるんだからな!」

 セイは自慢げに叫ぶと、すぐに振り返った。

 「[自己改変]、[身体生成]」

 翼を生やし、カイルが言葉を発する暇もなくセイは飛び去った。


 セイが船に戻ると、アリスはすでに準備を終わらせていた。

 「おかえりなさいませ。次元間渡航の準備は完全に整いました。いつでもいけます」


 「ここはヂーナミア上空だ。真上で巨大な船が消えたら騒動になるに決まってる。どこかへ移動してから行こうか」

 セイはアリスに説明すると、アリスはそれをローナに伝えた。

 「ではヂーナミア高原へ行きましょうか」


 「えっ? あっああ」

 セイは動揺したが、そこまで気にしないでいた。


 すると数秒もしないうちに船は動き出し、ヂーナミアを出た。セイが景色を眺めていると、地上で何かが走っていた。

 「メサルテ?」

 メサルテが手を振りながら走っていた。

 「あの男から話を聞いたのか」

 セイは微笑んでいると、ヂーナミア高原で狩りを続けていたカイル達が見えてきた。船に気付いたカイル達はメサルテと同様手を大きく振った。


 いつの間にか話を聞いていたのか、コーナスもカイル達と一緒に手を振っていた。


 「……じゃ、行こうか」


 『次元間渡航、起動。目的地……』


 『第3、神聖次元』

[勇者立志編]終幕


次回 神話会会議編


「聖神路典綴りし者」

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