第3話 復讐
~数日後~
セイはEX神話級スキルと神話級スキルを手に入れてから、ベルクリア警備隊から事情聴取をされていた。もちろん理由は神官が倒れた事。と神話級スキルについて。セイは本来の等級がバレるかとヒヤヒヤしたが、簡単な物で済んだのが不幸中の幸いと言える。
その後、[運命の支配者]の力で襲撃事件の跡を片付け、数日かけて家に帰り、普通の日常へと戻っていた。ただ1つの事を除いては。
あれ以来、セイはベルクリア研究所から派遣された者に24時間監視されていた。それは科学次元の事情によるものだった。
科学者はその名の通り、科学を研究しており、それを大きく覆す可能性のある神々やスキルに否定的であり、教会の建設とスキル、ゴッドシステムの付与も主要次元連盟の条約により、渋々受け入れた事だった。つまり、この次元ではスキルは使う機会が比較的少なくなる。その差は微々たるものではあるが。
そして、「強大すぎるスキル」を授かったセイは研究所の脅威であり、特別な監視対象となったのである。
「君にはしばらく、数人程度の監視がつくが、これは強い力を君が制御できているかどうか診るためだ。どうか気を悪くしないでくれ」
スキルを授かった日、セイには数人程度の監視がつくと通知されたが、20人以上の監視が常についていたことに気付いていた。その時、セイは授かったスキルが強力なほど、基礎的な身体能力や動体視力、そして気配を察知する能力などが上昇する事に気付いた。
しかもセイのスキルは[運命の支配者]である。何人か人間が存在しなかったことにすることすら簡単だった。
「ちょっと申し訳ないけど複雑なことをするとすぐ魔力切れるんだよねぇ……」
そこでセイは夜な夜な家を抜け出し、1人でスキルの取得と魔力の増幅に努めていた。[運命の支配者]で自身の魔力量を少しずつ改変していった。
そしてそれを続ける生活が数年程度続き、大きな行動をする可能性は低いと判断したのか監視の人数は段々減っていったのだった。
その間、セイの父親の件は、行方不明の未解決事件として迷宮入りとなっていた。
そしてそれと同時にセイは時々頭痛を感じることが多くなっていった。それは、セイが13歳となった今でも忘れられない今世の父親の記憶の影響だと、すぐ気づいた。
そしてセイ達を襲った謎の集団の事も…… そこでセイは改めて考えを整理してみることにした。
「夜中に襲ってきたのは10人弱……」
『あの襲撃は計画的なものだった可能性が高いです』
「ふむふむ……え? おいシステム。なんでそれを知ってる?」
あの夜の襲撃はシステムを授かる前だったはずなのだ。
『我々システムはマスターの記憶を読み込む事が可能です。また、システムはアップデートされているため、マスターのスキルを使用することもできます』
「へんたい!!」
『……』
「……」
「システムよ……そういう説明は最初にしてくれ……」
~数分後~
セイは気持ちの整理がなんとかついた所で、システムの考察を聞くことにした。
『マスター達はワープの予約ができず、地道に教会に向かうしかありませんでしたが、[運命の支配者]を使い、調査した結果、ほとんどが同一の人物に予約されていました』
『これにより、何者かが意図的にマスター達をおびき寄せ、襲撃したと思われます。なお、この集団がベルクリア研究所の者達である可能性は限りなく低いです』
「ふむふむ。それはなんでだ?」
『それはマスターが神話級スキルを取得する前であり、ベルクリア研究所がマスター達を襲撃するメリットはないからです』
『また、謎の集団は技術も優れており、ただの強盗団の可能性は低いです。
よって、謎の集団は多次元テロ組織[セイクリッド・リベル]であると思われます』
多次元テロ組織[セイクリッド・リベル]。それは主要次元連盟を中心に活動するテロ組織で、神々の滅亡を目論んでおり、そのためなら手段を選ばない、全次元で最も凶悪な組織と言われている。メンバーは推定約3万人もいると言われており、あらゆる悪事を行っているとまで言われている。
また、神々からスキルとゴッドシステムを授かっていないはずなのに、なぜかスキルを使える。それどころか、通常のスキルよりも全体的に強力という噂まである。
そして[リベル]には8人の幹部がいることが分かっており、それぞれに二文字の異名がついている。
異名持ちの幹部は、神話級が最低2人は必要なほど強力で、かなり恐ろしい組織だ。
「でもなぜ……」
(少なくとも、奴らは俺が神話級スキルを授かることを知らないはずだ……)
「じゃあ狙いは俺の父親……?」
(いや。今世の父は温厚で、恨みを買うような事はしないはずだ)
「よくわからないが、犯人は分かったんだろ?」
『[リベル]で確定と思われます』
ではやることは明確。
復讐だ。
~数か月後~
セイは人間と戦えるよう、魔力の増幅と戦闘用スキルの取得を進めた。
魔力量はすでに一般人のそれを優に超えており、スキルも神話級を1つ、その他使えそうなスキルを片っ端から取得した。
ある夜、セイはいつも通り家を抜け出した。しかし今夜はいつもとは違う。
システムの案内に従いリベルの小拠点へ向かった。
森を駆け抜けながら、バフ系スキルを無数に掛ける。
「伝説級[超:身体強化]! EXエピック級[大陸間走者]!」
そして武器を生成する。
「EX伝説級[黄金の武器庫]!」
約1時間ほど走った後、森の中に遺跡を改造したと思われる拠点が見えてきた。システムによると、中には約38名、エピック等級レベルが1人いるそうだ。
拠点の建物が遺跡で貴重なものなんて関係ない。セイは手始めに建物を真っ二つに切った。システム音声が聞こえる。
『リベルメンバー18名の死亡確認しました』
「なんだ?! 襲撃か?! 急げ! やれ!」
拠点から出てくるリベルメンバーを、セイは無言でEX伝説級[重力魔法]で拘束し四肢を切り裂き、首を切り刻んだ。
『リベルメンバー25名の死亡確認しました』
セイは本格的に拠点に入り、襲ってくるリベルメンバーを迷いなく切り刻み、相手のスキルはすべて無効化した。
「何なんだお前! 俺達を襲う意味が分かってんだろうなぁ?!」
俺は黒いローブを羽織り、深くフードをかぶり、顔を隠している。
『リベルメンバー37名の死亡確認しました』
(残り1人。おそらくエピック等級レベルの奴だろう)
セイはすぐにそれを見つけ、切りかかった。しかし、刃は空を切った。
(幻影使いか)
しかし、システムは無情に、そして正確に敵の位置を把握し、セイに伝える。
『2時の方向、10mです』
奴はセイの斬撃をかわし、分身体をみせ、距離をとろうとする。
(おそらく遠距離の攻撃手段しかないのだろう)
そこでセイは、修練で手に入れた唯一の神話級スキルを使うことにした。
「鳥籠」
地面から直径が10メートルを超える、巨大な鳥籠が生成され、相手を閉じ込めた。
「なっ?!」
その瞬間、
「ブシュッ……」
無数の斬撃が鳥籠の中を飛び交う。それにより、相手は名乗ることもなく一瞬でただの肉片と化したのであった。
しかしその時、木の裏に潜んでいた人影にセイは気付かなかった。
翌朝、セイはまだ頭痛に悩んでいた。今度は寝不足である。
「時間かけすぎた……」
セイはかなりの人数を切ったが、基本的にリベルメンバーを殺しても罪に問われない事が多いため、法的には大丈夫なのだ。
そんなことよりセイは父親の仇をとれたことに安心していた。
しかしセイはここで新しい人生の目標ができたように感じた。
「リベルの壊滅だ」
セイ所有スキル
オーバーランク[神々の業]
EX神話[運命の支配者]
神話[永氷の支配者](セットスキル[永氷の槍])
神話[鳥籠]
EX伝説[重力魔法]
EX伝説[黄金の武器庫]
伝説[超:身体強化]
EXエピック[大陸間走者]




