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第38話 コレーク帝国の終末

 「ある次元の国に、母と父、そして4才になる娘が平和に暮らしていました。両親はその次元では最も優れた魔法使いであり、王などの権力者の元で経験と才能で活躍を続けていました。しかしその優秀すぎる2人は、多くの魔法使いから嫌悪、嫉妬され続けてきました。しかしその時2人はそんな事は気にしていませんでした。


 ある日、その優秀な2人にある依頼が舞い込んできました。その内容は、「未知の魔法の発見とその発動」でした。2人は娘を育てるお金を稼ぐため、その依頼を引き受けました。しかし2人は、ものの3日でその魔法を発見し、発動の準備を整えました。


 「これで大丈夫なはずよ」

 「やっとできたな。終わったら3人で美味しい物でも食いにくか!」


 両親の偉業を見るため、娘も期待の眼差しで見守る中、いざその魔法を発動しようとした瞬間、大きな音と共に次元球と神域の境界が崩れ始めたのです。


 2人は徹夜で魔法の研究に勤しんでいたため、その魔法の危険性に気付けなかったのです。境界の崩壊に、ある神は激怒してしまいました。その瞬間、神域から降り注ぐ強烈な光に2人は焼かれ、残されたのは娘だけでした。その衝撃的すぎる光景を目の当たりにした娘は精神が不安定になると同時に、ある声を聞きました。


 『リベルシステム、インストール完了。スキル[神滅:終末の夜]を取得しました』

 その娘、ノワット・セリスは神への怒りに身を任せ、その強大なスキルを発動させたのです。

 「[終末]」


 そうして、巨大な爆発と共にその次元と周囲6つの次元の歴史は幕を閉じ、セリスはリベルという組織の、メーノルという男に引き取られたのでした」



 「これは……セリスの過去……?」

 「両親を神に消された怒りと悲しみに駆られ、次元を滅ぼした…… だから神への反逆者であるリベルに参加したのか……」

 セイはセリスについて知ったと同時に、同情の気持ちが湧いてきていた。


 「この件は、武力で解決したくないな。セリスに話が通じるといいんだが……」


 『周囲のリベルメンバーを2名確認しました』

 「……たったの2人?」


 そういって地下を進んでいくと、1つ、光が見えた。

 「地上だ!」

 セイが地上にでると、そこは森の中だった。

 「ヂミーナ周辺は森はなかったはずだけど……」


 小鳥の鳴き声が響く森の中、5分ほど歩いていると、

 『リベルメンバー2名との距離が縮みました』

 「近くに、セリスが……?」


 すると、森の中の開けた場所に出た。そこには、ブランコで揺れる白髪の少女と、紺と紫のローブを被った男がそれを見守っていた。

 そしてそのブランコの傍らには、勇者の剣[魔を滅す者]が立てかけられていた。

 (!? セリスの影が……揺れている?)

 セイは薄暗い森の中の、薄いセリスの深淵の闇のように黒い影が揺れている事に気がついた。


 2人は後ろを向いていたが、セイに気付くと振り返った。

 「……来たんだね」

 セリスがブランコから降りる。ローブの男はセイに向け短剣を構えた。しかしセリスが男の前に右手をだして止めた。

 男は静かにセリスに尋ねる。

 「……いいのか?」

 「うん……」


 セリスはゆっくりと歩きだした。

 「お兄さん、あの本、読んだんだよね」

 「……ああ。ダメだったか?」


 「いや。いいの。セリスは……あの方にもらったちからで、糞神共を皆殺しにしてやるの」

 するとその言葉を聞いたセイは再び[コレーク帝国の終末]を見ることになった。しかし、それは文字ではなく、映像としてだった。


 「これは……セリス視点の[コレーク帝国の終末]? 幻影か?」

 しかし、セリスの両親の目にはモヤがかかっており、顔の全てを見ることができなかった。するとどこからか、セリスの声が聞こえてきた。

 「あれから何年たったんだろう。もうセリスはママとパパの顔も思い出せない……」



 『精神安定度26%』



 するとセリスの両親が、依頼を受ける場面へと切り替わった。

 「この次元を代表するお二方に、「未知の魔法」に関する依頼をしたいのです!」

 両親は依頼を受けたが、セリスは既に事実を知ってしまっていた。それは人気のない教会での会話だった。

 「あの魔法は神域との境界を破壊する禁忌魔法……あれを完成させた瞬間、あの2人は塵と化すだろうな……!」

 「でもいいのか? 一応国王様御用達の魔法使いだぞ?」

 「だからだよ! 絶対俺のほうが優秀なのにあいつらが出世したのは運だけだ! それに……」

 男の1人が神へ祈るポーズをする。すると、神のような声が聞こえた。

 「私は、あなた方の計画を応援していますよ」

 「このとおり、次元神ワーノルツ様も応援して下さっているんだ!」

 「あ、ああ……! じゃあ、やってやろう!」

 周囲には赤と黒の霧が立ち込めていた。


 それを見たセイは絶句した。

 「これは、ひどいな……」

 (しかも……次元神だと……?)

 セリスの声が響く。

 「セリスはあれを聞いた時、話の意味が分からなくてママとパパを止められなかった……」

 そこにあるのは、強烈な後悔の感情だった。



 『精神安定度21%』



 そして両親は3日間徹夜して、ようやくその魔法を完成させてしまったのだった。

 「はぁはぁ……できたぞ! これで、セリスを満足に育ててやれる!」


 そして、その魔法の発動はコレーク帝国の王城前の広場で行う事になった。すると依頼をだした魔法使いは密かに慌てていたことにセリスは気付いていた。

 「まずい……! これでは民衆の前であの2人が死ぬことになる……!」

 「大丈夫。あれは未知の魔法という事になっている! それに俺達から仕事を奪った罰、あいつらは裁かれるべきだ!」



 『精神安定度14%』



 そして禁忌の魔法が発動される。魔法陣から放たれた光が宇宙へと飛び、空間にひびを入れた。

 「バキンッ!」

 青空が割れ、その奥にはセイには見たことがある世界、[神域]が広がっていた。次元神ではない神の声が国中に響き渡る。


 「我の眠りを妨げた上、境界を破壊する禁忌魔法を発動させたのは貴様たちか!」

 すると突然の事態に、周囲の人たちは逃げ回り悲鳴を上げた。


 「ドォォーン!!」


 その瞬間、神域から一筋の光が落ち、両親を蒸発させた。



 『精神安定度8%』



 そこでセリスの幻影は終わった。

 気付くとセイは、大量の涙を流していた。それは両親が騙されたからでも、神に理不尽に消されたからでもなかった。

 「あの神域からの光、赤と黒のオーラが混じっていた。あれはストラルス、つまり、セリスがあの御方として慕っている神のものだ……」


 「えっ?」


 セイは思わずその考えを声に出てしまった。



 『精神安定度1%』

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