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第32話 魔法次元

 戦艦ストラシアが光に包まれる。神域を通っているかもしれないが、窓からは何も見えなかった。

 セイは木田から教えてもらった第5次元についての知識を思い出す。

 「第5次元、魔法次元は地球で言う中世ヨーロッパ風の、王道ファンタジーのような世界で、魔法系スキルが最も発達している次元だ。王都はヂーナミアだ。第4次元である魔王次元とはかなり近く、唯一徒歩で通れるらしい。その影響で、空気中の魔力濃度が高いから、スキルが普段より強力になるから、スキルの使用時は気をつけろよ」


 セイは、ファンタジーの世界にワクワクしていたと同時に、現れた勇者スキルの所有者と会うのが楽しみだった。

 『第5次元、到着しました。目的地をヂーナミアに設定します』

 窓からは見える限り森で、所々にモンスターや動物が暮らしていた。


 その頃、艦長室ではセイと5人が集まっていた。

 「「「[6の執行者]、只今集結しました」」」


 セイと5人は背筋を伸ばす。

 「初対面同士もいるから、軽くスキルの紹介を」


 「序列6位[碧海の海賊]スコット・ヌイトだ」

 自信に溢れた声が響く。

 「序列5位[閃光の刃]セルトっす!」

 勢いのある声が響く。

 「序列4位[大地の支配者(アース・ドミネーター)]マーシュ・イナトリスですっ!」

 少し緊張していると分かる声が響く。


 するとセイが口を開く。

 「序列3位は、この場にはいないから、通話で挨拶をしてもらう」

 電話越しに元気な声が聞こえた。

 「序列3位[神話(ゴッド)()守護者(ガーディアン)]ヲウルトです!」

 威厳のある声が響く。

 「序列2位[重力(グラビティ)()魔術師(マジシャン)]ミカ・フィンダーだ」

 柔らかい声が響いた。

 「序列1位[静夜を呼ぶ者(グランド・スラスター)]アリスです。皆さん、よろしくお願いします」

 アリスは深々を礼をした。


 「いいか。ここにいる全員は神話級以上だ。それぞれ高め合って、リベルを壊滅できることを願っている……それとアリス、姓は名乗らないのか?」

 セイは単純に疑問を感じた。他の姓を持っている人は名乗ったのに。


 「……え? 私に姓はないはずですが?」

 アリスは困惑したが、セイはそれ以上に混乱した。

 「……? 俺の鑑定スキルでお前はアリス・アインシトルと結果が出てたぞ?」


 アリスは少し考えたが、やはり心当たりはないようだった。

 「……聞いたことがないですね……」


 少し奇妙な事が起きたが、会議は続いた。


 セイは5人に提案した。

 「ヲウルト以外の皆は基本俺と行動を共にすることになるだろうから、それぞれに部隊を作ろうと思っている。今度ストラシア内部で、艦内の職員と整備士や料理人、そして軍などの役付けをするつもりなんだ。その軍は、君達5人の部隊に分けていこうと思ってるんだ。ほぼ決定してるけど何か意見はあるか?」


 マーシュが手を挙げる。

 「ヲウルトさんは部隊を持たないんですか?」


 「マーシュと違ってヲウルトは神話会との掛け持ち、つまり普段は俺達と行動を共にできない。だから部隊はなくてもいいと思ってな。あっ。別にヲウルトの方が優秀とかそういうのではないからな!?」

 マーシュは微笑む。

 「大丈夫ですよ。あの人の等級、僕知ってますから」


 その後特に反対意見がなかったこの案は、すぐに戦艦内部に放送で知らされた。

 「……というわけだ。数日後に役職希望のアンケートを実施する。なるべく希望に添えるようにするから、遠慮なく答えてくれ」


 そんな事があった直後、ストラシアはヂーナミア上空に到着した。円形の城壁に囲まれた街だった。セイ達はあまり騒ぎにならないよう、戦艦は光学迷彩を起動した後、少し離れた所に着陸させた。


 軍のメンバーはまだ決まっていないので、ヌイトとマーシュを除く執行者3人とセイが船から降りることにした。するとアリスは疑問を口にする。

 「勇者とこの次元の王は私たちが来ることを知っているのですか?」

 この次元では王という絶対的権力を持つ者がおり、この次元をその王が支配している。

 「テヌドットは、「一応知らせたが返事はまだないから、知らないかもしれない。勇者からは返事が届いたから、大丈夫なはずだ。勇者の方は悪い奴ではなさそうだ」って言ってた」


 (まあ、ヂーナミアに入る時は、ストラシアは[紋章]を持ってるし大丈夫だろ)

 検問所に着くと、厳しそうな衛兵がいた。

 「止まれ。身分の証明と来訪の目的を言え」


 セイは騒ぎを起こさないよう、説明した。

 「俺達はストラシアだ。[紋章]もある。目的は[永星の勇者]に会いに来た」


 「ストラシア? おい! お前剣を持ってるじゃないか?!」

 衛兵はアリスの[夜裂(よいざき)]を見つけると怒鳴った。

 (参ったな……ストラシアをまだ知らないか…… そういえばテレビが普及しているのは第3次元までだってテヌドットが言ってたな。でも……)


 セイは胸元から、ペンダントを取り出す。

 「これはルサリナ教皇から授かった[紋章]が刻まれたペンダントだ。これでも証拠不足か?」

 [紋章]が刻まれたペンダントは偽造が不可能で、[紋章]を授かった者は1つずつ保有している。すると衛兵が慌てだす。


 「なっ?! ちょっと! おい! 確認してこい!」

 衛兵は部下か何かわからないが他の衛兵に確認を命じ、セイ達には丁寧な対応となった。

 「失礼いたしました。ようこそ、我が誇る最大の都市、王都ヂーナミアへ」


 「お、おう……」

 セイはあまりの豹変さに驚きながらヂーナミアへと足を踏み入れた。

 「[紋章]って思ってたよりすごいんだな」

 ミカとセルトは新たな街にワクワクしながら周りを見渡していたが、アリスはセイの話を聞いていた。

 「当然です。主要次元連盟の中で最も信仰者数の多い宗教の教皇が与えるものなのですから」


 「それもそうだな」とセイは納得しながら、ミカとセルトのように周囲を見渡す。

 「すごいな…… でも勇者がどこにいるか分からないな……」

 しかしセイの頭には1つ、案が浮かんだ。

 「情報収集といえば酒場だ! 酒場に行こう!」



 『精神安定度45%』

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