第27話 報酬
「ハッ! 面白い冗談だ。お前の方が強いだろう?
2人目のEX神話級」
「おや? 僕の等級は教えていないはずですが」
少年は首を傾げる。
「バカ言え。それくらいのオーラを持っていたらそれくらい分かる」
しかしテヌドットが割り込んだ。
「今は関係ない! ヲウルト、尋問を続けろ。私はストラシアメンバー募集について協議してくる」
「はーい」
ヲウルトと呼ばれた少年はしばらく真面目に尋問を続けたのだった。
場面は数時間後の避難所に切り替わる。
「ここに化粧品の忘れ物が!」
マーシュが叫ぶ。
「後で私が警察に届けておこう」
木田が返す。
「片付けもかなり進んできたな」
セイは一息つきながら体をほぐす。1日とはいえ一晩を多くの人がここで過ごしたため、片付けにもかなりの時間がかかってしまっていた。
するとセイの携帯が鳴った。
「テヌドットからだ。メンバー募集の事かな。木田さん、ここは任せて大丈夫か?」
「大丈夫だ。行ってこい」
セイはアリスとミカ、セルトを連れて神話会の支部へと向かった。
セイはテヌドットと合流すると、
「よっ! 何か決まったか?」
「ああ。大体はな。後はお前がそれを受け入れるかどうか、だ。とりあえず中へ入れ」
テヌドットの手招きで4人は、支部の会議室へと入った。
「さて、早速本題に入ろう。メンバー募集の件だが、武闘大会の決勝をもう一度しようと思っている」
テヌドットはワクワクしているようだったが、
「……は?」
セイはまったく意味が分からなかった。
すぐさまテヌドットは補足の説明を始めた。
「今この状況でこのままメンバーを募集しても、あまり効果は期待できないだろう。あんな事件の直後である事に加えて、私や神話会の信頼もかなり落ちているはずだ」
(まだ気にしてたのか)
「待てよ……? まさか再びレベルの高い決勝戦をする事で神話会への安心感を復活させ、同時に大きな宣伝効果を生み出しストラシアのメンバーを募集する。ということか?!」
テヌドットは興奮しながら答える。
「ああ! そのまさかだ!」
「なぁ。俺と戦える事にちょっと興奮してないか?」
「あ、ああ! 前は負けかけたが、《覚醒》で少しは対抗できると思うとな! でもちょっとだ!」
「ふっ。でもその計画は、賛成だ!」
セイとテヌドットは固く手を結んだ。
「あともうひとつ……報酬の件だ。今件は正式に神話会とストラシアが協力関係を結ぶ前だったからな。次からはないぞ」
「ああ。分かってる。報酬は……」
「任せろ。それは……ヲウルト!!」
「はいっ!」
物陰から現れたのは身長が150cmくらいの少年だった。
「初めまして! 僕はヲウルト。EX神話級スキル[神話の守護者]の所有者ですっ!」
「は? え?」
「「「「えぇぇぇぇ??!!」」」」
その瞬間、4人の驚きの叫び声がリーンカムに響いた。
テヌドットが説明に移る。
「彼は3年前、EX神話級判定を受けた孤児だ。私に着いてくる決心をして以来、倉庫、武器庫、資料室の管理を任せている。[神話の守護者]の内容も説明した方が良いだろう。それは……」
「はい! 僕が説明しますね?
僕のスキルは、神話級以上の武器や防具を自在に召喚、使用できる。という物です! そのため、別名[黄金の武具庫]ともいうそうです! そのスキルをテヌドット様に買われ、神話会に入りこの役を任された。という事です!」
セイは少し気になった事があった。
「システム、俺がアリスに譲渡した[黄金の武器庫]とヲウルトの[黄金の武具庫]って……かなり似てないか?」
『[黄金の武具庫]、[神話の守護者]は[黄金の武器庫]の上位スキルであるためです』
「まじか、あれそんなすごいスキルだったんだな。どっちも十分チートだし」
セイはチートなスキルには慣れており、それよりも気になっている事があった。
「なるほどなぁ……でもテヌドット、何故彼の存在を公表しないんだ? 公表したらより神話会の強さが分かってもらえて、信頼されるんじゃないか?」
「ああ。それも考えたんだが、やはり巨大な組織だからな。奥の手、というのは欲しいんだ。お前も、何か隠してるんだろう?」
「あっ……バレてた?」
(確かに色々隠してるな……転生者である事、EX神話級スキルを3つ持っている事とか……)
「なに、良いんだ。誰でも秘密の1つくらいはあるもんだろ?」
セイはテヌドットがかなり優しくなった様に感じた。まあ秘密は一つどころの騒ぎではないが。
「さて……と、話が逸れたな。報酬については……
ヲウルトの武具庫から1つ好きな物を持って行ってくれ」
「え? 良いのか?」
「大丈夫です! 1つ無くなった所で僕の戦闘や仕事には大して影響はありません! かなりの武器種やレパートリーを揃えてありますのでお好きな物をどうぞ!」
(でも俺は[永氷の支配者]で生成する氷の剣で十分だ。支配権能もあるしな。なら……)
「その報酬は俺ではなくセルトに渡せるか?」
「え?! いいんすか?!」
「? 大丈夫ですが……セイさんはいらないのですか?」
「俺は氷の剣で事足りているしな」
セルトはワクワクしながら訊いた。
「双短剣はあるっすか? できれば軽いやつを!」
「おまえ……」
セイは思っていたより強欲なセルトに苦笑いした。
「えっと……ありましたよ!」
ヲウルトはそういって、青い刃の短剣を二つ取り出した。
「おお~~」
セルトはテンションがかなり上がっているようだった。
「持ってみてもいいっすか?!」
ヲウルトは笑顔で「どうぞ」
セルトは早速両手に短剣を持ち、構えたり軽く振ったりした。
「神話級双短剣「レイパルサー」。秘境次元、エルフが住む静寂の森の奥深くでしか採れない非常に貴重な、鉱石「オリハルコン」で作られた双短剣です! 軽くてかなりの耐久力があると同時に、鋭さも神話級の武器の中ではトップクラスの品物です!」
「そんなに良いものをもらってもいいんすか?! セイさんもいいんすか?」
セイは首を縦に振り、ヲウルトは終始笑顔で答えた。
「大丈夫です! テヌドット様から作戦中、マフィアやリベルを一掃したと聞きましたので! それに……ストラシアと神話会は、協力関係になると聞いたので……」
ヲウルトは何か言いたげだった。
「どうした?」
セイはヲウルトに問う。
「いや……その……神話会に身を置いている状態ではありますが……僕もストラシアで旅をしたいな……と」
テヌドットは、少し厳しい表情だった。
「できるだけ本人の望みを叶えてやりたいのだが……次の管理者がまだいなくてな……」
(EX神話級の強者が入ってくれるのは助かるが……色々と課題があるのか)
「じゃあ、特務メンバーとして加入するのはどうだ?」
「特務メンバー……?」
テヌドットは尋ねる。
「普段は神話会の仕事をして、必要な場面が来たらストラシアメンバーとして協力する。ってことだ。システム的にも大丈夫だろう」
テヌドットは答えた。
「それなら大丈夫だと思う。だがそれなら……できればマーシュも連れて行ってやれないか?」
セイには疑問が浮かんだ。
「マーシュを……? 別にいいが、なんで?」
「マーシュは経験が浅い。様々場所を旅して、経験を積むべきだと思ったんだ」
「分かった。かなりの強者だしこちらとしても大歓迎だ!」




